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設備投資でお金を残す~特別償却と税額控除その1~

設備投資はお金がかかります。しかし、あるやり方を知っていれば、設備投資をして税金を減らし、お金を残すことができるのです。

節税対策の情報は至る所にありますが、その中には、確かに税金は減るものの、お金も減ってしまうという本末転倒なものが多数あります。経営者が税金を減らしたいと考えるのは、お金を残したいからですが、残念ながら税金を減らすことと、お金が残ることはイコールではありません。そこで、当記事では、お金を残せる設備投資の方法を紹介します。

なお、以下では各制度の概略だけ紹介していますので、詳細な適用条件については顧問税理士に確認するか、こちらの質問フォームからご質問ください。

設備投資で活用すべき制度

中小企業が設備投資をするときに、活用を検討したい制度は3つあります。一覧を載せますので、適用できそうなものがあるかチェックしてみてください。

①中小企業投資促進税制
▼適用期限
H29.4.1~R3.3.31に取得し、事業供用

▼対象資産
・機械装置(160万円以上)
・工具(30万円以上)
・ソフトウェア(70万円以上)
・普通貨物自動車

▼税制優遇
取得価額×30%の特別償却、または、取得価額×7%の税額控除

▼適用要件
特になし

②商業・サービス業・農林水産業活性化税制
▼適用期限
H25.4.1~R3.3.31に取得し、事業供用

▼対象資産
・器具備品(30万円以上)
・建物附属設備(60万円以上)

▼税制優遇
取得価額×30%の特別償却、または、取得価額×7%の税額控除

▼適用要件
認定経営革新等支援機関等による経営改善の助言を受けること

③中小企業経営強化税制
▼適用期限
H29.4.1~R3.3.31に取得し、事業供用

▼対象資産
・機械装置(160万円以上)
・工具器具備品(30万円以上)
・建物附属設備(60万円以上)
・ソフトウェア(70万円以上)

▼税制優遇
取得価額×100%の特別償却、または、取得価額×10%の税額控除

▼適用要件
経営力向上計画の認定を受けること

①から③の順で使いやすい制度になっています。なお、③については経営力向上計画の認定に受けるまでに1~2ヶ月がかかり、認定後に設備を取得する必要があるので気を付けてください。

特別償却と税額控除とは

上記の制度で受けられる税制優遇には、「特別償却」と「税額控除」の2種類があります。これらは、どちらかを選択適用できるのですが、いったいどのような優遇措置なのでしょうか?設例を用いて解説します。

▼設例
取得価額100万円、耐用年数(使用可能な年数のこと)10年の器具備品を取得した。商業・サービス業・農林水産業活性化税制が適用可能である。

特別償却とは、減価償却費の先行計上です。減価償却費とは、設備投資の価額を耐用年数にわたって費用にしたものです。したがって、設例のケースでは毎年10万円ずつ10年間で経費になります。しかし、30%の特別償却を使えば、最初の年度に追加で30万円、合計で40万円の経費を計上できます。そして、残りの60万円については、10万円ずつ6年間で経費にしていきます。

特別償却の性質は、「課税の繰り延べ」です。設例のケースであれば、通常10年かけて経費にするところを、7年で経費にできるということです。特別償却を採用しても、全年度を通じた税金の合計は変わりません。最初の年度の税金は少ないですが、耐用年数の後ろの年度で税金が増えるのです。このような性質があることから、私は特別償却については節税とは呼ばないようにしています。

一方、税額控除は節税です。設例の場合、税額控除の割合が7%なので、最初の年度に税金が7万円少なくなります。しかも、減価償却費は通常どおりに、10年間で10万円ずつ計上できます。特別償却とは違い、取得年度に少なくなった税金分を耐用年数の後半で払う必要はないので節税効果があります。

ただし、税額控除は、上記①~③を合計して法人税額の20%が限度とされ、税金の全額を減額することはできないので注意してください。

特別償却と特別控除のどちらを選択すべきか?

これは、よく聞かれるのですがその都度悩む問題です。ここでは、いくつかの判断基準を解説します。なお、以下の税金計算方法はかなり細かくなりますので割愛します。また、利益や法人税の額により判断が変わりますので、その点にも注意してください。

①取得価額×30%の特別償却と取得価額×7%の税額控除
税額控除を選択した方が、通常は有利になります。設備投資額が100のとき、特別償却では初年度の税金が約6~9少なくなります。特別控除では初年度の税金が約8少なくなります。税金の減額幅が特別控除の方が大きいケースが多く、かつ、特別控除は節税となりますので、特別控除を選択する方が有利です。

②取得価額×100%の特別償却と取得価額×10%の税額控除
節税だけなら税額控除有利で間違いないのですが、会社にお金を残すという目的からすると、特別償却が有利になることもあります。設備投資額が100のとき、特別償却では初年度の税金が約20~30少なくなります。特別控除では初年度の税金が約12少なくなります。このため、初年度にお金が多く残るのは特別償却です。この残ったお金を有効に使って利益を稼げるのであれば、特別償却を選択すべきとなります。

まだまだ書きたいことはあるものの、長くなってきましたので、残りは次回にします。設備投資に関わる優遇税制は便利に使えるものの、気付かなければ使えなくなってしまいますので、設備を購入しようとするときは、常に検討するようにしましょう。

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