セパタクロー熱中時代。vol.1
フィリピン人選手のサーブが飛んでくる。トサーの佐藤翼が右足でレシーブして、もう一度、右足のインサイドを振り上げる。これまで何千何万と上げてきたトスだ。
プラスティックで編み込まれたボールがスッと上がる。
アタッカーの寺島武志が軽快なフットワークでステップバックしながら、ボールを見上げる。高く上がったボールが頂点に差し掛かり一瞬、時間が止まる。スッと落下し始めると一歩、二歩、三歩、小刻みなステップで落下点に入る。
「いけーーー!」
スタンドの応援席から激が飛ぶ。
右足で踏切ると同時に左足を振り上げて跳び上がる。左足を戻すときの反動を使って右足を振り抜くと、相手コートにボールが突き刺さった。
普段、感情をあまり表に出さない佐藤が身体を小さく折りたたみ力強く拳を握る。寺島は跪いたまま小さなガッツポーズを作った。
二人が立ち上がり抱き合う。派手なパフォーマンスはない。最低限のノルマを果たし、安堵しているようにも見えた。共に戦ってきた仲間がベンチから駆け出してくる。今度は一気に歓喜の輪が広がった。
セパタクロー日本代表が2018年、夏にインドネシアのパレンバンで開催されたアジア大会で2大会ぶりに団体種目の銅メダルを確定させた瞬間だ。
(続く)
※写真はチームダブルで銅メダルを獲得した日本代表。手前が佐藤。奥が寺島。
<SPOAL「セパタクロー熱中時代。」を一部加筆修正して転載>
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