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KinKi Kids、革新のジャニーズ・ポップス10選

KinKi Kidsとは、何者であるのか。

言うまでもなく、日本のトップアイドルであり、バラエティタレントから俳優まで幅広く手がけるエンターテイナーであり、このように、2人の多彩な才能・魅力を挙げていけばキリがない。しかし何より特筆すべきは、独自の音楽観を追求し続ける音楽家である、ということだ。

ただ与えられた楽曲を歌うだけではない。確かな批評性と、どこまでもストイックな表現姿勢をもってして、日本の音楽シーンにおけるレジェンドアーティストたちが制作した楽曲をKinKi Kids色に染め、時に自ら作詞・作曲を手掛ける。

男性アイドルのアーティスト化。あえて語弊を恐れずに言えばそうなるが、 KinKi Kidsは、この国における「アイドル」「アイドルソング」の在り方を、不可逆的に革新し続けてきた。いつまでもフレッシュな姿勢で自分たちの音楽表現の更新に挑むその姿に、後進のジャニーズグループたちは絶大なる影響を受けているはずだ。

今回は、20年以上にわたって紡がれてきた彼らのディスコグラフィーの中から、J-POPシーンや後進のジャニーズグループに大きな影響を与えた10曲をセレクトした。

この記事が、あなたがKinKi Kidsの音楽と出会う/再会するきっかけになったら嬉しい。


硝子の少年(1997)

作詞:松本隆  作曲:山下達郎

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Stay with me
硝子の少年時代の
破片が胸へと突き刺さる
何かが終わってはじまる
雲が切れてぼくを
照らし出す
君だけを
愛してた

今から振り返れば、アイドルのデビュー曲としては、あまりにも陰影が深く、壮絶な悲壮感さえ漂わせる楽曲である。しかし、松本隆と山下達郎は、「憂い」を秘めた2人の歌声に可能性を見い出し、極めて繊細でフラジャイルな心象を表す同曲を制作した。そしてこのデビュー曲によって、KinKi Kidsの革新的なアーティスト像が決定付けられる。まさに、J-POP史に刻まれるべき「運命のデビュー曲」だと思う。なお、"Kissからはじまるミステリー"(1997)、"ジェットコースター・ロマンス"(1998)、"HAPPY HAPPY GREATING"(1998)の3曲も、松本隆&山下達郎のコンビが制作を手掛けており、KinKi Kidsが、いかに日本音楽界のレジェンドたちから祝福されてデビューしたかが伝わってくる。


ボクの背中には羽根がある(2001)

作詞:松本隆  作曲:織田哲郎

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ずっと君と生きてくんだね
ボクの背中には羽根がある
どんな夢もかなう気がする
君を抱いて空も飛べる
嘘じゃないよ
今、「幸福」に触ったみたい

稀代の作曲家・織田哲郎による提供曲にして、初期の音楽活動を代表する一曲。J-POPをラテン音楽の観点から解釈し直す斬新なアプローチは、その後の音楽シーンにも大きな影響を与えた。こうした意欲的な挑戦を可能としたのは、やはり光一と剛の声が、先天的に蒼い情熱を帯びていたからだろう。この曲を契機として、彼らは"solitude 〜真実のサヨナラ〜"(2002)、"ビロードの闇"(2005)をはじめとするダークな哀調を帯びた楽曲に次々と挑戦していく。


愛のかたまり(2001)

作詞:堂本剛  作曲:堂本光一

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思いきり抱きしめられると心
あなたでよかったと歌うの
X'masなんていらないくらい
日々が愛のかたまり
最後の人に出逢えたよね

シングル『Hey!みんな元気かい?』に収録されたカップリング曲。底抜けに明るい表題曲に対して、自分たちが大切にする音楽観を表明するために、自らの手で同曲を制作を手掛けた、という経緯がある。なお、編曲を担当したのは、「LOVE LOVEあいしてる」「堂本兄弟」を通して、KinKi Kidsの2人を音楽の世界へ導き、また、長きにわたりコンサートのバンドマスターを務め続ける吉田建である。KinKi Kidsの音楽の最大の理解者である彼がアレンジを施した"愛のかたまり"が、2人にとって永遠の代表曲となったのは一つの必然だったのだろう。ジュニアの後輩たちに歌い継がれ続けている同曲は、まさに至高のジャニーズ・アンセムである。


カナシミ ブルー(2002)

作詞&作曲:堂島孝平

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悲しみにくちびるよせて  くちびるに手をかざして
もういちど魔法をかけて  惑わせて  その口許で

KinKi Kidsの盟友・堂島孝平から提供された楽曲。作詞家・作曲家だけではなく、自身も表舞台に立つアーティストからの楽曲提供は、2000年代以降さらに増えている。例えば、"ね、がんばるよ"(2004)を手掛けたのは、吉田美和&中村正人(DREAMS COME TRUE)であったし、"永遠に"(2007)は徳永英明が作曲を担当していた。近年では、安藤裕子が"道は手ずから夢の花"(2016)を、久保田利伸が"The Red Light"(2017)を提供している。こうした事実は、KinKi Kidsが、同じJ-POPシーンで活躍するアーティストたちから熱いリスペクトを受けていることの何よりの証左であると思う。


Anniversary(2004)

作詞:Satomi  作曲:織田哲郎

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キミがいるだけで  ありふれた日々が
鮮やかに彩られ  愛が満ちてゆくよ
この気持ちだけは  忘れたくないから
何気ない今日と云う日が  ボクらの記念日

