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#沖縄妄想滞在記 「恋する小浜島(中編)」

■3日目(午後)■

遠くからセミの鳴き声が聞こえる。

いつから俺は、社畜になり下がったのだろう。いや、契約社員だから契約社畜か?セミのほうがまだ自由だ。

結局、2人の美女との小浜島観光ツアーを泣く泣くキャンセルした俺。
代わりに東京から飛んでくる様々なエラーリストの解読ツアーに参加。チーフからスラックで「おつかれさん」とメッセージが来て、作業が終了した頃には、時計は23時を過ぎていた。

今日もまた、部屋で1日が終わってしまったのだ。
ただの1日ではない、貴重な島の1日がだ!!
泣心の中で叫んだりむせび泣いたりしていると、
「コンコン」とドアをノックする音。

「はい?」慌てて散乱した服と、缶ビールの空き缶を隠す俺。

そっと木製のドアを開けると、みさきちゃんが立っていた。
「夜分遅くスミマセン、明かりが見えたので」と申し訳なさそうに言う。
「いえいえ、こちらこそ朝はスイマセン!島めぐり行きたかったー!」
と、思わず本音が漏れてしまった。

すると、彼女からこの世で一番素敵と思われる提案が飛び出した。

「あの、もしよかったら、星を見に行きませんか?」

■4日目■

砂浜は星の明かりでぼんやりと白く光っていた。
空には降るほどの星。俺は、みさきちゃんと、ゆりなさんと並んで仰向けに寝そべっている。宇宙に浮かんでいるような錯覚に襲われるほどの大パノラマだ。

危ね~、この星空を見逃すところだった。東京の暮らしに慣れ、夜には星空があることすら忘れてしまっていたのだ。

「いや~二人ともラッキーですよ、今日は良く見えます!」と笑顔のみさきちゃんが、ガイドの本領を発揮して天体の解説をはじめた。

世界で星座として認められているものは88種類存在しており、小浜島ではなんとそのうち84種もの星座を見ることが出来るという。国内で最も赤道に近いエリアが、小浜島を含む八重山諸島だからだそうだ。

一通りの解説が終わると、みさきちゃんはクーラーボックスから飲み物を取り出してくれた。
そして、星空の下、波の音を聞きながら3人でいろいろな話をした。

ゆりなさんは、東京の番組制作会社を最近やめたそうだ。最後の旅番組のロケで訪れた小浜島の民宿で、みさきちゃんに出会ったのだという。どうやら、俺が見たのはその番組だったらしい。すごい偶然だね!というゆりなさん。ある意味、番組おかげで二人に出会えたのだから、奇跡だ。

みさきちゃんは、母親と二人で営んでいる民宿をコロナが直撃。落ち込んだ経営をなんとか立て直したいと、新しいメニューや島めぐりツアーの開発などを頑張り始めたところだった。だからこそ、サイトのリニューアルを心から喜んでくれたのだ。

やばい、2人ともすごい頑張り屋じゃないか。さて、俺は、俺は話せることが何もなかった。ただひとつ、初めてコロナで良いことがあったというようなことを話した。無数の星のようにバラバラだった三人が、星座の線のようにつながったんだと。今思うと少々キザだが、二人とも「そうだね!」と言ってくれたのが嬉しかった。

その日は、明け方近くまで星空を眺めて過ごした。
人生でベスト3に入る最高の夜だった。


つづく

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