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どうして売れ残っていたんだろう②

家に帰り、子犬はペットカゴから出された。

ペットショップのゲージとは違い、自由に動き回れることが分かったのか、部屋を動き回り、あちらこちらを嗅ぎまわる。

やがて興奮していた表情が落ち着きを見せ、女性が差し出した水を勢いよく飲み出した。

水を飲み終えると、女性はなんなく子犬を抱き上げた。子犬は2Kg弱で、抱き上げると、すっぽりと腕の中に収まる。

「ここがあなたのお家よ。一緒に暮らしましょ。」

抱きかかえられた子犬の緊張がほどけてゆく。

「お姉さんよ。よろしくね。」

お姉さんが撫でてくれる。子犬はさらに落ち着きを見せる。

夕方になり、お兄さんが何やら沢山持って帰ってきた。

リードやゲージにトイレシートなどマニュアルに従ったかのように取りそろえていた。

お姉さんはリードを取り出した。

「散歩に行きましょ。」

散歩がてら、お姉さんとお兄さんは話す。

「なんていう名前にする?」

お兄さんは漫画「孫悟空」の愛読者だった。

「ごくうだね。」

ごくうは初めての場所で、マーキングしながらスタスタと歩いて行く。

家に帰り、しばらくしてお姉さんはペットショップで買ったペットフードを取り出した。

ごくうは用事深げに匂いを嗅いで、なじみのあるペットフードと分かったのか、食べ始めたが、少し食べただけで止めてしまった。

「多かったのかしら。」

お兄さんも不思議に思う。

「ちょっと食べる量が少ないなー。こんなものかな。」

二人とも、小型犬の食べる量については知識がなかった。

二人の食事時にもごくうは側に寄ってこない。二人はあまり意識することなく、自分たちの食事を終えた。

翌日も、ごくうはペットフードを少し食べただけで、寝入ってしまう。

しかし、散歩だけは喜び勢いよく出かけていく。

「あまり食べないわね。」

「ペットフードを替えてみたら。」

ごくうはペットフードを替えてもあまり食べない。

二人が食事するときにもやってきては食べるが、気に入らないものが多いのか、偏食なのか、食べたり、食べなかったりする。

ごくうは一向に太らないどころか、成長して身体がどことなくスリムになっている。

子犬らしくコロコロしていないのは食べない所為?

「きっとそうよ。ごくうはペットショップであまり食べないから痩せたように見え、皆は買わなかったんだわ。」

お姉さんは自分を納得させるように反芻する。

どうして売れ残ったんだろうー① https://note.com/tsutsusi16/n/n0afe7d48c8d1
どうして売れ残ったんだろうー② https://note.com/tsutsusi16/n/nd796efee3865
どうして売れ残ったんだろうー③その後 https://note.com/tsutsusi16/n/nccefe6f11111