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僕らが目指す地域との関わり方の1つの答えがあった|松浦マーケットから学んだこと

ここ最近,佐賀,長崎とのご縁を頂くことが増えている。

例えば,長崎県とは昨年から取り組んでいる壱岐商業高校との高大連携授業だったり,県庁水産部ご依頼頂いて県内の漁業者に対して経営計画策定の効果検証のためのインタビュー調査を実施している。あるいは,今年に入って佐賀県からは大学新卒採用であったり,昨年GWに訪問した佐賀県鹿島市で活躍する移住者からの紹介でローカリスト事業担当者と意見交換したりと。

新卒採用絡みでは県庁経由で採用説明会を学内で実施し,その経営者とのご縁でゼミのプロジェクトが始まったり[Retocos(唐津)とIMARI(伊万里)]することもあり,ここ1-2ヶ月で唐津,伊万里とのつながりができ始めつつある。

IMARI株式会社とのプロジェクトの一貫で伊万里焼の歴史を学ぶゼミ生

そこからさらに繋がって,長崎県松浦市にも広がりつつある。

それも,6月末に学生と訪問したIMARI株式会社による伊万里の歴史を学ぶツアーがキッカケ。ランチの途中に社長のFさん,同社のブランディングをサポートされ,伊万里の地域活性化にも尽力されているMさんにスプラウトの話をし,私から「せっかくだから伊万里でもやりましょうよ!」という話をさせてもらった。それからすぐ,伊万里で「松浦マーケット」を開催しているKさん(本業は伊万里で映像制作の仕事をされている)が「高校生と大学生を混ぜて,松浦マーケットを舞台に学ぶ場を作りたい」(意訳)と仰られているとの話を聞き,福岡でお会いすることになった。

そして,昨日,(大分・別府に行く予定が入っていたにも関わらず)伊万里で開催される松浦マーケットに足を運ぶことになりました。

今回は松浦マーケットを拝見して感じたこと,これをどう「スプラウト」につなぎ合わせて行くかを自分のメモ的に記録しておきます。

改めて伊万里と松浦の位置関係

伊万里と松浦は隣同士。

伊万里は陶磁器の産地であり,一時期は有田焼の積出港として栄えた歴史がある。現在は半導体や自動車部品メーカーも進出している。

佐賀県伊万里市と長崎県松浦市の位置関係

一方,松浦はアジの水揚げ量日本一であり,近年「アジフライの聖地」として知られている。尖りに尖りまくっていて面白い街。何かを機会につながることができないかと思案していた。

このエリアに行くとすれば,アジフライ+伊万里焼(鍋島焼)はセットになるわけで,これまでも数回家族で訪問してきた。福岡から90分。ドライブには最適な距離だということもある。

また、湾内にある2つの島(鷹島と福島)は歴史的には松浦との繋がりが深いため、長崎県に属している。これは伊万里が鍋島藩(佐賀)であるのに対し、松浦が松浦藩(平戸)に属していること、松浦党の活動地域としてこれらの島が含まれていがことなどが要因としてある。

しかし、これらの島は佐賀側と橋で繋がっており、自動車が移動手段となってからは佐賀(伊万里)側との繋がりが深くなる。こうして伊万里と松浦は異なる県に属しながら、近接して一体化した経済圏にあった。そして、人口減少下で活気が無くなりつつある両市を繋ぐ1人が福島出身のKさんであり、Kさん企画の松浦マーケットだったという話。

いよいよ松浦マーケットへ

そんなこんなで伊万里で開催される松浦マーケットに足を運んだ。今回は私家族と学生3名のツアー。9時に福岡を出発して,伊万里には10:30過ぎに到着した。先日は筑後地域で大雨もあったが,その名残か,雨が降ったり止んだりのハッキリしない天気。

近くのお寺さんの駐車場に車を止めて,いざ松浦マーケットへ。

いよいよ到着

事前にInstagramや下記のnoteを拝見していたのでマーケットでどのようなお店が出店されるのかは知っていたが,こじんまりとした場所にお店が軒を連ねて(その地域では明らかに)若い年齢層の人たちが商売をしている。「こういう商売のやり方っていいよな」と純粋に感じた。地域に暮らす若い人たちがロールモデルになり得る可能性。この人たちの顔が見えて身近に感じられるようになるだけで、高校生から見える街の景色が変わるかもしれない。

訪ねてくるお客さんもお店の方もそれぞれ顔を見ては互いに挨拶をし,何気ない会話でやり取りをしている。すでに長いことマーケットを開催していることもあり,それぞれが顔馴染。ゆるりと時間が流れていく。

今回の出店者さんはこちら!(ゼミ生撮影)

「松浦マーケット」だから,出店者は原則的には長崎県松浦市側から来られている。このマーケットは毎月第3土曜日に定期的に開催され,さまざまな事業体の方が参加されている。

名物アジフライはもちろん,そのグッズもあれば,瓶詰めのウニやおばあちゃんたちが作った蒲鉾のような海産物(加工品),野菜もある。そして,地域で長年愛されてきた和菓子,デコレーションしたドーナツなど,その地域で楽しめる商材もある。

