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「型にはまらない映画祭を」MOOSIC LAB_直井 卓俊さん、保坂 暁さん

クリエイターを応援する業界の取り組みをピックアップし、代表者の方にその「想い」をインタビューしていきます!

(2021年2月19日 (金) 10:00 配信済)

映画界とクリエイターを繋ぐ『映画祭』
その主催者の方にインタビューを行い、主催する自身の映画祭の特徴や今後の展望を伺います。

今回は、2012年からスタートした映画監督とアーティストがコラボして映画制作をする音楽×映画の祭典「MOOSIC LAB」。コンペティション参加監督と共に共同主催者の1人であるスポッテッドプロダクションズの直井さん、そして、協賛企業としてサポートするAOI Pro.の保坂さんにお話しを伺いました。

【サシカエ用直井さん】

直井 卓俊氏
株式会社スポッテッドプロダクションズ 
代表取締役
企画・配給プロデューサー

プロフィール_保坂さん

保坂 暁氏
株式会社AOI Pro.  執行役員
制作第1部〜3部、エンタテインメントコンテンツプロデュース部 管掌

「MOOSIC LAB」

2012年にスタートしたインディーズ映画の祭典。音楽×映画をテーマとして、これまでに多くの若手映画監督、若手俳優、アーティストを輩出。新型コロナウイルス感染拡大の影響により2021年の開催は延期未定となっていたが、参加監督らが「MLJ実行委員会」として共同企画・主催するという新体制で”MOOSIC LAB[JOINT]2020-2021”と名称新たに再始動する。

”MOOSIC LAB[JOINT]2020-2021”
2021年2月27日からK’s cinemaほかで順次開催が決定。

型にはまらない映画祭を

「MOOSIC LAB」開催のきっかけを教えてください。

—直井さん
最初の開催は2012年です。
当時は、映画祭やコンペが世の中にあまりなく、インディ―ズで活躍されていた方々はそれぞれのコミュニティを中心に活動している状況でした。また、2012年は東日本大震災が発生した翌年で、世の中全体に自粛ムードがあり、映画業界もその例外ではありませんでした。インディーズを含めた映画活動が止まってしまうかもしれないというムードのときに、それぞれの団体などで活動されているインディーズの方々と一緒に映画で何か面白い事をやりたいと思ったことが開催のきっかけです。

「映画」と「音楽」の掛け合わせが特徴の映画祭ですが、「音楽」を取り入れた理由は?

—直井さん
映画祭を開催するなら映画という型にはあまりこだわらず、むしろ刺激になるような、怒られるくらいのものをやろう、と(笑)

元々、私がインディーズ映画の配給をしており、音楽と関わる事が多く、映画における音楽の力を知りました。そこで、音楽と映画がコラボすることで、よりビビットなものや斬新なものができるのでは、という思いと、映画ファン以外の方々も気軽に映画館に足を運びたくなるようなものにしたいという思いで、音楽の掛け合わせを取り入れました。

実際にこのスキームでの映画作りをしてみると、観客の評判も良く、監督やアーティストの才能や技量を超えたところに作品が到達する感覚も覚えました。

2017年からは、一般公募も始めました。その狙いは?

—直井さん
それ以前は、私が他の映画祭などで出会ったMOOSIC LABに向いていそうな方へお声かけしたり、前年に上映した作品のスタッフが参加したりと、既に私と関係がある方々の中で企画が集まっていました。

こういった信頼のできる方々と映画作りをしていくことも大切ではありますが、一方で、ある程度回数を重ねていくと、このスキームでの映画作りのノウハウもたまり、どんな企画やクリエイターの方々とでもある程度、映画作りが成立する感覚も掴んできましたので、私の知らない、想像できない発想や才能と出会うために公募を始めました。

「作り手」だけでなく「売り手」の視点も

参加監督らが「MLJ実行委員会」として共同企画・主催するという新体制「MOOSIC LAB[JOINT]2020-2021」について

参加監督らは具体的にどのような形で映画祭に関わるのでしょうか?

