0128 もとめるもの
昨日の東京-北海道日帰り遠征から一転。
起きてから1時間かけて布団を脱出するというゆったりとした朝。
アレほどメディアで大騒ぎしていた雪もほぼ溶け切り、
最高気温が2桁という、1月にしてはとても高い環境に触れてしまうと、
自然と今まで過ごしてきた冬の記憶が湧いてきます。
盆地特有の底冷えに悩まされながら、恩師や学友と鍋をつついた京都の冬。
海に近く潮風が吹き付ける中、始発のバスへ乗り乗り換えを経て
1時間かけて隣町の高校まで通っていた福岡の冬。
パックのホットレモンティーと通学道中の洋菓子屋で買うクッキーが必需品、
そんな時代も振り返れば一昔前。
容赦なく吹き付けてくる凍てつく風と、
道路脇に寄せられた飽きるほどの雪。
今、目の前に広がる、これまで見てきた冬の景色とは全く異なる様相の其れは
厳しさと頼りどころのなさを投げかけてきます。
愛用の移動手段だった自転車もろくに機能せず、
陸路で行ける範囲もそう広くないと来れば、
家にいる時間が自然と嵩んできます。
なので、東京土産として持って帰って来てしまった
昨日お邪魔した場所の来客用名札を郵送で返却する時と、
体調不良気味の体のメンテナンスへ病院へ行く時と、
食事を買ってくる時以外は、外へ出ず。
何をしていたかといえば、昨日誕生日を迎えた父のプレゼントを
ネット通販で選んでいたことくらいです。
「人に喜んでもらいたい」と言う事で贈り物やサプライズを仕掛けるのが
大好きな人種ではあるものの、相手のフィールド・性格・嗜好を
研究した上で喜んでもらうための仕込みを行う為、
ありがた迷惑は出来る限り避けてきた自覚を持っています。
しかし相手は家族、しかも父。
休みの日といえば「寝る」か「競艇場」「競馬場」へ行くか、
「借りてきたor録画しておいた映画やドラマを見る」か。
一家の大黒柱であり務め上げた経歴があるからには当然のごとく、
ペーペー社会人である愚息の私より持ち物も収入もよい訳です。
それでいて休みの過ごし方が上記のようなため、
趣味嗜好に絡んだ贈り物がしづらい。
かと言って社会人として心身を削るようになった今、
改めて仕事の時に使うアイテムを送るのも
「これからも頑張って働いて下さいね」という仄めかしを感じ気が引けます。
文句も言わず、実の女系親族からの執拗な圧力も流し、
時には体に支障をきたしながら、家族のため家と職場を行き来し、
最悪の時期には帰って来た家の中でも子供の前で母と一悶着。
言葉足らずでも、十二分に頑張っている姿を見てきた側からすれば、
「足枷は取れたんだから、後は自分の楽しめるように過ごして下さい」
としか言葉をかけられません。
そうなると寝具や家具・嗜好品に焦点が当たり、
その中から選ぶことになるのですが、
田舎の百姓は好き嫌いが多く、健康状態も芳しくないため
嗜好品というフィールドでも悩みのタネに。
結局、グラス付きの焼酎とマッサージ器というチョイスでしたが、
届くのに多少時間がかかるようでどうなることやら。
因みに父という生き様を、ここまで気にかけるようになったのは
ある一冊の本を読んでからでした。
「オトン、サッカー場へ行こう!」
北九州市出身のサッカーライター、吉崎エイジーニョ氏の名著。
定年後に老け込んでいく父を見た著者が
「退職後の膨大な時間をどのように過ごすか」
という問題に対し、
著者自身学生時代から携わり続けているサッカーというスポーツ、
そして著者の地元からJリーグを目指し戦うクラブの応援を通じて
外の世界に触れて欲しいという思いから始まる1冊です。
これを3年前に読んだ時、思いました。
「うちの父は仕事終わったらどうするんだろう。」
「上記の休みの日の過ごし方を続けていくつもりなのだろうか。」
「まだ何も父の人生について聞けていないんじゃないか。」
生まれた街に根を下ろし、
時間を過ごしてきた一人の男の生きざまとこれからの未来について、
尊敬と好奇を持って知りたいと思うようになりました。
以降、語りたがらない九州男児の背中を、少しずつ追いかけていきながら
少しずつその人生に内包されたものと触れ合えればいいという思いで、
色々と仕掛けを組んでいます。
人の心配をしてる場合かと突っ込まれるような心身状態では有りますが、
それでも楽しいことを求め続けるという姿勢は忘れたくないのです。
朽ち果てて土に還るため 生まれたんじゃない 生きてるんじゃない
あなたが幸せなら、私も幸せ。
好きな歌詞とPCゲーからのセリフの引用では有りますが、これこそ至高。
そう考えて憚らない若輩者は、求めていない明日に怯え眠りに着きます。
BGM 原田ひとみ/Promessa
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