妻の語り草:味噌汁が消えた

コーヒーは中学生の時、家庭にあった。母の妹の主人が岩国基地に勤めていた。自然とコーヒーが家庭に入っていた。食後のコーヒーを楽しみにしたかどうかは分からない。母もわざわざお茶を煎れることはあまりなかった。父がコーヒーを気に入ったので、自然と食後のコーヒーを楽しみにしていた。

結婚して、勝手が分からないまま、妻は食事を用意した。妻の母は仕事していたので、結婚前から妻は家庭の料理を担当していた。しばらくして気がついた。

朝昼の食事が終わると、コーヒーを煎れる。

「ビックリしたいね。食後にコーヒーを飲むって。」

折に触れ、時にしばしば錦町の茶を頼んで煎れて貰う。錦町のお茶を渋く煎れる。

「雲南省から来た茶の木かなあ。」

錦町のお茶の渋さを楽しむ。二時過ぎに飲むことが多いが、思い出したとき位しか飲まない。

「おとうさんって、食事時、お茶を飲まないよね。」

中学生の時、時にラジオを聞いていた。ある放送で、解説者が、

「食事時にお茶を飲むと、唾液が出なくなるんです。唾液の出を退化させないためには、食事中にお茶を飲まない方がいいのです。」

その放送を聞いてから、お茶を食事中に飲まなくなった。しばらくしてコーヒーが入ってきたので、食後にコーヒーを飲むようになった。

結婚してからも、その習慣は続いた。

結婚当初頃、妻は味噌汁を作っていた。夫は豚汁が好きだったので、味噌汁よりも「豚汁がいいなあ」と希望を述べたが、なかなか実現しない。何度か、豚汁を作ってくれたが、いつの間にか食卓から消えていた、味噌汁と一緒に。味噌汁って、発酵食品として、いい面もあるが、やはり塩分が濃い。血圧に良くないかも。勝手に判断し、味噌汁を食卓に用意することがなくなった。

1年前くらいから、妻も食後にコーヒーを飲むようになった。妻は食事中にもお茶を飲む。夫は午後早い段階で錦町の渋いお茶を頼むことがある。錦町の茶の木は妻の両親が若いとき植栽したものである。毎年、八十八夜頃になると、茶摘みに妻は嬉しそうに里帰りし、茶摘みする。