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最高にトゥースな一夜「オードリーのオールナイトニッポン in 東京ドーム」を振り返る。

【2/18(日) オードリー @ 東京ドーム】

ラジオ番組「オードリーのオールナイトニッポン」、および、その番組イベントの歴史は長い。2009年に番組がスタートし、5周年を迎えた2014年には東京国際フォーラムで、10周年を迎えた2019年には日本武道館で周年イベントが開催された。そして、昨年2023年3月18日、約1年後の2024年2月18日に、15周年イベント「オードリーのオールナイトニッポン in 東京ドーム」を開催することが、その日の生放送中に東京ドーム現地から発表された。

振り返れば、2022年10月に放送された単発番組「じゃないとオードリー」の中に、東京ドームライブに繋がる予兆があった。若林は、2022年3月に開催された日向坂46の東京ドームライブ、また、彼女たちのドキュメンタリー映画を観て背中を押されたと語った上で、「そんなことできるわけないと思ってるんだけど、オードリーで東京ドームライブやりたいって2人で決めた。」と語っていた。また、2023年8月には、若林と星野源による数ヶ月間にわたる対話の模様を収めた番組「LIGHTHOUSE」がNetflixで配信された。特に後半の展開が顕著だったように、この番組は東京ドームライブへと続くドキュメンタリーとしての色合いが非常に濃いもので、その他にも、毎週のラジオ番組の中で新コーナー「Road to 東京ドーム」が始まったり、YouTubeチャンネル「オードリー若林の東京ドームへの道」がスタートしたり、イベント応援グッズが販売されたり、というように、とにかくこの約1年間は、オードリーも番組スタッフもリスナーも、みんな東京ドームライブのことで頭がいっぱいだった。僕もその一人で、その日が来るのが楽しみで仕方がないような、その日が来てしまうのがどうしようもなく切ないような、そんなアンビバレントな気持ちを抱きながら毎週ラジオを聴き続けてきた。



そして、ついに迎えた当日。東京ドームに53,000人、全国各地のライブビューイング会場に52,000人が集まり、また、55,000人が配信で視聴、結果として、計16万人がオードリーの初の東京ドームライブをリアルタイムで見届ける形となった。(配信は、一つのデバイスで複数名が視聴しているケースもあるので、実際の合計人数は16万人よりもさらに多かったはず。)ライブの冒頭で、若林は「ラジオやります。」と宣誓した。その言葉のとおり、いつもの放送のようにオープニングトークがあって、提供クレジット読みがあって、2人それぞれのフリートークのコーナーもあった。2人のささやかな(だからこそ尊い)雑談や近況報告、学生時代の思い出話に笑う、という体験は、まさに毎週のラジオを聴く時の体験そのもの。一つだけ違ったのは、広大な東京ドームを埋め尽くす53,000人のリトルトゥースと一緒に同じ空気・フィーリングを共有できたことだった。それは、全く新しい形のライブエンターテインメントであったが、あの時に僕が抱いたのは、その斬新さや新鮮さではなく、むしろ温かな親しみや安心感だった。53,000人のリトルトゥースと一緒に、いつものラジオを聴く。そして、一緒に笑う。あまりにも非日常的で、それでいて日常的な、とても不思議な時間・空間だった。

その後は、東京ドームという華々しいステージをフルに活かした特別企画が次々と展開されていった。春日のゲレンデがボッコボコにされた。(修理費90万円!)クミさんのためにフワちゃんが駆け付けた。(入場曲には、乃木坂46"おひとりさま天国"の《It's the single life》がサンプリング!)星野源も駆け付けて、若林と共に"Orange feat. MC. waka"と"Pop Virus feat. MC. waka"(この日のために書き下ろした特別のリリック! 佐久間宣行いじりもあり!)を披露した。イベントの最後を締め括ったのは、オードリーの2人による「感謝」の漫才。(舞台袖からセンターマイクまで過去最長のストローク!)あまりにも特別な瞬間の連続だったけど、同時に、イベント前半のラジオパートと同じように、いつもの深夜1時からの親密な空気感がずっと保たれていて、まるで、超豪華なスペシャルウィーク回のイマジンスタジオの収録に立ち会っているような気分だった。

