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ヤンキーが僕に教えてくれたこと#1

僕の人生に大きな影響を与えた出来事の1つとして、中学でのヤンキーとの出会いがある。
小学校時代、僕は学校が大好きだった。第二の親のような素晴らしい先生のもとで、かけがえのない思い出がたくさんできた。
「卒業するのが嫌だ!」
卒業アルバムに記したその文字が全てを物語っている。
とはいえ、新しい環境での新しい生活。中学校に向けてワクワクした気持ちも確かにあった。

僕の行く中学校は、僕の通っていた小学校と、もう1つ別の小学校の児童が通うことになる地元の中学校だった。僕の方の小学校はまさに「平和」そのもの。小さな揉め事やトラブルはあっても、小学生レベルのかわいいものばかりで、激しい喧嘩もほとんどない。暴力沙汰なんてもってのほかだった。一方、合併する方の小学校はというと、悪い噂しか聞かないほど「荒れている」と評判だった。

そして迎えた登校初日。クラスメイトの中にとんでもないインパクトのあるやつがいた。まず髪は金髪がかった茶髪。中1にして歯はタバコのヤニで黄ばみ、おまけに前歯が一本ない。どうやら喧嘩で折れたらしい。それにしても悪そうな顔をしてやがる。これが噂に聞いていたヤンキーか。
「なんで!?なんで歯がないの!?」
と内心ビビリ散らかしてはいたが、こんな奴らがいても絶対にブレない、絶対に屈しないと心に決めていた。

初日に出会った歯抜けヤンキーを合わせ、学年には8人ほどヤンキーがいた。5クラス編成だったから毎年1クラスに最低でも1人か2人はヤンキーがいた。なんだ少ないなと思われるかもしれないが、当時のヤンキー共の暴虐さたるや。一度目をつけられようものなら最期。廊下ですれ違うたびに「スパーリングだ」と殴られ蹴られ、いじりと称したいじめのような行為が繰り返される。ヘコヘコと媚びへつらい、服従して生き延びる者。ヤンキーのグループに毒され、不良になる者。色んな生き方があった。そんな中、僕は絶対に流されないと決めていた。
うちのヤンキーたちは意外にも実力主義なところがあった。幸い、当時の僕は成績優秀だった。鼻につくようなやつだったらダメだったかもしれないが、人間付き合いは苦手ではなかったため、徐々にヤンキーたちと関われるようになっていった。認められてしまえばこちらの勝ちだ。このままいけばうまくやっていける。そう思い中学にも慣れてきていたある日、ある事件に巻き込まれる。

ある日、サッカー部のAにサッカー部所属ヤンキーBの話を聞いた。AはなぜかよくわからないがBを慕っていた。特にかっこよくもないのに「イケメン。イケメン。」とおだてていた。服従することで生き抜くタイプのようだ。

A「Bさ、C子と付き合ってるねんで。」
僕「へぇ〜、そなんや!」

その話自体にはあまり興味はなかったが、C子というのは同じ小学校出身のかわいい女の子だったので意外だなぁというちょっとした衝撃はあった。
Aが普通に僕に教えてくれので、別にみんな知っているようなことなんだろうと思い、その日の部活で同じ陸上部のDに僕はそのことを話した。Dも僕と全く同じような反応だったような気がする。しかし、気軽に話したそのことが最大のミスだった。

その翌日のことだ。Bが僕のクラスに僕を呼び出しにきた。

B「ちょっとこっち来て。」

呑気についていった先の廊下でいきなり胸ぐらを掴まれた。

B「お前、俺とC子のこと広めてるらしいな。」

「いやいや、誤解やで。Aがめっちゃ普通に教えてくれたからそれをDに言ったんやけど、秘密やったん?それやったらホンマにごめん。D以外には話してないし、これから絶対言わんようにするわ。ホンマにごめん。」

なんて答える時間は与えられなかった。顔こそ殴られなかったものの、いきなり身体を殴りつけられ、しゃがみこむ僕に追い打ちの数発。正直、痛かったかどうかなんて覚えていないが、暴力を見たこともなかった僕に恐怖を植え込むには十分だった。
「調子のんなよ。覚えとけよ。」
Bはそんな言葉を吐き捨てて、その場を去った。

それから数日、休み時間に同じ場所に呼び出され、同じように気が済むまで殴られた。今思えばあんな奴は大したことない小物野郎だ。しかし、当時の僕には怖くて怖くて泣き出したかった。休み時間のたびにいつBが呼びにくるだろうとビクビクしていた。学校にも行きたくなかった。
休み時間に廊下で殴られるもんだから通りかかる同級生には「なになに!?」って好奇の目で見られたりもした。忘れもしないことがある。うずくまって殴られているときに通りかかった小学生の頃仲の良かった女子と目があった。そして鼻で笑われた。僕はどんな顔をしていただろうか。こんな惨めなことはない。一年後、その女子に告白されたのだがこちらからすれば、どの口が言ってんだでしかなかった。当然断った。

気が済んだのか、興味がなくなったのか、数日経てば呼び出しはなくなった。次に喋るときには何事もなかったかのように話しかけてきたりした。意味がわからない。忘れたとでもいうのか。ヤンキーあるあるとして、仲良くなってしまえばいいやつだということがある。しかし、Bのことは好きにはなれなかった。あの時受けた理不尽を、僕は一生忘れないだろう。

2へ続く。。。


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