ハンドメイドの知的財産権について調べてみました【PART2】(商標権)
1. はじめに
僕は趣味でレザークラフトをしています。
自分が作っていて楽しい作品を、作品に共感してくれる人に、喜んで買ってもらいたい、そしてその売上でさらに好きな作品を作りたい、そんな好循環が出来ればハンドメイドを長く続けることができると考えています。
ハンドメイド作品を作っていくうちに、知的財産権について興味が出てきたので入門書や専門書で調べていました。
そして先日、『ハンドメイドの知的財産権について調べてみました【PART1】』で特許権、実用新案、意匠権について調べた記事を公開しました。
ありがたいことに、多くの方にわかりやすかったと言って貰えて、公開して良かったと思えました。
本当にありがとうございました。
今回は【PART2】として、商標権についてハンドメイド作品との関係を考えていこうと思います。
2. ハンドメイドと商標権
結論から言うと、ハンドメイド作品も、商標登録することが可能です。
商標とは、自分の商品やサービスを、ほかの人のものと区別するためのマーク(ロゴ)や名前です。
商標登録しておくことで、誰かが勝手に自分の屋号や名前を使っていたら、やめさせることが出来ます。
おそらく身近にある商品やサービスなどは、ほとんど商標登録されて、誰かが勝手に、その名前を使わないように守られていると思います。
① 商標を守る必要があるのはなぜ?
例えば、僕は牛丼が好きで、特に「すき屋」の牛丼が好きでよく行きます。
もし誰かが勝手に『すき屋』と全く同じ看板をあげて牛丼屋さんを始め、僕が「すき屋」だと思って入ったらどうなるでしょうか。
「『すき屋』の味じゃない!」と混乱するはずですし、「すき屋はまずくなった!」と思うかもしれません。
お客さんがそうした混乱をしないようにするため、またお店側は看板やマークを見てもらって味(品質)に安心・信頼してもらう為に、商標権は守られています。
なので、商標を登録することは、ブランド化やマーケティングに役立つともいえます。
② 商標が突然使えなくなると…
自分の商標が勝手に使われた場合は、使用を辞めさせることができますが、逆に自分が使っている商標が、既に商標登録されている場合や、似ている商標が登録されている場合は、商標権の侵害になります。
商標権を持っている人・企業から、突然警告文が来て、それまで使っていた屋号や、作品名を使うことが出来なくなってしまうのです。
せっかくみんなに名前を覚えてもらったのに、名前を変えてまた一から覚えてもらわなければいけなくなります。
なので、ハンドメイド作家でも、自分の屋号や、作品の名前が突然使えなくなってしまって困るのであれば、商標登録するのもありだと思います。
(商標登録の方法、金額等も後日調べてみるつもりです。調べた結果はまた後日公開予定です。)
③ 登録できる商標とは?
商標として登録するには、いくつか条件があります。
(1)登録したい「商品・サービス」で既に使われていないか、似ていないこと
まだ登録されていない商標、既にある商標と似ていないものは、登録することができます。
また、商標は「商品・サービス」と必ずリンクすることになっています。
例えば、トヨタ自動車の「PRIUS」という商標は「自動車」という商品とリンクしています。
なので、もし僕が自動車を作っても「PRIUS」という名前を付けて販売することはできませんが、自動車以外であれば「PRIUS」という商標が登録できます。
革小物を作って、「PRIUS」と名前を付けることもできる可能性があります。(自動車以外にも既に幅広く商品・サービスを抑えている可能性もあります)
実際に日立が「Prius」という商標の電子機器を登録しています。
(2)固有名詞であること
辞書に載っているレベルの普通名称は商標登録できません。
辞書に載っているレベルの普通名称が商標登録されてしまうと、他の人が使えなくなって、困る人が多くなるため、普通名称は商標登録することができません。
ちなみに、登録された当時は固有名詞であっても、その名称が世間に広まって普通名称になってしまうことがあります。
例えば自動車の「純正パーツ」という言葉も、自動車が日本を走りだした頃は、商標登録されていましたが、今では普通名詞になっているので商標権は認められていません。
商標登録したら、「○○○(商標)は株式会社××の登録商標です」と、普通名詞にならないように気をつける必要があります。
また、商品の特徴を説明するだけのような名前も商標登録できません。
例えば「レザーコインケース」なんかは、「革で作ったコインケース」という商品の説明をしているだけなので登録することはできません。
④ 商標権を侵害されていると言われたら
ハンドメイド作品を販売していて、ある日突然、商標を侵害していると言われた場合は、どうすればいいのでしょうか。