これまで幾度となくKinKi Kidsの楽曲の作詞を務めている作詞家・Satomi。"情熱"(2001)、"心に夢を君には愛を"(2003)、"夏模様"(2006)、"Secret Code"(2008)など、彼女が手掛けた楽曲を挙げていけばキリがない。その意味で、KinKi Kidsの2人が伝えるメッセージに、言葉を通して豊かな輪郭を与えてきた彼女の功績は、やはりあまりにも大きいと言える。"Anniversary"は、KinKi Kidsの2000年代の音楽活動を代表する楽曲の一つ。織田哲郎が紡ぐメロディは言葉を失うほどに美しく、そこに重なるSatomiの言葉は、どこまでも儚く透徹な愛情を丁寧に描き出している。アレンジの完成度を含め、日本のポップス史上で堂々と輝き続ける最上のラブソングだと思う。


雪白の月(2005)

作詞:Satomi  作曲:松本良喜

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君がいなくなってはじめて
シアワセの意味を知った。

雪をイメージして制作されたシングル『SNOW!SNOW!SNOW!』のカップリング曲。制作を担当したのは、"月のしずく"(柴咲コウ)、"雪の華"(中島美嘉)を手掛けたコンビである。KinKi Kidsの2人だけが醸し出すことができる「切なさ」を、あますことなくトレースした奇跡のような楽曲だ。なお同曲は、2007年、CDデビュー10周年を記念して行われたファン投票において、"愛のかたまり"(2001)、"Anniversary"(2004)に次いで3位に輝いている。


スワンソング(2009)

作詞:松本隆  作曲:瀬川浩平

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ほんとうに終わりなの
君はコクリ頷く
桟橋の端に立ち
手を振っていたけど
潮騒の中  無声映画の
ようにひざを折って泣いた

再び松本隆を招聘して制作された楽曲。なお、彼は他にも、上述の"硝子の少年"、"ボクの背中には羽根がある"をはじめ、"シンデレラ・クリスマス"(1998)、"薄荷キャンディー"(2003)などの作詞も手掛けている。その意味で、KinKi Kidsの楽曲は、一つの「詩」「物語」としての豊かな価値を誇っていると言える。日本を代表する作詞家と長年にわたりタッグを組むことができるのは、やはり光一と剛が、与えられた一つひとつの楽曲に命を吹き込むことで、送り手の期待に全力で応え続けてきた必然なのだろう。


まだ涙にならない悲しみが(2013)

作詞:松井五郎  作曲:織田哲郎

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まだ涙にならない悲しみが
心を記憶に閉じ込めてしまう
もうどうにもならない愛もある
ほんとの愛だけは
決して消えないから

数々のKinKi Kidsのアンセムを作曲してきた織田哲郎との再タッグが実現。作詞を務めたのは、日本の音楽史に燦然と輝くヒットソングを次々と生み出し続ける松井五郎。光GENJIの"勇気100%"(1993)や、J-FRIENDSの"明日が聴こえる"(1998)など、ジャニーズグループとのコラボレーションも多い。軽やかな疾走感の中で、KinKi Kidsの真髄とも言うべき「憂い」や「切なさ」が加速度的に高まっていく同曲は、2010年代の音楽活動の一つの代表曲だと思う。なお、この楽曲においては、亀田誠治が編曲を担当している。


薔薇と太陽(2016)

作詞&作曲:吉井和哉

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見つめ合えたらそこはもう地平線  行き先を失くした旅人みたいさ
カラダに残る  青春の後味が消えてしまう前に
死んだフリだよ  Va・Cu・Van

KinKi Kidsは、これまでにも様々なアーティストたちから楽曲の提供を受けてきたが、デビュー20周年を迎えたタイミングで、ついに、THE YELLOW MONKEY・吉井和哉とのタッグが実現した。彼とKinKi Kidsは、それぞれ主戦場とするシーンこそ異なっていたが、90年代のデビュー以降、同じ時代を駆け抜けながらJ-POPを更新し続けてきた同志であり、その意味で、両者の邂逅はとても感慨深いものであった。この楽曲のテーマは「大人になった硝子の少年」であり、デビューから20年が経って「変わったこと」よりも、20年が経っても「変わらないこと」、つまり、KinKi Kidsの本質を、吉井は見事に射抜いた。それは、蒼い情熱や、2人の声のハーモニーが放つ憂い、切なさであったりするが、その意味で同曲は、新しい原点回帰の形であり、同時に、一つの集大成でもあったのかもしれない。


KANZAI BOYA(2020)

作詞&作曲:堂本剛

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KANZAI BOYA  無敵なname
KANZAI BOYA  素敵だね...

J-POPのフォーマットが解体/再定義されつつあるこの2020年において、そのシーンのド真ん中で、果敢に痛快なファンク・ナンバーを打ち鳴らせるアーティストは、ただその事実だけをもってして称賛に値すると思う。そして、そうした過激な楽曲を、あくまでもポップな表現として成立させた剛の手腕は、音楽家としての新しいブレイクスルーを感じさせてくれる。長年にわたるソロ活動がKinKi Kidsの音楽活動と接続され、一つの結実を見せたことが何よりも嬉しい。大切な「幻のユニット名」を、何度も繰り返し連呼するこの楽曲は、きっと天国のジャニー氏にも届いていると思う。



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