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ドローン物流の未来図 「離島の生活に革命を」 ㈱かもめや


100年に一度の「モビリティ革命」の時代を迎えている。

日本政府は「空飛ぶクルマの実用化を2023年に目指す」とロードマップを示し、実用化に向けた動きが加速。
香川県内でも、離島における物流の課題を空から解消しようと、革新的な取り組みが続けられている。

日本初となる、陸・海・空の無人ドローンを組み合わせた「ハイブリッド型の無人物流プラットフォーム」を構築するかもめや。香川の離島に無人ドローンで医薬品を届け、ドローンの通信インフラも含めたワンストップサービスを提供している。

日常的なドローン物流の利用はもとより、災害時の活用も視野に入れた安全なドローン社会の実現に向けて事業を前進させている。目指すは「24時間365日、いつでもどこでも人やモノが自由に行き交う日常」。

空の移動革命は、どんな未来を描き出していくのだろうか。ドローン物流システムのパイオニアとして知られる小野正人代表に、ドローン物流の現在地と、未来図について話を訊いた。

㈱かもめや 代表 小野 正人(おの まさと)氏
1977年、香川県三豊市生まれ。インターネットプロバイダ、携帯電話の通信事業者を経て、個人事業主に。2015年、日本初の無人ドローンによる離島への長距離(8km)物流実験に成功。2017年、無人物流プラットフォームの開発を目的にかもめやを設立・法人化。
このインタビューは、かがわ経済レポート2021年2月25日号のトップインタビューより一部抜粋・再編集してご紹介しています。

創業の背景

私たちは、瀬戸内海をはじめ、日本の離島間をドローンでつなぐ「物流プラットフォームサービス」の開発を進めているベンチャー企業です。
創業のきっかけは「島の暮らしを持続可能なものにしたい」という想いです。離島や山間部などのへき地に住まわれている方は、物流や医療の問題に直面しています。
私自身、素晴らしい環境と人に恵まれた島暮らしを楽しむ一方、不便さも実感しました。島と本土を結ぶ定期船は減少傾向にあり、このまま行けば、島が存続できなくなる日がもうすぐ訪れるだろうと危機感を抱きました。こうした問題意識から、2014年よりプロジェクトを展開しました。
目指すは24時間365日、 いつでも荷物が届く、離島の新しい日常です。

ドローン物流の展開

3つのドローンを組み合わせた物流システムを開発しています。

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① 日本初の離島間を結ぶ、次世代型の空飛ぶかもめの航空運輸システム「KamomeAir(カモメエアー)」

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② どんぶらこと海を渡る未来の桃をイメージした海上輸送システム「Donbura.co(ドンブラコ)」

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③ オンバ型の地上輸送システム「Smart.ONBA(スマートオンバ)」

これらを状況に応じて組み合わせ、陸・海・空ハイブリット型の物流を目指しています。
本土と離島は空や海を渡るドローンを使い、離島の港から配達先までは地上走行するドローンでつなぎます。空を飛ぶドローンに比べて、陸・海用ドローンは積載量も多く、物流コストも安く抑えられます。
400以上の有人離島を持つ、日本ならではの物流システムを展開するべく、取り組みを続けています。将来的に過密な都市部への展開が可能です。

ドローン物流の実用化に向けた課題は?

創業の5年ほど前から「離島へ医薬品を運ぼう」という構想自体はありました。ただ、この時期はまだ薬事法や航空法などが整っておらず、ドローンの機体もそこまで信頼性が高くなかったのです。
日本では首相官邸のドローン事故の後に航空法が改正。その中には「人口密集地での運用は原則禁止」「障害物からドローンの機体を半径30m離す」という大原則などがあります。そのため、今は自宅の庭などにドローンを降ろすことはできません。

新たな通信インフラを検証

ドローンの通信用のインフラは、一般的に携帯電話のネットワークが利用されていますが、離島やへき地においてはコスト・時間・電波品質など、それなりにハードルが高いのが現状です。これらを解決するため、ドローン専用の通信インフラを独自に開発しました。

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無人移動体運用包括支援システム「OceanMesh(オーシャンメッシュ)」と、その機能をコンパクトに搭載した、オフグリッド仕様の移動式臨時管制センター「MobileOMC(モバイルオーエムシー)」です。気象データをはじめとするさまざまな運行状況データを、リアルタイムで監視できるシステムです。これにより、ドローン目視外運用に必要となる仕組みをワンストップで提供できるようになりました。

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2020年7月「香川県三豊市粟島スマートアイランド推進プロジェクト」に向けた事前検証に参加。粟島での遠隔診療・無人ドローン配送の実証実験を行ったのですが、その際に「MobileOMC」を現地で運用しました。無人ドローン技術による医薬品などの輸送実証と、自然災害時の情報提供も視野に入れた、離島に適した通信インフラの検証です。
日常的な利用はもとより、災害時の活用も視野に入れた安全なドローン社会の実現を目指します。

コンビニ並のインパクト

当社の空を飛ぶドローンですと、条件により、片道あたり数千円~数万円かかります。当社はドローンを1~2機という単位で調達するため、1機あたり数百万とコストが割高に。例えば、10機をオーダーして同条件での運用体制が整った場合、片道輸送コストは千円を切るでしょう。

ドローン物流が現実的な費用感で運用できれば、島にコンビニができたのと変わらないインパクトがあると思っています。モノを積んで飛ばすというタイムラグはありますが、いつでも自宅にコンビニ商品が届くのですから。

「空飛ぶクルマ」の実用化をどう見ていますか?

「パッセンジャードローン」(以下、PD)という言葉を聞いたことありますか?

「空飛ぶクルマ」とも呼ばれ、自動で飛行し、人間を輸送するドローンのことです。電動式でパイロットもおらず、そもそも操縦桿がありません。
私は10年以内にこのPDの時代が訪れるようになると考えています。世界に目を向けると、PDは既にシンガポールやドバイで有人テストが始まっています。「これなら私も乗りたい」と思える、安全性の高い機体が、続々と開発されているのです。

日本国内でも、PDの実用化に向けて準備中です。昨年、無人状態でのPDテスト飛行が行われました。これに乗って離島や山間部など行きにくい場所へ飛べるようになります。

離島や山間部、交通の不便な郊外に住んでいても、いつでもモノが届き、人も行き来できる―
そんな日常を目指して、インフラや仕組みを、私どもが先に整えていこうと試みています。

かもめやの将来構想

特にコストのかかる機体や通信インフラに関しては、同じエリアで事業を展開する事業者間でシェアリングすることで、大幅なコストダウンが可能になります。

まさに、物流向け「DaaS」(drone as a service)の幕開けです。

コアとなるシステムはすでに稼働しており、日本はもとより世界中どこの国でも利用が可能です。
また、海外で展開することも視野に入れています。多くの島々からなる地形条件が日本と共通しているインドネシアやフィリピンで事前調査を行っている段階です。各国の地域課題の解決に役立てることができたらと思っています。


私たちはこれらの仕組みを使って、離島の物流に革命を起こしたいと考えています。


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