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#14 コロナのベッドは ほんのわずかだ

「医療ひっ迫」が叫ばれている。「ベッドが足りない」と言われる。

・医療従事者はみな毎日忙しくて・・・
・寝る間もなく働いていて・・・
・年末年始もなくて・・・
・病院は野戦病院のようになっていて・・・
・コロナの対応に追われすぎて、他の疾患にも対応できなくて・・・

そんなイメージかもしれない。

でも実際は違う。

たしかに、「ICUとコロナ病床」は大変である。
それは事実だし、そうした病棟で働く皆様には、自分ももちろん敬意を表す。

しかし、病院内の他の病棟は閑散としている。
コロナの影響で、受診控えがあり、当院の外来は平時の  -10%  だ。
外来が減れば、もちろん入院も減る。手術も延期だ。

決して誤解しないでほしい。

「医療全体のひっ迫ではない」

「ひっ迫しているのは、ICUとコロナ病床だ」

ではなぜ、「ベッドが足りない」のか? それは「指定感染症」だからだ。

日本には、約160万のベッドがある。うち、急性期のベッドは約70万だ。
コロナに対応できるベッドはというと、現在約2.7万床。そう、これしかない。

いや、もともと感染症指定医療機関のベッドはもっと少なかった。約2000床だった。それが、コロナの流行に伴い、各医療機関がなんとかがんばって準備して広げてきたのがこの数だ。

インフルエンザとの比較に戻すと、1日数万人と罹患するのに、医療崩壊しない。それは、全国どの医療機関でも対応をしてくれるからだ、入院もできる。さまざまな病院の多くのベッドで受け入れることができるのだ。

しかし、コロナは使えるベッドが限られている。
(インフルエンザとは、感染症対策が違うのだから比較するな、と言われるかもしれないが、いずれも飛沫感染だ。コロナは接触感染もあるが、ノロウイルスだって接触感染である。)

指定医療機関を外し、いきなりすべての病院やベッドが対応しろというのは難しいかもしれない。
しかし、この「限定ベッド」を取り外すことで、少しずつ使えるベッドが広がっていくはずだ。
つまり各病院で、「コロナ患者さんが多いので、3階だけでなく4階の個室でも受け入れるようにしましょう」などと、少しずつ広げていけばよいのだ。

「医療がひっ迫している」と叫ぶ大元の要因は、医療者・政策者自らが「ベッドを限定してしまっている」ということをぜひ理解していただきたい。
自分で自分の首を絞めてしまっている。

これが、自分がこの災害を医療者が招いたと考える一つの理由である。