食品ロス革命 未来の食を守るディープテック「エコラップ」 大倉工業㈱
「食品の劣化を防ぐ」「美しい見栄え」「限りなく薄いフィルム」―
大倉工業の食品トレイ用フィルム「エコラップBSS―V2」(以下、エコラップ)は、いま最も注目される、革新的な食品ロスのディープテック(最先端の研究成果)だ。
この3年で大手スーパーやコンビニへと市場が急速に拡大している。
国内で600万トンを超え、世界では13億トンにものぼる食品ロス。
国連世界食糧計画によると、飢餓に苦しむ世界中の人々に向けた食料支援の1.6倍もの食料を、国内だけで捨てているという。
このままでは、行き着く先は世界的な食糧危機である。
そんな未来を変えるべく研究を続けているのが、真摯なモノづくりを体現してきた大倉工業。
エコラップを利用すると、精肉は2日程度、加工食品は7日程度も賞味期限を延ばすことに成功。消費者の要求にすべて応えるべくプロダクトを進化させ、食のサステナビリティを次なるステージへと押し上げている。
食品ロスと戦う、同社研究者のインタビューをお届けする。
今までより、商品が数十倍売れた
エコラップのベースになる技術自体は、以前からありました。
1995年、スライスハムの包装を担当したことが、今のエコラップに着眼するきっかけとなりました。
当時の包装は、真空パックなどの袋詰でしたが、新たに食品トレイのパック包装を提案。包装が変わったことで、少し離れた売り場にあったハムを、精肉のすぐ隣へ移動してもらえました。
すると、「今までのハムより数十倍売れた! 陳列する場所によって、消費者の購買意欲が全然違う」と大きな反響が。
このフィルムの機能をさらに発展させられないだろうか?と考え、開発を進めてまいりました。
オンリーワンの技術力
食品をトレイでパック詰めする際に、混合ガスを注入しながらエコラップで包むと、賞味期限を延ばすことが可能です。
通常の食品トレイのフィルムは、1日に数リットルものガスを通しています。これでは保存期間を延ばすガスを入れても、たった数時間で元の状態にもどってしまい、鮮度保持ができません。一方でエコラップは、ガスの透過を防ぐ特殊フィルムで覆っていますので、パックした時の状態をできるだけ長くキープできるのです。
一枚の薄いフィルムですが、実際は何層もの樹脂をミクロン単位で重ね合せています。樹脂の層をバランスよく重ね合わせ、なおかつ薄くするためには、相当高度な独自の技術が必要です。私たちの技術は”オンリーワン”だと自負しています。
急速にシェアが拡大
県内も含めて、全国的に製品の採用がグッと増えたのが、ここ3年ほど。
理由の一つは、3年前に製品の最終形態が完成したことです。エコラップには多くの要求課題がありましたが、今回すべての要求を高い水準で満たすことができました。今では精肉や鮮魚、惣菜など幅広い食品への利用に成功。以降もマイナーチェンジを重ねています。
もう一つの理由は、エコラップは当社が先駆けであること。追随する製品は他にないと思います。おかげさまで、シェア率も非常に高いです。
未来に向けて
「環境対応型のエコラップ」に取り組んでいます。当社全体としても、環境に優しい樹脂を使ったり、プラスチックの材料自体の使用量を減らす企業努力を重ねているところです。
食品ロス以外にも、海洋プラスチック問題といった社会課題に貢献することを目標に、様々な商品開発を大倉のワンチームで進めています。
2020年8月に発行した「かがわ経済レポート」インタビュー記事より抜粋して掲載しています。
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