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【読書記録】熊と小夜鳴鳥 冬の王1

2024年96冊目。

「冬の王」三部作の一冊目。ここ最近読んだ海外ファンタジーの中ではイチオシです。

14世紀頃のロシアが舞台。キリスト教が国教となり重要な位置を占める反面、従来の精霊信仰も色濃くのこっている地方領主の家族のお話しでした。設定だけ見ると『蛇の言葉を話した男』を彷彿とさせますが、その読み口は全然違います。

『蛇の言葉を話した男』では自身は抗いつつも静かに滅びを受け入れていましたが、本作の主人公ワーシャはキリスト教徒でありながら、従来の精霊との付き合いも維持しようと努めます。

ワーシャにとって精霊たちは目に見える自明の存在ですが、他のほとんどの人間には見えないので物語の世界の住人です。実際に精霊たちが登場する世界観の中でキリスト教の世界観を説かれても、いや実際にいるじゃんと思ってしまうのですが、ワーシャがいないと精霊たちは消えてしまうとされているので信仰によってその世界が立ち上がるのかなと思いました。キリスト教の世界観との整合性が気になりますが。

私にとっては妖精や精霊たちがいる世界観の方が馴染み深く感じます。反対に一神教の世界はイマイチよくわかりません。おそらくキリスト教の神は現世で導いてくれないからかなと思いました。神父に神が語りかけるシーンがありますがそれも熊の罠でしたし、一般的に神が語りかけたり手助けしたりする展開の小説は少ないと感じています。最終的な目的がキリスト教では異なるからかと思うのですが。

ワーシャの活躍で村は守られるわけですが、それでもキリスト教に飲み込まれていく流れは変わりませんでした。次巻以降ワーシャがどのように生きていくのか非常に気になります。

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