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忘れられない人③
とにかく生活費を稼がないといけない。
僕は、ほとんど学校に行く必要がなく時間は無限にあった。
だけど、周りの同級生は、この研究室にはこの会社に推薦枠があるとか、あの企業は来年何人規模の採用があるらしいとか、どこそこの会社にだれだれ先輩がいるので訪問した方がいいとか就活のことを話題にし始めていた。そんな中で生活費を稼ぐためにバイトを探す自分がすごく惨めに感じて同級生には相談できなかった。
なんとなく元同級生の比嘉の顔が浮かんだ。
比嘉は、2浪してうちの学校に入ってきた沖縄出身の元同級生で、時間とお金にはルーズだが根は真面目で面倒見が良い。ライブのチケットもたくさん捌いてくれて、なにより身近にいる唯一の社会人の友達だった。1回生の頃からキャバクラでボーイをしだして、すぐに学校を中退した親不孝を絵にかいたようなやつ。同じ店の女の子に手を出して、それがバレて店長に「店をやめて違う街に移り住むか、罰金50万を払うか、どちらか選べ」と言われて、100万払って彼女と結婚したと比嘉が大学を辞めるときに言っていた。
実際には100万は作り話で彼女との間に子供ができて店長に土下座してキャバ嬢を辞めさてもらったらしい。結局、その奥さんとも1年も経たないうちに離婚したが、理由は教えてくれない。
比嘉は、この仕事は天職だといっていた。実際、キャバクラのバイトから始めて、3年足らずで居酒屋やキャバクラなど何店舗も経営する会社のエリアマネージャーという、複数店舗の責任者まで登り詰めていた。
僕は、比嘉に「留年して金が無い。ほぼ毎日出れるからバイトを紹介して欲しい」と切り出した。比嘉は笑顔で「だったら、うちのグループのセクキャバでボーイすればいいさー。あそこはいい加減な奴らばっかりだから、信用できるやつに働いて欲しいさー」と言った。その後、給料と細かい条件について比嘉が説明を加えてくれた。
この世に比嘉よりもいい加減な奴がいるのかと思いつつも、給与に惹かれて働くことにした。なにより、若い女性のおっぱいがタダで見れる職場環境にドキドキした。
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