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[アーティスト田中拓馬インタビュー11] オーダーメイド作品はこう作れ!?

このページは、画家・アーティストの田中拓馬のインタビューの11回目です。今回は、オーダーメイド作品の作り方の一例を聞きました。オーダーメイド作品でも、前回まで聞いた古典作品の利用のやり方を利用できるということです。
これまでの記事は、記事一覧からご覧ください。

今回の内容
1.オーダーメイド作品はヒアリングから!
2.思い出のシンボルを使おう!
3.オリジナルの描き変え!
4.役に立つアート作品に!

田中 ここまで、フェルメールやボナールを利用した作品の作り方について話してきたけど、同じような考え方で作ったこういう作品もあるよ。(フェルメールについての記事はこちらボナールについての記事はこちら。)

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田中拓馬作(オーダーメイド作品) <IMAGINE OUR LIFE!!> 

田中 これはね、フェルメールとかボナールのやつとは違ってオーダーメイド作品なんだけどね、ジョン・レノンの有名な自画像があるでしょ。
 ー ああ、あの一筆書きみたいなやつね。グッズとかによく使われているよね。
田中 そうそう。それを利用した作品なんだよね。
 ー ああ、なるほどね。向かって左の髪が紫で、右が黄色だったりとか、ジョン・レノンの作品の要素があるね。
田中 そういうことだね。

 ー オーダーメイド作品っていうことは、依頼があってから作ったんだよね。
田中 そうだね。
 ー オーダーメイドの場合には、どういう風に作っていくの?
田中 今回の依頼はご夫婦の方からなんだけど、結婚29周年のお祝いなんだよね。奥さんは29周年って半端だって言っていたけど(笑)
 ー うん、それで?
田中 今回は、まずお2人にヒアリングをしたんだよね。それで、結婚生活の思い出とかを色々聞いたんだけど、1つ出てきたのがジョン・レノンの話なのね。
 ー うん。
田中 新婚旅行がニューヨークで、その時にジョン・レノンの「Imagine」のリトグラフを買っているんだよね。
 ー なるほど。つまりジョン・レノンはご夫婦の思い出のシンボルみたいなものなんだね。じゃあ、まずジョン・レノンのイラストを使おうと考えたわけだね。
田中 ただ、すぐにそれが決まったわけではないんだけどね。
 ー それは、依頼主からは色んな情報を得ているだろうからね。どうやって決まっていったの?
田中 お2人の話とかを考えながら、僕のアトリエの物を置いているところをごそごそ漁っていたのね。そしたらレコードケースが出てきたんだよね。それを見た時に、このケースを額縁にしたら良いんじゃないかと思ったのね。
 ー ああ、この作品の額縁はレコードケースなんだね。
田中 その発想と、ヒアリングで聞いていたジョン・レノンの話とか見せてもらったジョン・レノンのイラストとかを組み合わせて作った感じだね。
 ー なるほど。

 ー あと、作品の眼鏡の中にも女の人の顔とか文字とかがあるよね。
田中 うん。まず、大きく描いているのが旦那さんだね。で、眼鏡の左目が奥さんで、右目に「29th Anniversary」。
 ー ああ、そういうことか。

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田中 この辺りは、前回とか前々回に言った古典の利用のやり方と同じことだね。
 ー オリジナルの絵があって、それをどう自分流に描き替えていくかっていくことだね。
田中 そうだね。
 ー あと、6枚の紙に書いているのも面白いね。
田中 これはね、ヒアリングの時に奥さんが、家に物が多すぎるから、捨てたりばらばらにしたりして、身軽になってやっていくっていう話をしていたのね。だから、背景に家を描いていて、紙はバラバラにしてあるんだよね。
 ー なるほど。紙は張り付けてあるんだね。
田中 うん。あと、下に「IMAGINE OUR LIFE!!」って書いてあるでしょう。これはもちろん、ジョン・レノンのイマジンからの連想でもあるんだけど、それだけじゃなくて、会社で言う「社訓」みたいなものなんだよね。
 ー え、どういうこと?
田中 つまり、物を捨てたりして身軽になりたいって考えているということでしょう。そのための戒めになるような絵にしましょうっていうことだよね。
 ー 戒め? 絵を見て、身軽になるという気持ちを思いだそうというような感じ?
田中 まあ、そうだね。「あの時、私は言ったよね」って思ってもらえたらね。
 ー なるほどね。役に立つ絵画なわけだね。
田中 そうそう。アートは一般的には効用性がないって思われているけど、必ずしもそうじゃないということでもあるよね。

 ー でも、聞いていると、ずいぶん順調に進んだんだね。もっといろいろ試行錯誤があるのかと思ったけど。
田中 これはもう、これまでにたくさん失敗をしているから、出来るようになるんだよね。
 ー 結局捨てちゃったアイデアとかは全然なかったの?
田中 今回はね。神がかり的だよ。
 ー 普通は、思いついたけど捨てるアイデアとかが出てくるよね。
田中 出てくる。でも、見えるときは見えるんだよ。なんか、最近は色々と見えるんだよね、制作でもプライベートでも(笑)
 ー プライベートの話は、まあ今度聞こうか(笑)

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今回のインタビューは以上です。[アーティスト田中拓馬インタビュー11]を最後まで読んでいただきありがとうございました。次回はデジタルアートについて田中拓馬に語ってもらいます。田中拓馬流のデジタルアートのアプローチはどのようなものなのか、私も興味津々です。ぜひ次回もお楽しみに!

これまでのインタビュー記事はこちらからご覧ください。

田中拓馬略歴
1977年生まれ。埼玉県立浦和高校、早稲田大学卒。四谷アート・ステュディウムで岡﨑乾二郎氏のもとアートを学ぶ。ニューヨーク、上海、台湾、シンガポール、東京のギャラリーで作品が扱われ、世界各都市の展示会、オークションに参加。2018年イギリス国立アルスター博物館に作品が収蔵される。今までに売った絵の枚数は1000点以上。
田中拓馬公式サイトはこちら<http://tanakatakuma.com/>
聞き手:内田淳
1977年生まれ。男性。埼玉県立浦和高校中退。慶應義塾大学大学院修了(修士)。工房ムジカ所属。現代詩、短歌、俳句を中心とした総合文芸誌<大衆文芸ムジカ>の編集に携わる。学生時代は認知科学、人工知能の研究を行う。その後、仕事の傍らにさまざまな市民活動、社会運動に関わることで、社会システムと思想との関係の重要性を認識し、その観点からアートを社会や人々の暮らしの中ににどのように位置づけるべきか、その再定義を試みている。田中拓馬とは高校時代からの友人であり、初期から作品を見続けている。

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