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箱庭にPale Wavesが雨を呼び街の温度を溶き明かす宵


自分が好きな夏の曲(主にサザンオールスターズや桑田さんのソロだけど)にはいつも夏の終わりが描かれていてその先に秋の訪れがあったり秋が顔をのぞかせていた。最近は夏が暮れてきたら秋が色付き…みたいなグラデーションはあまりなく収録カメラのカットがかかったみたいにすぐ秋になるし、なんなら早送りで瞬く間に冬がくる。もはや四季の情緒みたいなものは体感としてないけど、歌の世界にはまだそれがある気がした。気候としてのうつろいだけではなく、心象としての。ライブビューイングでのROCK IN JAPAN FESのサザンオールスターズを観ながら、もう季節変わるなぁと思っていた。


9月の末日とある夜、風呂から出ていつもよりもゆっくり髪を乾かして部屋に戻った後気付いたら21時から深夜2時半まで寝てしまった。目を覚ましてから4時半までオールナイトニッポン0を聴いてもまだ眠くはない。明日は休みだし、つい数時間前に配信開始になったPale Wavesのニューアルバムを聴くことにした。横になりながら再生して気付いたら眠っていた。微睡む中、先行で何度も聴いていた「Perfume」が鳴っていた。翌朝、休みの日にしては少し早く起きて『虎に翼』の最終回を見届けてちょっとだけ伸びた背筋で支度を済ませて外へ出る。その日は昼からライブハウスで歌練、外は秋の空だったけどギター弾いて歌ったらやっぱりまだ暑い。ラジオを聴き終えてライブハウスへライブ観に戻るまでの間にまたアルバムを聴いてみることにした。今度は醒めた耳で全曲通す。「Last Train Home」という曲が耳に残った。高校生の頃「なごり雪」とかいきものがかりの「KIRA★KIRA★TRAIN」を聴いていたとき、汽車とか最終列車などの語句には日本情緒というか侘び寂びや運命(さだめ)みたいなものがまとわりついているな…と思っていたけど、当然そこに電車が通っていればどんな国や地域にも終電はあるわけで、ヘザー・バロン・グレイシーらがバンドを結成したマンチェスターの街にもまた侘び寂びが確かにあることに気付く。

錦糸町のショッピングモールを出てまたライブハウスに戻る道は午後から降り始めていた雨で濡れていた。前回Pale Wavesの来日公演を観に行ったときに買ったTシャツを着て『Smitten』を聴き外を歩いている。バンドTシャツを着ている人がそのバンドの曲を聴いたことがないもしくはそもそも知らないみたいな話はよく聞くが、丸一日ずっとTシャツにプリントされているバンドを聴き続けている人、逆に珍しいかもしれない。半袖で傘をさしながら少し早歩きで雨の錦糸町を歩いた。イギリスの天気は雨や曇りで荒れ模様ばかりだとよく聞く。でも実際マンチェスターは気候が落ち着いているらしい。

帰ったらOlivia Rodrigoの来日公演の様子がSNSに流れ始めていた。それも気に留めず、風呂に入る間やまたラジオが始まるまでの間ずっと『Smitten』を聴いていた。いくつか国内の音楽記事にアルバムリリースに併せたインタビューが載っていて読んでいたら全体的なテーマに「クィアの恋愛」があるらしい。過去作にもオープンにそういったテーマの曲が収録されてきたが、半年間観続けてきた『虎に翼』が最終回を迎えたこの日、今一度このバンドが掲げるフラッグがより強く響いた。この音楽を聴き続けることで、終わりかけの9月を今ここに綴じ込めておきたいと思っていたのだ。



秋になるとPale Wavesがいつもやってくる。2022年 Rina Sawayama beabadoobe THE 1975らDirty Hit勢がマリンステージを席巻していたサマソニから帰ってきて以降、『Unwanted』をずっと聴いていた、そのあとすぐ観に行った来日公演含めて、少し肌寒くなったとき彼らの音楽は近くにあったのだ。新しいアルバムは雨の錦糸町みたいに少し冷たくて、でも何処か一縷のあたたかさを握りしめたまま心象のなかにセーフスペースを探し求めるようなしたたかさがにじんでいた。



昨年の後半からエッセイを始めて1年間くらいはタイトルを短歌にしようと無理くり制約課してほんとうに1年分書いてしまった。エッセイのタイトルとはいえ、短歌に"Pale Waves"って入れたの自分が初なのではないか。10月になったらレコ発ライブが待っている。ささやかな節目として悔いをのこさずやりきれたらと思う。10月18日(金)両国SUNRIZEで待っています!

なかたにつよし & 両国SUNRIZE presents
なかたにつよし 1st Full Album『幽霊船はうつらない』Release party "ホーンテッドおじさん'24"

10月18日(金)
at.両国SUNRIZE
OPEN 18:30 / START 19:00
ADV/DOOR ¥2400 + DRINK (¥600)

act
夏目とも
ピスたちお
仲真弘
式守ウノ
なかたにつよし

10月18日(金) 両国SUNRIZE
OPEN 18:30 / START 19:00 ADV/DOOR ¥2400 + DRINK (¥600)

※チケットご予約は各アーティスト、SUNRIZEまで。
https://livehousesunrize.jp/events/22659

〒130-0026 東京都墨田区両国4-36-6
TELL: 070-2002-3573 MAIL: ryogokusunrize@gmail.com

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