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第93回アカデミー賞 Netflix嫌いのアンチ・クライマックス

 まさかのグラミー賞と同じ「静寂」放送事故で終了した第93回アカデミー賞。多分メディア媒体で記事が出るので問題の主演男優賞、受賞傾向だけザッと書きます。まず、エンディングをまとめるとこう。

・授賞式プロデューサーのスティーブン・ソダーバーグが「作品賞のあとに主演部門発表」構成 (主演男優賞の筆頭候補チャドウィック・ボーズマン追悼をエンディングにしようとした?)
・主演男優賞、まさかのアンソニー・ホプキンスが勝利
・ホプキンスはバーチャル参加すらしていなかった&プレゼンターが気づかいフォローとかやらないホアキン・フェニックスだったので現場静寂のまま放送終了

 しごでき実験作家ことソダーバーグ先生がチャレンジな構成に打って出たために放送事故、『ジョーカー』を超えるアンチ・クライマックス具合になったわけですが……補足すると、今回の主演男優賞レースは「チャドウィック鉄板」下馬評ながら、英国アカデミー賞を獲ったアンソニー・ホプキンスが二番手の立ち位置でした。前哨戦などのデータで算出したBen Zauzmerの予想ではチャドウィック約70%、ホプキンス約15%。本当の賭けサービス集計オッズではもっとチャドウィックが高くて、8割だった気がします。

 加えてですね、予想記事を出しといて難ですが、授賞式直前の恒例「投票した会員に匿名インタビュー」取材で、すでにフラグが立っていました。

 この他の取材記事でも「どうせチャドウィックが勝つからホプキンスに投票した」証言が多かったのです(また、同じ『マレイニー』で主演候補だったヴィオラ・デイヴィスも「助演なのに主演枠」と反感を買っていた様子が見られる)。そもそも『ファーザー』のホプキンスの認知症役演技は非常に評価が高かった。たとえば、日本でもVogue Japanにてこのような予想コメントが語られています。

柴崎 主演男優賞は『マ・レイニーのブラックボトム』が遺作となったチャドウィック・ボーズマンだとはいうのは分かっていますが、あえてアンソニー・ホプキンスに一票です。
D姐 お!柴崎先生の推し理由を是非お聞かせください!
柴崎 『ファーザー』の超人的な演技に鳥肌が立ち震えましたから。認知症の役がリアルすぎて。83歳であれだけのセリフを覚えて演じるって神ですよ。あまりのリアルさにアンソニー・ホプキンスが本当に認知症なんじゃないかと錯覚しちゃって、悲しくなりました。演技が上手すぎるのも逆にどうかと思うほど強烈な一撃でした。
引用元: https://www.vogue.co.jp/celebrity/article/deep-talk-93rd-oscars-2021-predictions

 サプライズ勝利ではあるホプキンスも、主演女優三番手とされたフランシス・マクドーマンドと同じく「また受賞しても文句ナシ」枠だったと思われます。ついでに彼の役は元祖THE OSCARなんですよね。病や障害の役が強いのは知っての通り。あと大俳優による認知症なので、高齢会員にはより身近に響いたかも?

 加えて、全体的な所感としては「オスカー会員にまだNetflixが忌避されている」。ドキュメンタリーや美術系だと強いのでわかりづらいですが、今回サプライズとされた主男チャドウィック・ボーズマンと主女ヴィオラ・デイヴィスの敗退、加えて編集・脚本有力であり作品賞も視野にされていた「シカゴ7裁判」の惨敗、これらすべてNetflix作品。ビッグフィールドな主要部門だとやはり「Netflix嫌い」が働いたのではないでしょうか。「ROMA/ローマ」のときは競合スタジオが「Netflixへの票は映画産業破壊」だとアンチキャンペーンを打っていったらしいので今回も同様の動きはあったかもしれないし、なにより「劇場文化が危機に立たされるパンデミック危機にNetflix無双ってどうなの?」感は多くが共有するところ。 まさか俳優フィールドでも機能するとは予想外でしたが。

 自分の予想はのあたり率は8/13。作品賞では遊びに出てはみたものの、「Netflix嫌われ度」を読み間違える失敗が目立ちます。「ノマド」や「ミナリ」、"Judas"、そしてAmazon「サウンドオブメタル」など、Netflix以外の「鉄板予想」は当たってるんですよ。短編ドキュメンタリーでも、筆頭候補だったNetflix「ラターシャに捧ぐ」、NewYorkTimes「A Concerto Is a Conversation」が負けてFecabook資本の「Colette」が勝つサプライズが起こっています。

 近年のアカデミー賞予想、会員が増えたこともあって前哨戦を指標にする予想が難しくなってきてる気がします。それに加わって「Netflix嫌われ度」読みという難しいマターが本格化……。とりあえず、来年は劇場公開作品が賑わう賞になることを願います。もっとちゃんとしたまとめは多分メディア記事に書かせていただくので、そちらもよろしくおねがいします(宣伝)

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