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「ユーザー像がわからない!」 Chatwork で直面したデザイン課題と UX リサーチの試み

こんにちは。Chatwork のプロダクトデザイン部で UX デザイン、UX リサーチを担当している仁科です。最近のマイブームは干し芋です。秋は美味しいものがたくさんあって嬉しいです。

さて今回は、来たる 10/7(金)に開催の「Chatwork Product Day」への登壇を前に、私が Chatwork で取り組んできた UX リサーチについて振り返ってみたいと思います。


こんな方に読んで欲しいです。

・どんな時にどんな UX リサーチをすると良いか迷う方
・これからシニアデザイナーを目指すにあたって、UX リサーチを武器にしていきたいと考えている方

ユーザー像がわからない!

ユーザーさんが真に何に困っているかわからない

Chatwork はユーザーさんから日々多くの機能要望が寄せられ、デザイナーとしては「全部解決したい!」という気持ちが湧いてきます。
ですが、いざ改善案を出そうとしても要望の背景が分からないことが多く、思い浮かんだ解決策がベストかどうか分かりません。

そんな中で始動した機能開発のプロジェクト。
「複数のアカウントをスマホアプリ内で切り替えられる機能を作る」というプロジェクトだったのですが、スマホアプリでのアカウント切り替えの要望が多いことはわかっているものの、先述のようにユーザーさんが要望をあげてくださっている背景かが分からず、PM と相談してユーザーインタビューに踏み切りました。

ユーザーインタビューで自分達とは違う使い方を知る

Chatwork は 1 つのアカウントで組織をまたいだグループチャットに参加できるという特性があります。そのため業務委託などで複数の会社とやり取りがあるユーザーさんでも、アカウント 1 つで仕事をされている方も多くいらっしゃいます。
ですが今回の機能要望は「アカウント切り替え機能が欲しい」。
なぜ「複数アカウントが必要になってしまうのか」を、まずはをインタビューで紐解きました。

■ 副業利用でのシーン

  • 会社から与えられたアカウントで別の組織の仕事をするのは気が引ける

  • 契約終了時に退席する作業が大変

■ 同一組織での利用のシーン

  • お知らせのためのアカウントなど、個人とは別の人格を持ちたい

「契約終了時に退席する作業が大変」という背景がなぜ複数アカウントに繋がるかというと、アカウントを削除してしまえばグループチャットの退席作業が必要なくなるため、あえて別のアカウントを作って参加している背景があるようでした。

課題の優先度を絞ることで、判断基準と機能をシンプルに

上記で知ることができたシーンから、今回の機能改修では「働き方の多様性がサポートできるよう副業利用の課題にフォーカスしよう」とチームで決めることができました。
この「どの課題にフォーカスするのか」は、一見 UI を考える上でそこまで重要ではないように感じるかもしれませんが、機能要件や UI を決定する上でとても重要になります。
今回の場合は「アカウントの状態によってどのような通知設定ができるべきか」など、見た目とは直接関係はないけど、ユーザー体験として重要な部分の意思決定がスムーズにできました。

ターゲットユーザーとフォーカスする課題の定義から始めたユーザーストーリーマッピングの様子は別の記事でも触れていますので、良かったら参考にしてください。


少しでもリアルなユーザー像を知るために

UX リサーチに踏み出せない要因

デザインプロセスでユーザーインタビューやユーザーテストに踏み出せない要因はいくつかあるかと思います。

  • どのくらい時間がかかるか読めず、チームに提案しづらい

  • 今必要なのはどんなリサーチなのか分からない

  • 活用できる結果を得られる自信がない…など

もちろんリアルなユーザーさんに直接お話を聞いたり、使っているところを見せていただくことで得られる情報は多いと思います。
今回は時間の猶予があり、運良くリアルなユーザーさんにお話を聞くことができたのですが、ミニマムにリサーチする手法も知っておくと、時間がない時や本当に時間を使ってリサーチをするべきなのかの判断にも使えます。
何より「やりたいのにできない」というフラストレーションも溜まらず、精神的にも健康でいられます(笑)

UX リサーチ最初の一歩

普段からユーザーさんや見込みユーザーさんに接点のある社内メンバーがいれば、まずは社内でユーザー課題を収集する方法があります。
Chatwork の場合はセールスチームの営業報告が流れてくるチャットがあったり、セールスチームがいただいたフィードバックをドキュメントにまとめてくれていたりします。
私の場合はそこからユーザー課題を収集して、分類・整理し、プロジェクトのターゲット決めに活用することもあります。
最初からリアルなユーザーさんに会えなくても、まずはストック情報に触れることで自分が知らないことに気付けることもあります。

まとめ

この記事では、私が Chatwork での機能開発で、インタビューを通してフォーカスする課題を発見した事例を紹介しました。
UX リサーチを取り入れられるかどうかは組織文化やスケジュールに大きく左右される部分だと思います。

Chatwork の場合は自分たちも日常的に使っているプロダクトでもあるので、開発メンバーをはじめ社内でもデザインに対する関心が高いです。
ユーザー像をしっかりと見出し、「自分たちが最優先のターゲットユーザーではない」ことを可視化することで向き合う課題が明確になり議論が進むことも多々あります。

最後に宣伝

Chatwork Product Day」では、スピーディな社内リサーチを取り入れつつ、PO 、デザイナー、開発のスクラムチームが一丸となって施策を進めた事例をお話しする予定です。
皆さまのご参加をお待ちしています!