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「ワイズカンパニー」あの野中・竹中先生の四半世紀ぶりの【続編】はやはり勉強になった。【読書レビュ】

ワイズカンパニー 知識創造から知識実践への新しいモデル
野中 郁次郎、竹内 弘高 著 2020年9月の本

偉大な本。帯には「経営学の世界的名著『知識創造企業』著者両氏による四半世紀ぶりの【続編】」と書かれている。これは必ず読まねばならない本だと購入。『知識創造企業』は20年前にビジネスマン人生がはじまるにあたって会社から入社前研修キットの中に入っていた本で、読んだ当時もそうだが昨今のVUCAの時代で昨年読みなおして(時代が変化しても読み継がれるべき本だと)物凄く感銘を受けた本。

失敗の本質、戦略の本質もそうだが野中先生の本はその時の出会いから直観の経営とか含めていくつか読ませていただいている。自分の社会人人生で最も影響を受けた先生と思っている。

さて、本書の内容としては、『知識創造企業』25年の歳月を経たところからの、SECIモデルの発展形、SECIスパイラルモデルというところが研究のメインとなってくるところであるが「知識創造から知識実践への新しいモデル」との副題のあるとおり、アリストテレスが提唱した「フロネシス(実践知)」という概念に向けて日本の読者でも理解のしやすい多数の日本企業の事例でもって検証している。(フロネシスは「何をなすべきかを知る」知識、という記述もあった)トヨタやホンダ、JALやファーストリテイリングといったところから、最近ではあのトースターのバルミューダまで事例に含まれていて興味深い。


そうそう、前書もそうだったのだが、日本人のお二人が記載された本なのに訳となっていて、英語版を先に出版後の日本語版という位置づけ。日本語版あとがきには「多くの日本人が本書を読んで、一緒に腕まくりして、これからの新しい時代の「生き方」について議論を深めていただきたい」とある。


『知識創造企業』がいかにすごい本だったかを表現する部分も冒頭にあったのでその部分も含めて抜粋しておく。
(本書そのものが著名な書籍の引用抜粋も多いので抜粋の抜粋になっているところもありますが… :原注と参考文献だけで50ページ以上あります)

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ⅰ 2013年、英国の経営学の学術誌『ナレッジマネジメントの研究と実践(Knowledge Management Research and Practice)』では、『知識創造企業』が2003年から2012年までの10年間において、ナレッジマネジメント分野で最も引用された文献だったことが紹介された。同じ年、日本のビジネス誌「週刊ダイヤモンド」の「100年後も読み継がれるべきベスト経営書」では第一位に選ばれた。

P68 今、どういう行動をとるか次第で、どういう未来が生まれるかは決まるということである。ハイデガーの考えに従うなら、未来の可能性を最大限に高められるよう、「いま・ここ」を生きることこそ、知識実践の理想的な方法になる。

P313に2005年6月のスタンフォードで行われたスティーブ・ジョブズの伝説の卒業式スピーチもあったが割愛

P376 従来のマネジメント理論では、組織設計や、報奨制度やルーティンや、組織文化の設計を通じて矛盾の解消がめざされる。ワイズカンパニーでは、矛盾は克服されるべき障害とは見なされない。むしろ逆に、知識の創造と実践に不可欠のものとされる。ワイズリーダーは矛盾を受け入れるからこそ、成し遂げるべき善を見失うことなく、状況に応じた最善の判断を下せる。

P406 そして、その末に行き着いたのは、『原理原則』ということでした。すなわち『人間として何が正しいのか』というきわめてシンプルなポイントに判断基準を置き、それに従って、正しいことを正しいままに貫いていこうと考えたのです。
 嘘をつくな、正直であれ、欲張るな、人に迷惑をかけるな、人には親切にせよ…そういう子どもの頃に親や先生から教わったような人間として守るべき当然のルール、人生を生きるうえで先験的に知っているような『当たり前』の規範に従って経営も行っていけばいい。 
 人間として正しいか正しくないか、よいことか悪いことか、やっていいことかいけないことか。そういう人間を律する道徳や倫理を、そのまま経営の指針や判断基準にしよう。

P438 本書『ワイズカンパニー』の刊行につながった研究は、次のように要約された。
 「情報から知識へ、知識から知恵へと考えを進化させてきた野中は、人間的なリーダーシップの必要性をますます強く訴えている。それはよりよい社会を築くために人間の独創的な能力を役立てるリーダーシップである。『ビジネス界にもっと人間中心の経営という発想や実践が求められる時代だ』と野中は指摘する」

P459 生き方としての経営では、自社が何を象徴するか、どういう世界に生きたいと思うか、そのような世界をどのように実現するか、どういう方向に進むか、どういう未来を築きたいか、どういうレガシーを残したいか、どのように社会に貢献できるかということが考慮される。よりよい未来を実現できるのは、自分たちにどういう使命が与えられているかを理解し、ひたすら正しく生きようとし、終わりのある一生の中で常に自分を磨き続けるときである。

P461 SECIは組織モデルだったが、共通善という概念が組み込まれたことで、社会モデルになった。知識創造とは、組織と社会との絶えざる相互作用であり、対話である。したがって知識の創造や実践は、組織の物理的・社会的な境界線内に限定されるものではない。

P469 本書では、その知識を絶えざる実践を通じて知恵(wisdom)にまで高めることの重要性と、その知恵を獲得・活用するための方法を示した。実践を積み重ねていくと、実践知が得られる。なおも繰り返していくと、実践知が豊かになり、次第にスケールが大きくなる。企業の枠を超えて社会までも巻き込んでいく。
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また何年も読み返そうと思う。

最後にいつものブクログのリンクをつけておく

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