街には名物的なお菓子がどこにでもある。

同行した学生はアジフライの形をしたキーホルダーを購入して嬉しそうにしていた。

この日は雨が降ったりやんだり。

今回のお目当てはアジフライ。やっぱりアジフライを食べに来た。それと事前にInstagramで確認していたランチ代わりにポーボーイサンド(アジフライサンド)を。

このアジフライをオペレーションしていたのが,今回は数人の子どもたち。1枚200円で揚げたてが食べられる。それを楽しみにしていたのだけれども…。

結局ありつけませんでした。

ところ狭しと並ぶお店

単にアジフライを揚げるだけれども熟練が必要。今回は底が深いホットプレートを使って揚げているものの,家庭用だから頑張って揚げて2-3枚になってしまう。揚げるのに5分以上はかかる。そこにアジフライサンドを購入しに来るお客さんも殺到するものだからオペレーションが全く追いつかない。お店の男の子たちは一生懸命やってるんだけど,時間がどんどん過ぎていく。

ある男の子は…

時間よ止まれ。あー,どうしよう。時間よ止まれ…。

と繰り返し呟いていた。まさにゼミで行う「創業体験プログラム」で見る景色。

恐らく,主催者のKさんは子どもたちに商売を通じてたくさんのことを学んでもらいたいのでしょう。周りの大人もああしろ,こうしろと言うこともなく,お金を払いはするけれども,じっと商品ができあがるのを待っておられた。

恐らく,これに似た状況は昨年12月に実施した「壱岐イヴェールマルシェ」でもあった。

出店に協力してくださった高校のある部活動によるキッチンカーの店舗がオペレーションが回らずにお客を待たせてしまう事案だ。学生が実施している創業体験プログラムがそうであるように,小さなマーケットでそれほど来場者がないだろうと思っていても,オペレーションを粗雑に扱うことは命取り。

子どもたちは自分たちが置かれている状況をよく理解している。周りの大人はそれを知りつつも黙って見守っている。恐らく閉店したあとのふりかえりの中で学べることが多々あったのではないか。

失敗の中から学ぶ,学び続けることでプロアクティブに考えられるようになって欲しい。その仕掛けとして商売をやってみるというのは簡単で誰でもできる装置だと,さまざまな地域での活動を見ていて感じること。

久しぶりの再会とこれからの展開へ

さて,今回の訪問にはもう1つの目的が。

以前とあるお食事会にお招き頂いたときに出会ったデザイナーさんが,その後松浦に移住されてご結婚。現地でご活躍されているのは知りつつ,諸々あってなかなかお会いできる機会がなかった。KさんによるとデザイナーMさんも来られるとのことで,再会できるのではないかと密かに期待していた。

それが松浦マーケットを介してお会いでき,短い時間だけれどもいろいろなお話をすることができた。

また,当初の目的であった「松浦マーケットを教育の場にする」という構想をKさんと議論。Kさんご自身が伊万里・松浦だけでなく,広域で仕事をされていることもあるので,場所としての伊万里,コンテンツとしての松浦を活用しながら,各地の高校生たちを結びつけるハブ的場所になればいいですねというようなことを話した。そして,これを教育の場にするために,秋(11月)に向けて準備を進める方向に。

ようやくありつけたアジフライサンド

そういう議論をしてたら,いよいよ出発の時間に。その出発間際にようやくアジフライサンドができあがり,口にする誰もが「美味しい!美味しい!」と言いながら伊万里をあとにするのでした。

ふりかえり:高校と地域,高校と大学の連携はどこを目指すのか

ということで,もう時間も資源も限界が近づいてきているというのに,欲張りな私は必要とあれば「はい」と言ってしまう。これは正直学生にとっては迷惑な話かもしれない。

が,実際にこうやって地域に足を運び,行われていることを目にすることでわかるもこともあるだろう。「なんで先生についてきたの?」と聞かれて「先生についていけば面白いものが見られると思って」と答えているのをチラッと耳にして,ニヤリとしてしまった私がいました(笑)

と同時に,こんな話もしました。ここ数年,高校でも課題研究を通じて地域との連携を図るようになってきたが,うまく行っている学校ばかりではない。作ることが目的になっていて,誰がそれを見るのか,使うのか,製品・商品としての質が必ずしも高くないものばかりが量産され,社会人側から見れば「時間の浪費」と感じられることも少なくないという。まだまだ改善の余地があると。

しかし,それを社会人がダイレクトに高校生に伝えるとなると,高校生には大きなダメージが残るかもしれない。そればかりか,せっかく取り組もうとしている高校生にとって「老害的大人」の存在がキッカケで街から離れてしまうことにつながってしまうかもしれない。

より良いものを作ることはポジティブな行為なはずなのに,「できない自分」と誤解して自己効力感・肯定感がガクンと下がってしまうという悪循環。

だから,大学生のような世代が高校生のメンターとなることで,高校生にはプロジェクトの質を高めるための学びの場として,大学生には(高校生を介して)自らのあり様を学べる共創関係を作ろうと考えている。

大学生側にも諸々難しいことはあるのだけれども,「スプラウト」をより実効性の高いプログラムにしていくために,こちらも各地で取り組み,多くの人の意見を聞くことで,課題を1つ1つ潰していかねばならない。

純粋にマーケットを楽しみつつ,そんなことを考えながら帰路についたのでした。

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