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【読書記録】十六の夢の物語:M・パヴィッチ幻想短編集

2021年287冊目。

『ハザール事典』で有名なパヴィッチの短編集です。『ハザール事典』は五十音順に並んだ事典の体裁をとった小説で、読む順番を読者に委ねた異色の作品。本作も全体を通した仕掛けがあるのかと思いましたが、こちらは訳者が短編を選んだ作品集なのでそういったものはないようです。

タイトルとしては「夢の物語」となっていますが、実際には夢のような幻想小説です。

一〇月がこんなにしょっちゅうやってくる年なんて、なかった。まだ、もうちょっと、そう思っている間に、ほらまた来た。予定より早く、もう三度め……。
「沼地」

引用は本作品中でお気に入りの「沼地」の冒頭部分です。パヴィッチの小説は時間も空間も自在に動き回り理解することが難しいところがありました。

「沼地」は要約することが難しい作品ですが、アマリヤという女性の一代記ということになるでしょうか。資産家のアマリヤは美食のため各地を旅してまわる生活を送っていましたが、晩年病を得て、それを治療する効果がある沼地を探す旅に出ることになります。

20ページちょっとの作品ですが長編として成立するような奥深さを感じました。感覚的には恒川光太郎作品に近いでしょうか。

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