ネコが足りない一日を足しに来る夜明け
トマトは食べられることではじめてトマトになる
生きることにはりついている倫理ははがせないが
トマトを食べることで人間は人間になる
ハンバーガーに挟まれたトマトは口の中で
ギクシャクと咀嚼され少しだけ人倫の味をさせる
自分が人間であることを証明できたひとはいない
大丈夫、紐できつく結んだ約束に水漏れはないから
そういいながらもときおり人間から降りて人形になった自分の姿を押していく
それでも予告なしに洗面で蛇口の水が渓谷を思い出して暴れ出すので
カレンダーの日付は困惑して
四角い枠の中で手形、足形の水たまりを作っていく
呼吸の大切さはすぐに忘れられるが
壊れているものの関与なしに物事は成就しない
クッションの弾力の心地よさのなかにそっと隠されている差別が
帽子を持った手を大きく振って帳消しにした問題となってそのまま帰ってくる
その問題が回収される時期はぼくの地球上のいったいいつにあたるのだろうか
痛みがそのまま人類をひらいていく
純正な湯はビニール袋の中で小さな温泉になっているので
湯船にそっと浸かってみている指先
問題は人間と人形との記憶の差の中にある
ひし形を選び取れば自分が消えてしまうので
その図形の角を切ってまるい形を維持させる
孤立した時間が人工の眼球になって真っ暗な夜道を弾んでいく
ドローンをまとった人形が操縦可能な身体になって空を飛ぶ
ネコが足りない一日を足しに来る夜明け
蝶になった人間はもう人間のようには怒らなくてもよくなっている
そのことをぼくが知っているマックスヴェーバーに伝えるので
あなたはあなたの知っている本のなかのマックスヴェーバーから聞いてみてほしい
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