まず、相手がほんとに商標をもっているか、自分がそれを侵害しているかの確認することになりますが、僕は専門家に相談することが一番かと思います。
商標は、全く同じでなくても、裁判で似ていると判断されれば商標権侵害になってしまいます。
北海道お土産の定番、『白い恋人』を製造・販売している石屋製菓が、吉本興業が販売する『面白い恋人』の販売を差止請求をした例もあります。
似ているか、似ていないかの判断は専門家でないと難しいですし、差止請求などの民事罰や、罰金・懲役の刑事罰になってしまうこともあり得ます。
リスクが大きい為、もし警告がきた場合は、自分だけで判断せずに専門家に相談することが必要だと思います。
(※今回調べたことの、不明点や良くわからない点を、専門家に相談するつもりですので、利用したサービスや、その使いやすさ、費用等は後日、紹介します)
ちなみに、特許情報プラットホーム(https://www.j-platpat.inpit.go.jp)というサイトで、特許庁に登録されている商標を調べることが出来ます。
検索窓に商標を入力して検索すると、一致する商標や似ている商標が表示されます。
また、商標番号を直接入力して検索することもできます。(「2141029」と入力して検索すると「TOYOTA LEXUS」の商標の情報が出てきます。)
自分が使っている屋号や、商品名を検索して、同じものがあれば使わない、似ているものがあれば専門家に相談する、といった方法もありかなと思います。(この方法で十分かどうかは専門家に後日確認します。)
また、パロディ作品やオマージュ作品の販売などは、覚悟をもってした方がいいと思います。
作った側はパロディ・オマージュのつもりでも、買った側が本物と信じて買った場合は商標法違反で起訴されることもあり得ます。
そもそもパロディ・オマージュなどとの線引きは定義があるわけでなく、人によって考えが異なるため、かなりリスクが高いと思います。
「フランク三浦」は「フランクミューラー」と商標権をめぐって最高裁まで争い、最終的にはフランク三浦が勝訴しましたが、個人のハンドメイド作家の場合は、訴訟となった場合には、体力的、精神的、金銭的にもかなり難しいと思います。
⑤ 商標権を侵害すると民事罰や刑事罰が…
商標権を侵害した場合には、民事訴訟や刑事訴訟となり裁判所から以下の命令を受ける可能性があります。
(1)差止請求:販売の停止、名称の変更、商品の破棄など
(2)損害賠償請求:利益×販売個数やライセンス料相当額など
(3)不当利益返還請求:他人の商標権を使って得た利益(売上ではなく)の返還
(4)信用回復措置請求:謝罪広告を新聞などに掲載するなど
さらに、刑事罰が適用されることもあり、その場合は、10年以下の懲役または、1000万円以下の罰金、もしくはその両方が課されてしまいます。
3. まとめると…
はじめにも書いた通り、ハンドメイド作品でも商標登録は可能です。
商標登録には、費用と手間がかかるので、費用対効果も考えないといけませんが、ハンドメイド作品の販売をするのなら、自分の商標を守ることは、屋号や作品の名前を覚えてもらうのに効果的だと思います。
そして、ハンドメイド販売を楽しく続けるのであれば、商標権侵害をしないことに気をつけることが必要です。
自分が好きで楽しくやっていたハンドメイドで、民事訴訟や刑事訴訟になってしまうのは、作っている本人にとっても、作品に共感してくれる人にとっても、本当に残念なことだと思います。
バイクや車でスピードを出しすぎると捕まり、下手すれば免許停止、免許取り消しになって楽しめなくなってしまいます。(僕も免停経験があり趣味のバイクを楽しめなくなった時期があります)
長く楽しむにも、ルールを守って楽しむことが大事だと思います。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。ハンドメイド作品を作っている人たちが、素敵な作品を生み続けられる助けになれれば幸いです。
著作権、不正競争防止法、独占禁止法についても順次アップ予定です。
参考文献
・『知的財産管理技能検定3級公式テキスト改訂10版』
著:知的財産教育協会 出版:アップロード
・『レシピ公開「伊右衛門」と絶対秘密「コカ・コーラ」、どっちが賢い?』
著:新井信昭 出版:新潮社
・『パクリ商標』
著:新井信昭 出版:日本経済新聞出版社
・『著作権トラブル解決のバイブル!クリエイターのための権利の本』
著:大串肇/北村崇 出版:ボーンデジタル
・『はじめての著作権法』
著:池村聡 出版:日本経済新聞出版社
・『これだけは知っておきたい「著作権」の基本と常識』
著:宮本督 出版:フォレスト出版
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