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どうして売れ残ったんだろうー③その後

ごくうはあまり食べないのに、散歩だけは喜々として出て行く。

そんなある日、飼い主のお姉さんに異変が起きた。お姉さんは目が痒くなった。目は日ごとに痒くなり、病院に行った。

「アレルギーですね。ペットなど飼ってますか。」

お姉さんのアレルギー症状は日ごとに酷くなっていたが、一度飼った以上は・・・。

お姉さんの自問自答は頻度を増していた。

ごくうが2歳を超えた頃からお姉さんのアレルギー症状は深刻になっていた。

「もう、ペットの里親サイトに登録するわ。」

お兄さんも従うしかなかった。

登録してから、メールのやりとりを経て、まもなく高齢者が夫婦でごくうを見にやってきた。ペットの里親サイトでは、高齢者を除外することが多かったが、背に腹は代えられなかった。

お姉さんは一刻も早く引き取ってもらいたかった。高齢者夫婦はごくうを気に入ったらしく、ペットフードなど一式を手渡されると、ごくうを連れて、隣町に帰って行った。

ーーーーー

ごくうは訳も分からず車で連れて行かれ、車酔いで気分は悪い。そんなに遠くでもないのに2度も戻してしまった。

玄関先で下ろされると、車が帰ったのに気がついてお隣さんが家族揃ってやってきた。ごくうは人が大好きで、酔ったことなどみじんも見せず、じゃれまくる。

お隣さんが帰っていくと、ごくうは勝手も知らない部屋で走り回っては立ち止まる。やがて興奮気味の様子も落ち着きを見せる。

散歩を終え、ごくうにペットフードを作ったが、少ししか食べない。
「環境が変わって、不安なんでは。」
ごくうは疲れているのか、ソファで寝始めた。
家事をすべて終え、二階に上がる前に、ごくうをケージに誘導した。不承不承ケージに入る。しばらく夜泣きしていたが、いつの間にか寝ていたようだ。

翌日から思い知ることになろうとは。朝の散歩に出かけた。散歩の後、ごくうに食事の用意をした。食べてくれない。お腹は空いているはずなのに。夕方の散歩は喜々として行く。しばらくして食事を用意した。やはり食べてくれない。

お姉さんの言葉を思い出す。
「よく食べますよ。車にも酔いませんよ。」
車にはもう酔わないなんて信じてはいない。
寝る前にフードを用意した。申し訳程度に食べただけだ。
「よく食べますよ。」も早々と信じられなくなっている。

翌日も散歩は喜々として出かける。食事は少し食べただけで寝入ってしまう。寝る前にも、もう一度食事を用意するが、ほとんど食べない。ケージに入れると、夜泣きしながら寝入る。

同じことを繰り返しながら1ヶ月。夜泣きに耐えかねて、ケージからベッドで寝ることになる。

散歩には喜々として出かける。散歩の時間が来ると、催促のワン!もたもたしていると、催促のワン、ワン。日ごとに声が強めになり、しつこくなる。少し食べたかと思うと、プイと横になる。宥め賺してなんとか食べさせる。とうとう自分の食べるところでは食べなくなり、仕事部屋の机の側に持ってくると義理のように食べる。

「よく食べますよ。車にも酔いませんよ。」

呪文のように唱えながら食べさせるが、気ままなごくう。

どこからか、聞こえてくる。
「売れるはずないよ。」
皆は予測していたのかな。

終わり

どうして売れ残ったんだろうー① https://note.com/tsutsusi16/n/n0afe7d48c8d1
どうして売れ残ったんだろうー② https://note.com/tsutsusi16/n/nd796efee3865
どうして売れ残ったんだろうー③その後(完) https://note.com/tsutsusi16/n/nccefe6f11111

ごくうは食べない
https://note.com/tsutsusi16/n/ncafdf70d7f0c

あっしには関わりのねぇことでござんす https://note.com/tsutsusi16/n/n7ad01fcf3d13




どうして売れ残ったんだろうー① https://note.com/tsutsusi16/n/n0afe7d48c8d1
どうして売れ残ったんだろうー② https://note.com/tsutsusi16/n/nd796efee3865
どうして売れ残ったんだろうー                    ③その後(完) https://note.com/tsutsusi16/n/nccefe6f11111ごくうは食べない https://note.com/tsutsusi16/n/ncafdf70d7f0c

あっしには関わりのねぇことでござんす   https://note.com/tsutsusi16/n/n7ad01fcf3d13