TCP独占インタビュー『哀愁しんでれら』渡部亮平監督インタビュー
みなさん、こんにちは!
TCP公式 note 編集員のHikaruです。今回は、初のインタビュー記事です!
映画『哀愁しんでれら』の監督であり、TCP2016グランプリ受賞者でもある渡部亮平さんに「ここでしか聞けない」哀愁しんでれらの''ウラバナシ''を語っていただきました。『哀愁しんでれら』ファンはもちろん、監督や脚本家を目指す人にとっても貴重なお話だと思いますので、ぜひご覧ください!
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◆『哀愁しんでれら』はパソコンにずっと眠っていた脚本だった
エンタメ業界に興味を持つようになったのは、いわゆる大学の就職活動あたりの時期です。「自分、この先どうするんだ?」と考えたときに、漠然と放送業界に入りたいと思って、とりあえず脚本の勉強でもやってみたらいいんじゃないかと思って、赤坂のシナリオ作家協会に通い始めたら、脚本を書く面白さにハマりました。
そこから色々書いていって、『かしこい狗は、吠えずに笑う』でフジテレビヤングシナリオ大賞に応募したんですが、落ちちゃって。自分では絶対に面白い自信があったから、映画として形にならないと評価してもらえないなと感じて自主映画として撮ったんです(注)。
『哀愁しんでれら』の脚本は、『かしこい狗は、吠えずに笑う』で権利を得たPFFスカラシップ(「PFFアワード」の受賞者を対象にした選考)のために、もともと書いていました。でもそこでも落ちちゃって(苦笑)。だから脚本としては出来上がっていて、「ずっと自分のパソコンに眠ってるんです」という話はいろんなところでしていました。そしたらあるとき、「こういう企画(TCP)があるから、挑戦してみたら?」と言われまして、確かに面白そうだな、チャンスだなと応募しました。
◆「泣ける感じにしたほうがいい」と言われたラスト
TCP2016のグランプリを取ったときはめちゃくちゃ嬉しかったです。映画を撮るチャンスって、本当になくて。プロデューサーさんも、「こういう映画を撮っている」という監督の実績があったり、原作があったりすればプレゼンしやすいですが、新人を発掘しようと思うとハードル高い。だからTCPの企画は本当に貴重だと思います。ただ2016年にグランプリを取って、2021年公開というのは、正直もっとスムーズに進むと思っていました(苦笑)。
キャスティングから撮影に入るまでには時間がかかりました。土屋太鳳さんと田中圭さん、売れっ子の二人ですので、双方のスケジュールが合う時期の調整にも苦労しました。でもこの映画にふたりが揃ってくれたことは、めちゃくちゃ有難い、とても大きなことでした。
COCOのキャスティングはすごく楽しかったです。よく「初めての演技とは思えない」と言っていただくのですが、最初から芝居ができたわけではありません(笑)。有名な子役も含めて100人くらいオーディションをしましたが、お芝居が完成していて、このままやれるなと感じるうまい子もたくさんいました。そのなかでCOCOはお芝居をやったこともないし、何も知らない感じだったのですが、佇まいと雰囲気がとにかくよくて。そこに賭けてみようと思ったんです。
僕は『かしこい狗は、吠えずに笑う』のときにもお芝居を知らない主演2人とやっていて、稽古を重ねればある程度のラインまでは持っていける手ごたえを感じていました。大事なのは、いくら練習しても教えても得られない、役にあった空気を持っているか。その空気感さえあれば、お芝居は時間をかければうまくなります。
◆どんな人生もひとつのジャンルでは括れない
脚本の直しも何度もしました。一番考えたのはラストです。審査の時点から、「このラストは変えたほうがいい」「ラストはやっぱり泣ける感じに」と言う方もいて。でもTCPから脚本のブラッシュアップアドバイザーとして紹介していただいた、脚本家の加藤正人さんに相談したら、「それ変えたら、脚本家としてダメでしょ。ラストを納得させるために、そこまでの積み重ねをもうちょっと丁寧にして、そこにいけるように頑張ったほうがいい」と言っていただいて。正直、自分のなかでどうしようかブレ始めていたんですけど、ちゃんと戻りました。
脚本に関しては、ひとつのジャンルに決めつけて作りたくないという思いがあります。ある物語、ある出来事、ひとりひとりの人生にも、いろんな面がありますよね。コメディっぽい面もあればサスペンス的な部分もある。それをひとつのジャンルにしなくてもいいと思うんです。
僕がよく好きな監督に挙げるポン・ジュノ監督は、ジャンルで括れない監督としてしばしば名前が上がります。ポン・ジュノ作品というジャンルになっている。『パラサイト 半地下の家族』のときも、ネタバレ禁止が徹底されてましたけど、『哀愁しんでれら』も、サスペンス売りになってはいますが、本当なら、ジャンルなんて考えずに観てもらえるのが一番です。