イベントが終わってからも、あの日の余韻がずっと胸の中から消えなかった。ライブの翌日から、数々のラジオ番組やポッドキャスト番組で様々な人が当日の感想を熱く語り、2月24日の「オードリーのオールナイトニッポン」は、まるで打ち上げや後夜祭のような盛り上がりだった。ちなみに、イベント当日から約1ヶ月が経った3月16日の回でもまだまだ東京ドームの話が尽きないし、また、おそらく東京ドームライブの直後に収録したであろう 3月17日放送の「日向坂で会いましょう」では、オードリーの2人と当日参加していた日向坂46のメンバーたちの冷めやらぬテンションがひしひし伝わってきて(いつも非常に秀逸なテロップも東京ドームライブ関連の小ネタでいっぱい!)、番組を観ながら、もう3月が下旬に差し掛かろうとしているにもかかわらず、ドームライブ当日の高揚感が再び胸の内に沸き起こってきた。この余韻は、まだまだ消えそうにない。


2月18日の東京ドームライブから1ヶ月、そして、東京ドームでライブをすることを発表した2023年3月18日の生放送からちょうど1年が経った今年の3月18日、イベントの冒頭でスクリーンに映し出されたウェルカムムービー「おともだち」がYouTubeで公開された。ライブ当日にこのアニメーションを観るまで、僕は、星野源が東京ドームライブの主題歌として書き下ろした楽曲"おともだち"のことを、オードリーの2人の関係性を歌った曲だと思っていた。今でもその捉え方は間違いではないと思うけれど、ただ、それだけではないことに当日このウェルカムムービーを観て気付いた。このアニメーションの中で描かれているのは、学生時代の友人同士で、お互い「オードリーのオールナイトニッポン」のリスナーだった2人の登場人物が、その後に別々の道を歩むが、長い年月を経て東京ドームライブの会場で再会する、というストーリー。このアニメを観て、「これは、私(たち)の歌だ」と感じた人は少なくなかったのではないかと思う。

このムービーで描かれていたように、リトルトゥースの友人と一緒に東京ドームやライブビューイング会場に足を運んだ人、配信を観ていた人は多いと思う。その一方で、一人で参加した人、一人で配信を観ていた人もいて、むしろ、東京ドーム現地に参加した僕の体感としては、一人で参加していた人のほうが多かったように感じた。そもそもラジオというメディアは、本質的に一人で聴くメディアである。オードリーの2人と、たった一人の自分。一部のコーナーを除いてリスナーのメールを積極的に読むタイプの番組ではないからこそ、より強くそう思うのかもしれない。それでも、同じ周波数の向こうには、たくさんのリスナーがいる。東京ドームライブの開催が発表されてから約1年間、一緒になってライブの成功を祈り、応援グッズで盛り上げ、チケットの当落に一喜一憂しながら、オードリーの2人と共に「Road to 東京ドーム」を歩んできた、数え切れないほどたくさんのリトルトゥースが、同じ周波数の先にいる。オードリーの2人が「おともだち」同士であるように、彼らの会話を一緒に聴く一人ひとりのリスナーたちも「おともだち」同士である。星野源が書き下ろした主題歌"おともだち"には、そうした温かな繋がりを豊かな実感を通して伝える力が宿っていたことを、僕はあの日、このウェルカムムービーを観ながら深く思い知った。ラジオを聴く時はいつも一人であるように、また、これまで星野源が"うちで踊ろう(大晦日)"をはじめとした数々の楽曲の中で歌ってきたように、私たちはみんな本質的に《ひとり》である。それでも、同じ周波数の先に、たくさんの「おともだち」がいることを伝えてくれた"おともだち"は、ラジオ番組イベントの主題歌としてあまりにも完璧な役割を果たしていたと言える。星野源、本当に恐るべし。


若林は、イベント終盤に、「お互いトゥースだったら、またやろうや。」と語っていた。それは言うまでもなく相方の春日へ向けた言葉であったが、同時に、一人ひとりのリスナーへ向けられた言葉でもあるように思えた。書籍「オードリーのオールナイトニッポン トーク傑作選2019-2022 『さよならむつみ荘、そして……』編」の中で、成田凌は、「僕、『若林さんに嫌われるような人生は歩んじゃいけない』って常に意識していまして。」と語っていて、また、日向坂46の松田好花は、「バッドトゥースにはなりたくないですよね。『これは若林さんだったらどう思うかな?』って常に考えながら生きてます。」という言葉を残していた。僕自身も、「命の回転が悪い」と言われるような生き方はしたくないし、いつだってトゥースな自分でありたいし、そして何より、今回の東京ドームライブが一回限りのイベントにならないことを強く望む。

オードリーの2人、そして、チーム付け焼き刃の皆さん、大きな大きなトゥースを本当にありがとうございました。



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