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【また、愛してる人たちが起きてくる朝が始まる】

40分寝て、また朝がきた。

「また、愛してる人たちが起きてくる朝が始まる。」

それが二人目を生んで迎えた朝の、最初の感想。

昨年7月に、

私たち家族に、新たに娘が誕生した。

出産は2回目だけど、今回の出産も、想定外が目白押し。


「経産婦だからつるりと生まれるわよ~」

という意見を鵜呑みにしてたらとんでもないことになった。

予定日から 5日超過していたため私は入院を決意。

健診をすると、子宮口まだ2cmなのでお股に恐怖のバルーン(※)を入れることに。

※お股から風船を入れて膨らませ、子宮口を広げる施術(文字にするとだいぶオカルト)

第一子の時も、経験済みなのでその辛さは知っていた。


私のお股にバルーンを入れた医者は、
幸か不幸か俳優さんのような色男だった。

産婦人科医が色男なのはもはや罰ゲーム。

普通に街角でお目にかかりたかったぜ!畜生!


その色男に私はお股の中に赤ちゃんの頭と同じ大きさのバルーンを注入され、お股も心もカーニバル。

バルーンと促進剤のおかげか、陣痛が割といい感じにきた。

そしてホルモンのせいか、なんだか、急に泣けてきた。

10ヶ月分の思いや、次々と応援メッセージが届き、涙が止まらない。

昨年、友人の早期流産の話をよく聞いたので、彼女たちの分も絶対元気なお子を産んでやろうと決意は固かった。


入院2時間後、
元助産師の母が到着。

熟練の技で背中をさすってくれる。実母が助産師なんて、私は世界一恵まれた妊婦だ。

産んだ病院も、母の職場ということもあり、みんな

「唯ちゃんがお母さんになったんやなぁー!」

すごくアットホームな空間。

ズンズンズン。

それでも陣痛は加速する。

今日は動きがなさそうなので明日の昼の出産を目処にしてその日の処置は終えた。

そのまま母と病室のベッドで眠ることに。

母は、白いズボンをよく履いてるのだが、

そのズボンを履いてる時に限ってコーヒーをおこぼしたりしてよくズボンを汚す。


「破水したらごめんね~うふふ」
なんてジョーダン言っていた。


 するとその5分後、

「ポンッ。」

ワインのコルクを抜いたような音がお腹から鳴り、
「ドバーッ!」

ととめどなく破水が!

何故か私は、初めての経験に大爆笑してしまった。


というのも、おしるしと破水は経験したことがなかったので今回ぜひしてみたかった。


母は、還暦を超えたと思えぬスピードでベッドから飛び降りたので白いズボンは汚れずに済んだ。



私は、人生初の破水を心ゆくまで堪能し、爆笑しながら分娩台へ行くことに。
(サイコパスの片鱗)


明日の昼の分娩の予定がずいぶん早まりそうな予感。

すごくコミカルに描いてますが、
5分間隔で陣痛は来てたし、
子宮口は7~8cmまで開いていたので割と一刻を争う事態。


母は、「分娩台へ行くまでが大変だけどよくがんばったね!無駄なことはひとつもないのよ!」


とポジティブに私を励ましてくれます。

でも、それからが壮絶だった。


あと2cmというところで子宮口は広がらず。
赤ちゃんも上向き。(逆子ではなく、顔がお腹の方を向いている)


赤ちゃんが下向き(母体の背中側)になって初めて生まれる態勢が整うのに。

ちょうど、昨日は第一子を取り上げてくれた仲良しの助産師さんと主治医が夜勤!

私以外分娩もないので、時間をたっぷり使っていただいた。

赤ちゃんは、準備できないのに、

私の羊水はじゃんじゃん流れ出し、

陣痛がもうえぐい勢いで押し寄せる。

終わりが見えないのに、
心の準備もできていないのに次々と押し寄せる陣痛の波!


お腹が激痛で、
お尻にメラメラと燃えたぎった隕石が押し寄せて来てるのにきばれないこの理不尽な時間!

そして、終わりが全く見えない。

かすかに残った理性の中で私は、


「合気道と出産は力を抜いたもの勝ち」


という天の声を聞き、

なるだけ肩の力を抜き、

赤子に酸素を送ることを優先。

※合気道に関しては1ミクロンもやったことがない。


でも、理性はぶっ飛ぶし、
赤子のポジションは定まらないし、
隕石はお尻に急転直下してくるし、

もう無理。

すると、
主治医がきて、
みんな集まってきて、
お腹がえぐられるように痛いのに
それをまたえぐるかのようにマッサージして赤子を回す作戦。


何かしらの薬が投与され、

もうわけがわからない。

すると突然、立ち会っていた母が言った。


「四つん這いになろう」


ここここここのタイミングで!?


