いつからだろう。櫻坂46は、笑顔がとてもよく似合うグループになった。
【櫻坂46/『As you know?』】
2020年10月の欅坂46としてのラストライブを観た直後、僕はその時に感じたことを、次のように綴った。
そして、2020年12月、櫻坂46としての1stシングル『Nobody's fault』をリリースした彼女たちは、この約2年間を通して、グループの「もう一つの可能性」を懸命に追求し続けてきた。
まず何よりも象徴的であったのは、1stシングルの表題曲"Nobody's fault"である。この曲の「誰のせいでもない」というテーマは、欅坂46の実質的なラストシングル曲"黒い羊"における《全部 僕のせいだ》という平手友梨奈の切実な独白へのアンサーだったのだろう。
欅坂46時代を過去のものとして切り捨てることなく、その延長線の先に新しい物語を描き始めていく。そうした彼女たちの鮮烈な意志は、その後の活動における通奏低音となっていた。
欅坂46時代とは異なり、各曲ごとに次々とセンターをバトンタッチしながらグループの表現領域を拡張し続けてきた彼女たちは、"偶然の答え"や"思ったよりも寂しくない"、"無言の宇宙"をはじめとする清廉な響きを誇るポップソングを自分たちの代表曲として育み続けてきた。そしてこの春、最新シングル"五月雨よ"で一つの新境地へと辿り着いた。その晴れやかで壮大なサウンドスケープは、本当に輝かしく、そして美しいものであった。
もちろん、"BAN"や"流れ弾"、"Dead end"など、欅坂46時代の代表曲を彷彿とさせるエッジーで攻撃的なナンバーも多いが、そのどれもが、どこか吹っ切れたような痛快さを感じさせる。そうした楽曲を通して新しいアイドル像を見せつける彼女たちの姿は、とても逞しく、何よりも頼もしい。
そして、そうした約2年間の歩みをコンパイルしたのが、今回リリースされた1stアルバム『As you know?』だ。
櫻坂46のCDジャケットで、メンバーの笑顔がフィーチャーされたのは今回が初めてである。アートディレクションを担当したOSRIN(PERIMETRON)は、今作のメインビジュアルの制作を振り返って次のように語っている。
つまりは、今、櫻坂46は、とても笑顔が似合うグループになった、ということなのだと思う。とても感動的で、何よりも的確なディレクションだと感じた。
欅坂46というグループ名に別れを告げて再び歩み出す上では、きっとメンバーたちは、私たちの想像を絶するような痛切な思いを抱いていたはずだ。それでも、お互いに手を取り合いながら一歩ずつ前進する過程で、少しずつポジティブなオーラを放ち始めた彼女たちは、特にこの半年を通して、櫻坂46としての確固たる自信と誇りを獲得したように思える。
そして何より、よく笑うようになった。今、彼女たちは、2年前の時点では想像することもできなかったような美しい景色の中にいる。その温かい光景に、強く胸を打たれる。
冒頭で、櫻坂46は、自分たちの「もう一つの可能性」を懸命に追求し続けてきた、と書いたが、それは半分は正しく、半分は誤りであった。今回の1stアルバムのリード曲"摩擦係数"において、彼女たちは次のように歌っている。
この櫻坂46の最新曲は、全ての原点である欅坂46のデビュー曲"サイレントマジョリティー"と深く共振し合っている。そして、(他の全てのグループの楽曲たちと同じように)この言葉たちは、ただ与えられたものでは決してなく、他でもない彼女たち自身が呼び寄せたものである。
これまで、グループの「もう一つの可能性」を懸命に追求し続けてきた彼女たちが、今このタイミングで、欅坂46の「真髄」に再びアプローチするような楽曲を歌うことに、とても大きな意義を感じる。やはり、物語の全ては欅坂46から始まっていて、そうしたルーツは、今もなお彼女たちのアイデンティティであり、指針であり続けている、ということなのだろう。
そして、そのルーツと正しく向き合うことができた時に、ここからまた新しく開かれていく景色があるはずだ。ここから幕を開ける櫻坂46の第2章の物語は、きっと、メンバーたち自身も想像できない方向へと展開していくのだと思う。
たとえ、これから先にどのような道を進んでいくとしても、お互いに手を取り合いながら笑顔で歩み続ける彼女たちなら、きっと大丈夫だ。この1stアルバムを聴いて、僕はその確信を深めた。
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