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『プロダクト・レッド・オーガニゼーション』引き続き輪読会で読んだ本をアップです。

こんばんは、大橋です。大型連休中に読書が進められたわけではないので、結局二週投稿で、もう早くも尽きてしまうのですが、二週目、お送りします。
こちらの本も以前紹介した「EMPOWERED」に引き続き、会社での輪読会にて読んだ本となりました。 私は会社においては法人営業という職種を担当しており、プロダクトと呼ばれるプロダクトやサービスを担当する部門ではないのですが、先日の輪読会が楽しく勉強になった手ごたえを強く持ったことから継続して参加しました。

輪読会においては(私が特に異色なのですが)いわゆるプロダクトマネジメントを学ぼうとする多様な組織のメンバーが集まり、各章を読みこんでそれぞれが発表し、参加者全員の学びにつなげていくという営みをしています。ふだん法人営業という組織にいるからほとんど気づくことが出来ない視点や、また逆にプロダクト組織のメンバーにもフロント営業としてのものの見え方を伝えたりしています。


プロダクト・レッド・オーガニゼーション 

 顧客と組織と成長をつなぐプロダクト主導型の構築
トッド・オルソン 著 横道 稔 訳
2021年 11月の本 
 
 本書は、★『プロダクトは顧客体験そのものである。』という強いコンセプトのもと、プロダクトがどんな価値を顧客へ提供し、どう計測し、フィードバックしてプロダクトを成長させ、継続的な最適化の基礎を築いていくか?というプロセスや手法を具体的に記載した本となっています。 昨今のプロダクトでは、ユーザーがどのように利用しているか、どういった機能は使われていて、どんな機能はユーザーにも知られていない・活用されていない、ということがデータでほぼすべてわかるということを軸として構成されています。 つまりスマホやブラウザを介して、ユーザーはどのような顧客体験をしているかが提供者側にはすべて見えていて、それに対する高速な追加機能提供を継続することにより、プロダクトは価値を提供し続けられる、と主張しています。

プロダクトといっても、私共が提供するようなインフラを支えるサービスも一つのプロダクトであるから、こういった観点は当てはめにくいよね、というような議論もあったけれど、確かにここ数年で圧倒的ボリュームとなったスマホアプリの概念から考えると、本書で述べられている考え方は相当しっくりくるのかもしれません。 「プロダクト・レッド・オーガニゼーション」:プロダクト主導型組織を作っていくにはどうしたらよいのか?どのような点を意識すべきか、という意味では非常に実践的で参考になる本だと思います。 もちろん適用領域という議論は必要かもしれませんが。

ざっと感想は以上として、以下、「刺さった言葉たち」ほか引用抜粋です。


■0.まえがき、プロダクト主導型の戦略

・P5 私たちは、「納期までにソフトウェアをリリースする」という点では大きな進歩を遂げているが、そもそも「何を作るのか」を決断する点では、全然うまくいっていないのである。
 (中略) ソフトウェアをいかにして期限内、予算内、適切な品質基準で提供するかという達成しやすい課題へのフォーカスから、顧客にとって適切なものを作るという達成し難い課題へのフォーカスの変化だ。

プロダクト・レッド・オーガニゼーション P5

実を言うと、このまえがき、以降の0章がこの本で一番響いたという印象です。このまえがきのストーリーで一気に本に引き込まれました。いわゆるプロジェクトマネジメントとして、QCDを意識してプロジェクトをリリースする、という考え方から、顧客にとって適切なものを作る という大きな変化が求められていることを述べています。

私は経験上、プロダクトに関わる人々は、地球上でも稀有なほど情熱的で共感的な人々であると感じている。 彼らは普通の人とは少し違った思考を持っていて、何かを作り、作ったものをより良くすることに夢中になる。「ここはとても情熱的に物事に取り組んでいる人たちのコミュニティだ」といった感覚があるからかもしれない。

プロダクト・レッド・オーガニゼーション P6

本論とは異なるかも知れませんが、僕がプロダクトマネジメント関連の皆さんとお付き合いし、輪読会や各種イベントに参加するのはまさにこの「ここはとても情熱的に物事に取り組んでいる人たちのコミュニティだ」 の部分にあるのだと感じているから、引用しました。 パッション強めな人間なので、パッションが寄り合うコミュニティには強く惹かれてしまいます。