いや、でももうヤケだ、なんでもいい。

私は仰向けになっていた身体をぐるりと力を振り絞り回転させ、


どこからともなく出てきた大きなクッションの上に四つん這いに。


それから何度も陣痛と闘い、

きばるのを我慢し、


「娘、がんばれー!!!」


と叫び続けた。


がんばるのは、紛れもなく吾輩なのだが、お腹の中で娘も戦っているのだ。


そうこうしているうちに、
夫が到着。

私はどう猛なバッファロースタイル。

鳴き声は、
映画もののけ姫で荒れ狂ったイノシシたちに限りなく近い。


めっちゃ
めっちゃ
めぇーっちゃ
辛かった。


しばらくして、
子宮口が開き、
キバってもいいとお達しが!!

またもや、
くるりと仰向けになり、

あとはもう10ヶ月分のうんちを出す勢いできばり倒すだけ!



いっけえええええええ!!!

(時をかける少女ばりに)




3~4度ほど陣痛の波に乗せて一気に押し出す!!


すると、

オギャー!!


私のお股から真っ赤っかの赤ちゃん登場!!


お股が焼けるように熱いぜ!!


人間って不思議。


さっきまでどう猛なバッファローやったのに、


赤ちゃんに出会えた瞬間、


「もう~!!!何泣いてんのよ~!!
1週間も遅れて〜遅刻だぞ~!!んも~!!!」



付き合いたてのバカップルの彼女(ブス)みたいな言葉が出て笑顔というかもうデレデレ。



あーんあーん!!
ずっと会いたかったよー!!!
赤ちゃんが出てしまえばもうフェスでしかない。


胎盤を抜き取られるのも気持ち良すぎるし、
悪露がじゃんじゃん出てもどーでもいい。
おまたこんにゃくの効果も手伝ってか
どこも割けたところはなく、
縫うところもなし!


やったー!!
勝ったどー!!!
出産に勝ったどー!!

陣痛の時は、生きとし生けるものを薙ぎ倒したい気持ちしかなかったけど、
今は生きとし生けるものが愛おしくて仕方ない。

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夫も、
バッファローからバカップルのブスへの変貌に驚いていたかもしれないが、

「やっぱり君は、スーパー妊婦!」


とすごく喜んでくれた。


ほんとは、数日前から何度も死ぬ夢を見ていた。


どこかで私は、このお産で死ぬのかも、
と人には言えない怖さを抱えてのお産だった。

もちろん、お産はいつでも命がけ。

だからこそ、妊娠がわかった時点で夫の永住権を申請しようと決意。

日本人妻の私が死んだら、スペイン人の夫は娘と日本に住めないかもしれない、

何が起こるかわからない。

私は、母親として常に圧倒的な準備をしておきたかった。


出産の前日、
今日も悪夢を見るのかとビクビクしていたが、

夢の中には、私が目の前に立っていた。


そして、一言。

「あんたには、何かを成し遂げる覚悟が、ある。」


そう言われて目が覚めた。


なんか意味深だったなぁ。


そして、このコミカルな出産秘話。



そこには、もう一つ、深刻な事態が起きていたらしい。


母が、「四つん這いになろう」
と言いだしたとき、


実は赤ちゃんのポジション定まらず、正常なら110~160ないといけない心拍が50をきり、かなり危険な状態だったそうだ。


私は気づかなかったが、赤ちゃんの命は危険な状態で、なかなかの難産だったらしい。


緊急帝王切開もあり得る状況を、
先生のマッサージと、母の熟練の技の四つん這い方式が赤ちゃんと私を救ってくれたのだ。

それを聞いて、やっぱりプロはすごいと思った。


そんな雰囲気一切見せず、ずっとポジティブな言葉をかけ続けてくれていた。


「上手に呼吸できてるよ!」

「赤ちゃんの心音を聞いて!酸素を送るんだよ~!」

「痛いのは、もうすぐ会えるからだよ!」

「力の抜き方完璧!その調子だよ!」


言葉ってチカラだなぁ。


褒められて伸びるタチの私はまんまとその口車に乗り(人聞き悪い)


元気な赤子をこの世に送り出すことができた。

隣で寝ている新しい家族は、

ものすごい大冒険をしてやってきてくれた。

毎日、頻繁にインスタを更新していたためか、
世界中日本中から応援メッセージが届いた。
私は、一人じゃない。
本当に、嬉しかった。


母は、最後の最後まで付き合ってくれて、
娘の命が実は危なかったことを話してくれた。
あの四つん這いがなかったら、どうなっていただろう。考えただけでも恐ろしい。

お母さん、私たちを守ってくれて本当にありがとう。

帰り際に、

母が
「私、いいお母さんだった?」


そう不安げに聞いてきたので、


「あたりまえに、世界一やで。」


そう手をぎゅっと握ってバイバイした。

アドレナリンが出すぎて、もはや40分くらいしか眠れなかったけど、


翌日からはおっぱいパレードが始まる。
母親に休みはないけど、大きな覚悟で、家族みんなで守りきった命。


全力で守るぜ!


追記
あの時命が危険だった娘は、

こんなにも健やかに育ちました。

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お姉ちゃんとも仲良しで、

全力で変顔をするまでに成長。

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