ハッピーなシンデレラストーリーになっていくんだろうなと思って観始めたら、急に色が変わっていって、「自分は何の映画を観てるんだ?」とのめり込んでいって欲しい。映画の宣伝をする際には、どうしてもジャンル設定を出さないと難しいという現実がありますが、本当は、そうやって何も知らずに観てもらいたいです。
◆TCPを目指している人へ。まずは物語をちゃんと考えてほしい
今は撮影も編集も昔よりすごく身近で簡単なものになってます。でも一度見直してほしいなと思うのは、ちゃんと物語を考えること。
脚本をブラッシュアップして面白くする作業は、一番お金をかけずにできる作業。せっかく人を集めて、お金をかけて、しんどい思いをして作るのだから、もうちょっと脚本を詰めればもっと面白くなるのになと、自主映画を見るときなんかに思います。奇抜なショットとか奇麗な映像とかも、物語があってこそ、ですからね。
あとはこれから挑戦する人には、せっかく大金をかけて映画を作れるチャンスなんだから、もっと自由に物語や表現を考えて欲しいです。今、原作ものにみんなが飽きてきているので、オリジナル企画として面白いものがあれば、すごく強い時代だと思うんです。チャンスは近くにある気がします。
◆オリジナル企画は、何年後かに急に実現する可能性がある
『かしこい狗は、吠えずに笑う』で友情ものをやって、『哀愁しんでれら』で家族の物語をやったので、次は“兄弟もの”というのは言っていて、実際にプロットも書いて、ある企画に出したんです。「どんなものでもいいですよ」と言われていたのですけど、結果としては、やっぱりなんでもいいわけじゃありませんでした(苦笑)。
でも『かしこい狗は、吠えずに笑う』はフジテレビヤングシナリオ大賞で落ちて、『哀愁しんでれら』もPFFスカラシップで落ちたので、これも次どこかで成立するかなって。オリジナル企画は、いまここでダメでも何年後かに急に実現する可能性がある。自分の企画なので。いまだというタイミングで意外と形になったりするから、どんどんオリジナル企画を、新人と言われるうちに貯めておくことは大事なんじゃないかと思います。
Twitterユーザーからの質問
・土屋太鳳さん、田中圭さんとは初めてのお仕事だったとか。おふたりの印象を教えてください。
すごくお芝居が上手なふたりで本当に助かりました。「そこは、こういうニュアンスなんです」とひと言伝えるだけで、いくらでも変えてくれました。タイトなスケジュールだったので、本当に助かりましたね。
土屋さんは以前からInstagramなんかも見ていたのですが、何事にも集中していて、いつも真面目で全力投球で、すごいなと思っていました。小春は、一生懸命頑張っているからこそ、結果外れていくヒロインなので、土屋さんは本当にぴったりはまったなと。実際にお会いした感想は、やっぱり本当に真面目で一生懸命なんですが、思った以上にふわふわしていて、不思議な、掴めない感じのある人だなと思いました。そこがすごく面白かったです。
田中さんはムードメーカーで、そこにいてくれるだけですごく安心感がありました。すごく売れていて、めちゃくちゃ忙しかったので、裏ではしんどそうにするときもあるかなと思っていたんです。子どものCOCOがいるので、疲れた感じでコミュニケーションが取れなかったりしたらどうしようかなと、少し心配もあったのですが、そうしたことは全然なくて。現場ではずっとみんなに対してフランクだったし、COCOともすごく積極的に遊んでくれました。
・土屋太鳳さん、田中圭さんとまた組むなら、どんな作品を作りたいですか?
どこかのインタビューで、土屋さんが「時代劇をやりたい」と言っていて。それはすごく面白いと感じました。土屋さんは絶対着物が似合うと思うし。時代劇の脚本は書いたことがないですけど、結局は人と人の話を書けばいいので、土屋さんと田中さんの時代劇なんて、すごくいいなと。コメディがいいですね。今度は楽しい夫婦を演じてもらって、明るく楽しい時代劇コメディがいいなと思います。
(文・撮影 望月ふみ)
最後に一言
いかがでしたでしょうか?渡部監督が『哀愁しんでれら』に込めた思いのみならず、物づくり全体に対する熱い姿勢が言葉の節々から伝わってくるインタビューでした。他にも韓国に留学に行かれたお話や、大学卒業後~脚本家として生計を立てていくまで等詳しいお話もされていて、個人的に質問してみたいことも多くありました(笑) 渡部監督について、もっと知りたいという方は併せてこちらもご覧くださいね ♪
■TSUTAYA先行レンタル・TSUTAYA TV配信日
□先行レンタル開始日:2021年7月2日(金)
□TSUTAYA TV配信日:2021年7月2日(金)
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■映画『哀愁しんでれら』公式ページ
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