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実家の猫(2)

猫が初めて我が家にやってきた。
ある夜、仕事帰りの姉が連れてきてしまったメスの猫「不二子」。
軒先で数日間泣いていたが、父が痺れを切らして家に入れてしまい、住み着くこととなった。
のちに雌の猫「ルー」ことルパン三世も、姉が連れてきてしまったのだが、ルーについては別にお話ししたい。

不二子はメスの、アメリカンショートヘアのような色合いの猫だった。
家族びいきを抜いても美人の部類だったと思う。
最後は猫の白血病にかかり日に日に弱る不二子の隣で1週間ほど一緒に寝て看病したが、彼女は日中もずっと眠っていた。
治療法はなかった。

ずっと眠っていたのに、最後に猫らしい力強い雄叫びをあげ、苦しそうに不二子は逝ってしまった。
生き物のその目から光が抜けていく様を、初めて見た。

亡くなる数日前、さつま芋をあっためて牛乳で溶いたものを口に運ぶと、不二子は他のものは口にしなかったが、それだけ美味しそうになめた。
生クリームを好んで舐める猫だった。

彼女が亡くなったあとあれだけたくさん泣いたのに、それ以外の不二子についての記憶が、僕にはもうない。

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