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【File.No 4】映画と私 / 代官山 蔦屋書店吉川さん

こんにちは。TCP note 編集員のHikaruです!

TCP運営のモットーである「映画好きに身近なコンペの実現」に際して、グループの中で最も「お客様と近い存在」にあるTSUTAYA店舗の方々にインタビュー!(取材日:2021年10月中旬)

第四弾は、代官山 蔦屋書店の吉川さんです!
それでは吉川さんお願いします。

映像業界40年のキャリア

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代官山 蔦屋書店シネマコンシェルジュの吉川明利です。代官山 蔦屋書店がもうすぐ10周年を迎えますけれども、私はそのオープンから10ヶ月遅れで入りました。

25歳から12年半ほどレンタルビデオ店にて勤務、37歳からタワーレコードにて17年勤務しまして、現在に至ります。VHS、ベータマックス、レーザーディスク、DVD、ブルーレイ等々パッケージ変遷と共に歩んできた映像一筋の人生です。

遍歴における蔦屋との密接な関わり

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偶然なのですが、25歳のレンタルビデオ店に勤務していた時、草冠に鳥の「蔦屋」と領収書に書いたのを覚えています。あんまり見ない字だなぁと当時は思いました。あの方がどなただったか覚えていませんが、今思っても印象深いエピソードです。

その後「音楽好きな方は多いんだけれど、映画を売れる人が少ない」とお聞きして、タワーレコードに37歳で入社したのですが、当たり前ですが数年後SHIBUYA TSUTAYAが競合になるわけです(笑)

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当時は、37歳なのに社長・副社長の次に私の年齢が高かった。そんだけ若い人ばっかりだったんです。だから「あなたより若いけれど私が店長で大丈夫ですか」と言われたのですが「大丈夫ですよ。」とね。DVD前夜でVHSとレーザーディスクを、しこたま並べてしこたま仕入れて、店開きをしました。最初は売れなくて困ったけれど、半年ぐらい経ってからかなぁ。幸いにしてちょうど『スターウォーズ』の3本パックが発売されてヒットした。これで何とかここにいられるなぁと思った矢先に、DVDの時代が到来します。

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その後、商品本部で仕入れ担当に移ったのですが、数字に追われたことや、廉価版がどんどん台頭してきたこともあって、少しこの業界から離れようかなと思っていた矢先、代官山蔦屋書店がオープンしました。すると、みんなが言うんですね。「吉川は代官山にいた方が良い」なんて。それで入社を決めました。

映画は見るもの・読むもの・書くもの

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私にとって映画は「見るもの」であり、「読むもの」であり、「書くもの」なんです。実はかつて執筆活動もしていました。きっかけは、レンタルビデオ店で働いていた時、たまたまお話をしていた方とすっかり意気投合して、よく聞くとその方が当時のキネマ旬報の副編集長の方で。「吉川くん書いてみないか」なんて言うもんだから「ぜひやります」と。

その後『誰も語らなかったビデオLD残酷物語』っていうのを2年くらい連載執筆。一旦それが終了して、『2001年ソフトの旅』というタイトルで、今度は3年ほど連載しました。なんで、アーカイブを見ていただくと私の記事が載っています!

私の価値観を変えた映画

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「あなたのおすすめ映画はなんですか?」って聞かれるのが1番困るんだけれど、ジャンルとしては「ミュージカル」が好きですね。と言うと「劇団四季が好きなんですか?」って言われるんだけど「違う違う」。1940年代に最盛期を迎えたシネ・ミュージカル。アメリカへの憧れがもっとも詰まった作品である当時のミュージカルが好きなんです。

ジーン・ケリー / ジュディ・ガーランドのように「役者の芸」に焦点が当たっていたのが当時の時代。それが『ウエスト・サイド物語』辺りから「物語」に焦点が当たるようになる。差別とか偏見とか、ある種の社会性を問う作品へとミュージカルが変遷を迎えたんです。

役者も「吹き替えで良いか」なんて風潮になってしまった。それまでの感情が最高潮まで昂った時に踊り歌う様子が見られなくなってしまった。「ミュージカルって現実では起こり得ないよね」なんて良く聞くけれど、ボーイミーツガール・ラブアフェア・ハッピーエンドという「日常では起こり得ない」のが「ミュージカル」の本質なのだと私は思います。

そんな中でも、MGMという有名なミュージカル制作会社50周年記念のアンソロジー作品『ザッツ・エンタテインメント(1974)』が価値観を変えてくれた映画と言えます。様々な作品の場面を一挙に集めて一つの作品が出来ているんだけど、先程述べたアメリカンミュージカルの変遷も見ることができるという点も素晴らしい。時代の移り変わりを象徴するような作品ですね。もう一つ「価値観を変えた映画」をあげるとすれば『ザッツ・エンタテインメント』でも一部使われた『オズの魔法使』をあげるくらいですもの。

代官山 蔦屋書店での思い出施策

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*コンシェルジュレコメンド棚(2021年10月現在時点)

コロナ前はずっと代官山シネマトークというリアルイベントをやっていました。『ローマの休日』『ゴットファーザー』等々私がお話をするリアルイベントを開いていたのですが『ラ・ラ・ランド』をやったときに面白いことが起きた。人が想像以上に参加してくださって、新作で若者向けってのもアリだなと思った瞬間です。

後は「コンシェルジュレコメンド」の棚かな。情報は溢れているんだけれど、今ってびっくりするくらいお客様に映画を選ぶ物差しがないのよね。面白い作品を観たいんだけれど、同時に失敗はしたくない。そんな中で「ヨーロッパの美男美女の映画はこれ」「アカデミー賞の映画はこれ」「実話から映画化かれたものはこれ」みたいに選定したらば、それのウケが良かった。純粋に自分のおすすめ作品を見ていただけるのは嬉しい限りです。

今後の挑戦と現在の回顧

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今後トライしてみたいことは「俺にしかできないイベント」をやりたいです。嬉しいことにイベントの時、通常のMCさんでは聞けない情報を聞いてくれたというフィードバックがありまして。お客様の前で、自分にしか聞けない話をゲストから引き出して、お客様のキラキラした顔をもう一度みたいです。

私は、18歳くらいの時に「映画を作る」っていうところからは挫折したんですよね。「誰かに薦めるというより、教えたい」というのは常々思っていて、作っている人へのリスペクトは常に持っています。その一環で、業務としては「代官山シネマラジオ」を月に2回行っています。

あとプライベートでも「映画オヤジ語るシネマ」というのを、タワーレコードで働いていた時の知り合いからの誘いで続けています。「吉川さん!折角なんでアーカイブにのこさなくっちゃ」なんてね。

私のおすすめTCP作品はこれ

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TCP作品はほとんど全部拝見しました。やっぱり「質が良いなぁ」と思って、毎回気になっています。私が1番好きだなぁと思ったのは『ルームロンダリング』ですね。暗くて内気な女の子が前を向かって一歩踏み出す姿が印象的。私は主人公が「最後のラストシーンの向こう側でどんな風に変わったんだろう」と想像できる、想像したくなる作品に惹かれるんです。

もう一つは、最近公開した『先生、私の隣に座っていただけませんか?』かなぁ。黒木華さんが非常に役柄とマッチしていて「最初から黒木さんに決めていたのですか?」と監督にもお伺いしたいくらいです。

代官山 蔦屋書店とは

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▶︎note編集員のおすすめポイント
今回取材を受けてくださった吉川さんのみならず、代官山 蔦屋書店の方々は特に様々なジャンルに見識の深い方ばかり。周りには大使館やオシャレランチスポットも数多く点在し、特にクリエイターの集まる場所となっています。