「正しいもの」を作る、つまり顧客に確実に価値をもたらすものを作る難しさは、それが一度やれば終わりではない点にある。作るべきものを選んで、作る、というような単純なものではない。 プロダクトに終わりはなく、進化し続けるものなのだ。これは同時にプロダクトマネジャーも進化し続けなければならないことを意味する

プロダクト・レッド・オーガニゼーション P8

本を読み終わってから、こうしてまとめていくと改めて見えてくることもございますが、まさに プロダクトに終わりはなく、進化し続けるものなのだ  の部分から、同時にプロダクトマネジャーも進化し続けなければならない の観点、コーチがコーチングを学べなくなったらコーチである資格はないという概念とも関連してくると思いました。 

重要なのは、そのプロダクトが実際に存在する課題を解決することである。そして、ユーザーが楽しめる方法で実現することだ。これが、プロダクト主導型アプローチの最も重要かつ累積的な利点となる。プロダクトを単なる売り物としてではなく、顧客の生活をより良くする手段とみなすように、組織を変革していくのだ。

プロダクト・レッド・オーガニゼーション P17 

僕は法人営業、ソリューション営業なので、顧客の課題を解決する提案を行うことが主業務です。そういった観点から そのプロダクトが実際に存在する課題を解決することである とシンプルに述べていただいていることにインパクトを感じました。そして単なる売り物 ではなく 顧客の生活をより良くする手段とみなすように、組織を変革していく、プロダクト主導となるよう「組織を変革」というところがこの本の主テーマなんだな、と認識しました。

プロダクトマネジメントやソフトウェア開発に関する書籍は数多くあるが、プロダクト主導型組織を構築するという、ますます求められている運営上の課題を解決するコンテンツはほとんどない
 (中略)
 本書は、プロダクト組織における計測、フィードバック、継続的な最適化の基礎を確立するため、つまりプロダクト主導型になるための実践的なガイドとなっている。

プロダクト・レッド・オーガニゼーション P23 

ここまでで、ほぼほぼもう読書レビュ、本紹介としては成り立ってしまっているのではないかな、と思うぐらいパッションのこもったまえがきだったと思います。 プロダクト主導型に組織を作っていくにはどういったところを気を付けたらよいか、という本がないので書いてみた、と著者は言っています。 その通りの本だと思います。 さて、以降は、長くなってきてしまっているので(意図的に)さらっと行きたいと思います。


■1.データを活用して優れたプロダクトをつくる

・プロダクト開発の初期段階では、「Who」をドキュメントに落とし込むことは極めて重要だ。
 (中略)
   顧客を正しく理解し、共感することでイノベーションが生まれる
 (中略)
   鍵となるのは、顧客が本当に求めているものを、データやメトリクスを使って探し出し、見極めることだ。

プロダクト・レッド・オーガニゼーション P36

すべてのプロダクトチームは、自分たちがリリースした機能が顧客に定着するよう望んでいる(もしくは、期待している)。しかし、残念ながら、そうなるとは限らない。80%以上の機能が、ほとんど、あるいはまったく使われていないことを思い出そう。これらの機能に関するコスト(そして機会損失)を考えると、こうした気づきがビジネスに与える影響は驚異的だ。 だからこそ機能の定着率を計測し、目標に設定することが重要なのだ。

プロダクト・レッド・オーガニゼーション P66

定性と定量の完璧な融合によって、チームは顧客の全体像を把握し、顧客のニーズを深く理解することができると考えてほしい。同様に、最も価値のあるインサイトは、顧客が明示的に語ることと、顧客の行動で示されることが交差する部分にあることが多い。

プロダクト・レッド・オーガニゼーション P87

プロダクトには終わりがない、ということがまえがきに書かれてありましたが、「Who」つまり誰に喜んでもらいたいか、プロダクトの対象となる人はどんな背景、どんな利用方法をされる方なのか、その彼らはプロダクトを用いて、どのような顧客体験をしていくのか、どういった課題を解決していきたいのか、ということを想像し、それらの一連の流れ(ジャーニー)において、どういったところが不足しているか、を考える。プロダクトをよくするために、定量のデータはもちろん、(アンケートやインタビュー等の)定性のデータも用いて、プロダクトを育てていく。 データ利活用だとか、いろいろご提案しておりますが、「測定できるものは改善できる」 のコンセプトに従い、プロダクトを成長させていきたいですね。