—直井さん
今回からは自分たちの作品を作るだけでなく、自作上映時のイベントの運営なども分担してやってもらおうと思っています。MOOSIC LABは出来上がった映像作品のコンペでななく、その企画からスタートするコンペです。最近は映画祭としての認知があがってきた一方で、作品自体が予算の側面からも本格的なものになってきました。その中で、できる限り作品に資金を還元できる体制を構築する必要性を感じていました。

その一環で、参加いただく監督たちには宣伝の体験を通して、作り手としての視点だけでなく、宣伝や配給の仕組みなど、売り手としての視点も学んでいただき、作品作りに活かしていただければと思っております。

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今年から協賛企業としてAOI Pro.さんが参加しました。参加の狙いを教えてください。

—保坂さん
我々AOI Pro.はカンヌでパルムドールを受賞した『万引き家族』をはじめ、多くのメジャー映画やドラマに関わっておりますが、『万引き家族』を例に挙げると、是枝監督とは20年程前にCMのお仕事をご一緒し、そこから関係性が生まれたと聞いています。

弊社として、カンヌ等の「次の作品」と関わるためにも、数年後、十数年後を見据えてこれからのクリエイターやインディーズ界隈の方々とも関係性を築いていく必要性を感じています。

そこで、こういった方々や面白い企画と、弊社プロデューサー陣との接点の場になればと思い、参加を決めました。

また、MOOSIC LABが音楽という独自の切り口を持っていることや、監督だけでなく映画企画も集まる場ということを魅力に感じ、そして、参加監督たちからは「誰にも頼らずやってみるぞ」というチャレンジングな熱量も感じており、そういった方々を応援していきたいと思っています。

よりコンペ作品に還元できるような体制づくり

今後の展望について

—直井さん
この映画祭自体を続けていくことが重要なので、前述のように、よりコンペ作品に還元できるような体制づくりを目指していきます。

具体的には、より多くの作品を世の中に出すというよりも、もう少し数を絞って、例えば、コンペ形式の映画祭ではなく、出資や協賛を募り、企画・制作プロジェクトとして作品を作っていくことも検討中です。また、今年のコンペ作品は持ち込み企画がほとんどでしたが、今後体制が整えば公募の復活もあり得ると思います。

—保坂さん
MOOSIC LABとは単なる協賛では終わりたくないと思っています。イベントとして、一緒にやっていく立て付けも検討していきたいです。コンペ作品の制作体制に関わることもあると思いますが、それありきではなく、企画の発掘、クリエイターとの関係づくりを第一に、よい取り組みを続けていけたらと思います。

TCPへのコメント

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—保坂さん
映像の分野にいるクリエイターの方の中には自分の力で映画を作る環境がある方もいると思います。
例えば、そうでない方にチャンスを与えるという意味で、映像従事者以外で競う枠なんかがあっても面白いと思います。

—直井さん
企画が通れば大規模な予算が下りる夢のようなプロジェクトですが、実力や経験値なしで挑むには不安はあると思います。しかし、そういうことを取っ払ってしまえるような面白い企画や座組みがあったりもしますので、部門や予算も作品に合わせてフレキシブルに設定できたら実現できる作品も多くなるのかなと想像したりしました。

※「MOOSIC LAB[JOINT]2020-2021」について

―――上映スケジュール―――
★2.27(土)-3.12(金)
18:30-K’s cinema ※緊急事態宣言延期に伴い30分繰り上げになります。

★3.13(土)-4.1(木)
18:00-UPLINK吉祥寺

★4.3(土)-4.16(金)
19:00-K’s cinema

―――上映作品―――
■COMPETITION
「光の輪郭と踊るダンス」(岡本昌也×バカがミタカッタ世界)
「さつきのマドリ」(葛里華×noto)
「POP!」(小村昌士×Aru-2)
「絶滅動物(VACATION)」(副島正紀×大谷能生・荘子it(Dos Monos)ほか)
「僕たちは変わらない朝を迎える」(戸田彬弘×雨のパレード)
「泣いたことがないなんて、嘘つきめ」(富田未来×今川宇宙の夢日記)
「アポトーシス」(橋本根大×珠 鈴)
「彼女来来」(山西竜矢×rei miyamoto(Vampillia))

■MOOSIC EYE(特別招待作品)
「the believers」(監督:平波亘)
「れいこいるか」(監督:いまおかしんじ)
「愛しのダディー殺害計画」(監督:イリエナナコ)
「湯沸かしサナ子、29歳。」 (監督:東かほり)
「ワールズエンドファンクラブLP」(監督:平波亘)
「花と沼」(監督:城定秀夫)
「DISTORTION GIRL」(監督:田村啓介)
+シークレット作品ほか追加作品予定

詳細は「MOOSIC LAB[JOINT]2020-2021」公式サイトまで