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役員退職金活用術

中小企業の経営者は高齢化が進み、事業承継が問題となってきています。そのような中でよく話題になるのが、役員退職金です。今回は役員退職金を活用するポイントについて解説します。

役員退職金は役員報酬よりも有利

役員退職金と役員報酬、どちらも同じように思えますが、全然違います。役員退職金が役員報酬より有利である理由は以下のとおりです。
・役員個人にかかる所得税額が圧倒的に少ない
・社会保険料の算定対象外である

退職金の税金
まず、役員個人にかかる所得税額が少ないことについて説明します。役員に限った話ではないのですが、退職金にかかる税金はかなり少なくなるようになっています。それは、退職所得控除、1/2課税、分離課税という3つの特徴があるからです。

退職所得控除は、勤続年数に応じて次のように計算します。
・勤続年数×40万円(勤続年数20年以下の場合)
・(勤続年数-20年)×70万円+800万円(勤続年数20年超の場合)
例えば、勤続年数が40年になると、2,200万円の退職所得控除となり、その分は課税されません。

1/2課税というのは、退職所得(=退職金収入-退職所得控除)に税率をかけるときに、その退職所得の額を1/2にできるというルールです。これによって、退職所得控除後の金額の半分については課税されなくなります。

分離課税というのは、税率を決める際に他の所得と合算する必要がないということです。所得税は累進課税ですので、所得額に応じて税率が上がっていきます。一般的には給与所得や不動産所得、事業所得等が同時にあれば、それらを合算した金額に応じた税率が適用されます。ところが、退職所得に案しては、他の所得と合算しないため、比較的低い税率が適用されて税額計算が行われるのです。

社会保険料の扱い
役員報酬を増額すると、それに合わせて社会保険料の金額も増えます(上限はあります)。その分だけ役員の手取収入が減ることになります。しかし、退職金については社会保険料が関係ありません。いくら支給しようとも社会保険料が上がることはないのです。

役員退職金は損金算入できる

役員退職金は金額が高額になることが通常です。しかし、不相当に高額でなければ会社の経費にすることが可能です。では、いくらまでなら損金になるかですが、目安としては、「最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率」で計算される金額となります。

功績倍率は社長・会長が3.0、専務が2.5、常務が2.3、取締役・監査役が2.0が一般的です。

なお、実際には、退職の理由や同業他社の退職金支給額との比較が行われて適正額が決まるので、上記の方法で一律に計算できるわけではないので注意してください。税務調査で否認されないようにするためには、役員退職金が適正額であると判断した理由をしっかりとエビデンスとして残しておくことが重要となります。

役員退職金の損金参入時期

役員退職金は、株主総会の決議等によって退職金の額が具体的に確定した日の属する事業年度に損金に算入します。ただし、退職金を実際に支払った事業年度損金の額に算入することも認められます。

つまり、支給の決議をして退職金の額を確定させておけば、資金繰りの状況に応じて次の事業年度に支払うことも可能です。

終わりに

役員退職金の一番のポイントは、損金算入が認められる適正額の算出になります。ここは手を抜かず、きっちりと文書を作っておきたいところです。

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