■2.プロダクトは顧客体験の中心にある

従来は各部門が顧客体験の一部をそれぞれが受け持っていたが、現代の消費者はプロダクトを通して企業と100%関われることを期待している。

プロダクト・レッド・オーガニゼーション P112

ユーザーがやりたいことを可能な限り早く、シンプルな方法で正確に示せば、ユーザーは価値を見出し、定着してくれるということだったのだ。

プロダクト・レッド・オーガニゼーション P131

初めてのユーザーは、「見知らぬ土地に来た見知らぬ人」ではなく、「ワクワクするような新しい場所に迎え入れられた人」であるべきだ。このような体験をきちんと届けるためには、細部にまで気を配る必要がある。
 (中略)
オンボーディングが正しくできれば、プロダクトの拡大は必然となる

プロダクト・レッド・オーガニゼーション P141

一方、中立的な顧客は、最も時間をかけるべき顧客である。中立的な顧客は満足してはいるが、「未開拓」である。ちょっとした気配りで、最大のアドボケイトになってくれる可能性がある。

プロダクト・レッド・オーガニゼーション P188

顧客に生涯にわたって満足してもらうためには、プロダクトを進化させ、再構築することで、顧客が継続的に価値を得られるようにしなければならない。

プロダクト・レッド・オーガニゼーション P191

プロダクトは顧客体験の中心にある、というこちらの章、(初めに記載した)「★『プロダクトは顧客体験そのものである。』」をまさに記述した賞となっています。 昔はプリセールス、セールス、アフターセールスといってセールが(プロダクトで言うとリリースが)達成目標でありましたが、顧客体験そのものとなったプロダクトは、顧客と100%関わっていくことを求められています。 オンボーディングで歓迎の意を与え、継続的にプロダクトにて顧客課題を解決し、定量的・定性的なデータから継続的な改善を行い、そして、特に(サイレントマジョリティーと呼ばれる)中立的な顧客を大事にしてプロダクトを成長させていく、それら一連の観点と気を付けることが記されています。  長くなりましたが、あと一章です。



■3.プロダクトデリバリーの新たな方法

ソフトウェアの開発プロセスが進化するにつれ、プロダクトのバージョンを定義するという考えがほとんどなくなった。この考えはさらに一歩進んでおり、最近の多くのプロダクトデリバリーチームでは、「プロダクトリリース」という概念さえもなくなり始めている。代わりに、プロダクトは流動的で急速に進化する機能の集合体となり、ユーザーのために独自に組み上げられるようになりつつある。

プロダクト・レッド・オーガニゼーション P205

機能要望をどのように管理するかにかかわらず、フィードバックを提供してくれた人との間で、必ずコミュニケーションをきちんと決着させよう。ユーザーの声を単に分析するだけでは不十分で、ユーザーの声が届いていることを、ユーザーに知ってもらわなければならない。

プロダクト・レッド・オーガニゼーション P232

本書のここまでで提案したことを一度にすべて実行する必要はない。少しずつ始めればよい。そして、まずはデータから始めよう。計測していないものは改善できないことを忘れてはならない。いくつかの指標やベンチマークを設定し、それを「Why」や「どこに向かいたいか」に結び付けよう。(中略) 今こそ、あなたが行動する時だ。

プロダクト・レッド・オーガニゼーション P262

プロダクトをデリバリー(顧客のもとへ届ける)する方法についてまとめられたこちらの章。 さきほども記載しましたが、セール、アフターセールス(サポート)という顧客への届け方から、顧客とともにプロダクトが継続的に成長していかなければならない、デリバリーの手法も変わってきている、そして、顧客からのフィードバックループはコミュニケーションとしてきちんと決着させよう、たゆまなくプロダクトを磨き続けるデリバリー(提供)方法について、等の内容が記載されていました。 最後は、計測していないものは改善できない + 今こそ、あなたが行動する時だ とパッション多くクロージングされていました。 著者の熱量を最後も感じられました。


以上

プロダクトマネジメントに関わっていない方はもちろん、プロダクトマネジメントに関わっておられる方にとっても読みにくい記事となってしまっていると、恥ずかしながら筆者も感じております。 うまく主要な論点を抑えつつ、「あ、こんな本なら読んでみたいな」と読者に思っていただけるようなブログを今後とも目指していきたいと思います。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。

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