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顧客を知る

「顧客を知る」というのは事業の本質で、一見当たり前なのですが、実際のところ企業を紐解いてみると、その会社の顧客の実態を完全に知っている人は殆どいません。全くいないと言っても過言ではない。おそらく、会社は人数が増えるうちにどんどんと分業化され「個人が顧客を知る必要はない」と言うレベルに達するのだと思っています。顧客を知らない企業の存在を否定しているわけではなくて「顧客を知らなくても営業できる」というのは一つの高みであると思います。

前職は医療機器の製造販売業であり、主に病院に向けて販売していました。医療機器の顧客というのは「医師や医療従事者」と思われるでしょう。もちろん半分正しいです。私は医療系大学出身なので、医師相手に営業活動をすすめることが多いです。しかし医師が欲しい物を決定すると言っても医師個人のお金で機材を買うわけではありません。そう、もう半分の顧客とは「事務長」などの経営層です。また経営層に繋がる地域の販売代理店などが顧客になります。医療機器の営業は、機材や医学のことを知らなくても、事務職や販売代理店の事情を知っているだけでものを売ることができます。

前職の営業マンは上記の後者であり、医学のことは殆ど分かりませんでした。代わりに医学がわかる医療系大学出身の我々がそのサポートをして営業を行っていました。理にかなっていますが、互いにそれぞれの知識やスキルは明かされないままでした。私は起業した今になって、顧客のもう一つの側面を見ることが出来るようになりました。なので私は今、前職から我々とは別に独立された営業部の先輩の協力をいただきながら、私がこれまで知らなかった顧客に向けた戦略を練っているところです。このように、顧客の実態を知るということは、一筋縄では行かないことが多いです

医療機器の場合、開発した機器を使うのは開発者ではなく医療従事者です。開発者は医療のバックボーン(例えば解剖)などを知りません。しかしゲーム業界の場合はどうでしょうか?ゲームは自分で作って自分で遊べます。おそらく一般人向けに開発されるアプリケーションは、開発者自身が使用して理解できるはずです。医療機器アプリケーションの開発が難しいのはまさにここであり、だからこそ「客を知る重要性」に気がつく、そして知るためのスキルが身につくわけです。更に販売網や装置購入の決定プロセスを学んでいく必要もあります。例えば国公立施設への販売の場合は入札が行われますが、誰がどのように納品するのか、各自の立場や役割を知っていく必要があります。

そうした上で考えるのは「顧客には顧客の事情がある」ということです。この事情を踏まえてカウンセリングのように意見を聞き、自分の製品を勧める。起業当初からこのような姿勢を崩さずにいます。決して「押せば売れる」と言う考え方は、起業直後は辞めたほうが良いと考えています。顧客のすべてを一人で知るということはそのうち限界を迎えますが、徐々にでも知っていく心構えは必要と思います。


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