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【お盆納涼企画】本当にあった怖〜いExcel(マジ実話)その2

 夏休み納涼企画第2弾でございます。

 例によって、すべてのお話はガチの実話ですが、会社名等は特定できないようにしております。また、参考にお示ししたExcelファイルは、実物を再現したレプリカでございます。内容は、仮データで作成しております。レプリカではございますが、十分に怖さを実感できると思います。

第2話 集計できない集計表

 もう、ずいぶんと昔のお話でございます。23年ほど前の4月初旬頃のことなのですが、今でも鮮明に覚えております。

 会社で、経営会議の資料を作るのは、専門の部署がおこなっておりましたが、あるとき「担当者が急に退職したので、手伝って欲しい」との連絡を受けて、私が手伝うことになりました。

 あくまでも応援・・・ということで、比較的気楽な気分でおりましたが、そこで、想像を絶する恐ろしいモノを見ることになろうとは、神ならぬ身の知る由もないコトでございました。

 資料作成の概要は、「前月までの1年間の実績を拠点ごとにまとめて、最終的にA3一枚の集計表にする」というものでございました。「1年間の実績」は、当時すでに専用のコンピューターで日々集計されていたのですが、そのコンピューターからの出力データではなく、なぜか、「各拠点から送られてくる資料をもとにまとめて欲しい」と言われました。

 「コンピュータからの集計データではなく、各拠点からの資料をもとにまとめる?」

 このとき、私の直感は、不穏な空気をヒシヒシと感じたのでございます。

 その、各拠点から送られてくる集計表というのは、厳密には、このように集計して欲しいという要請書でした。それでは、要請書をもとに集計(?)した表の一部をご覧にいれましょう。
(このあと、恐ろしいExcel画面のスクショを表示します。体調の悪い方は見ないでください)

各拠点からの要請に基づく集計イメージ

 上記は、あくまでも内容が伝わりやすいように、ごく控えめに再現したイメージです。実際に各拠点から送られてくる「要請書」は、「コンピューターからの出力データに手書きしたモノ」「レポート用紙に箇条書きしたモノ」「Excelで簡易的に作ったモノ」などがあり、細々とした「要請事項」がギッシリと書かれてありました。上記の「集計イメージ」には書いていませんが、項目の並び順に法則性はなく、各拠点責任者が見せたい順に並んでいます。一つのセルにかかれている数字は実績だけではなく、ライバル社の数字などの根拠のよくわからないものや、過去の実績、拠点が知らせたいトピックなどの、参考となる数字や文章がいろいろと書き込まれていました。

 結局、「集計作業」というのは、コンピュータから出力されたデータをもとにExcelの表を作り、それを各拠点からの要請に基づいて順番を並び替えたりコメントや数字を入力したりして「要請書に基づいた集計表」を完成させて、最後は電卓で表の中身の数字の検算をする作業でした。

 私は「集計表はコンピュータからの集計データをシンプルに出力して、各拠点からのコメントや解釈(?)などは別途レポートにしてまとめたらよいのでは?」と言ったところ、「そんなことは、この部署が設立されたときから、ずっと言っている」と、とても悲しげな顔をして、その担当者はいうのでした。


特に怖いポイント

 今回も、野暮だとは知りながら「特に怖いポイント」をまとめておきましょう。

 「事実」と「解釈」を切り分けてシンプルに整理して管理するのが良いと思っています。さらに言えば、「事実」であるコンピュータからのデータを、「解釈」する人自身が操作をして分析をするのが良いと思います。そして、今はデータ分析をするためのツールも充実しています。

 けれども、経営会議に参加するような世代の人が、ツールを使って的確な分析をできるとは限りません。そこで、デジタルを活用した効率的な仕事のやり方を検討する必要があります。

 その検討をしないで、従来のやり方に固執すると、闇がますます深くなる気がいたします。

 ところで、「23年前」のお話として提供していますが、いまでもアチコチで見られるのではないかと思います。

考えられる教訓

 今からおよそ40年以上前、まだ、コンピューターが導入されていなかった頃は、各拠点で活動実績を集計して経営会議用のレポートを作成していたことが、古文書に残されております。

 その後、コンピューターが導入されて実績の集計を行うようになったとき、従来からのやり方を「いっさい変更せず」に、従来と同じ資料を用意しようとしたそうです。当時の社長が「なぜ、人がコンピュータの都合に合わさなければならないのか!」と言ったという話が口伝として残っておりました。その後、「経営会議は会社の最高の意思決定の場なのだから、最優先されるべき」という金科玉条のもとで、時代が移り変わっても一切の見直しがされることはありませんでした。

 結果として、コンピュータのデータを活用して、並び替えたり、過去からの経年変化を見たり、様々な切り口で分析するといった一般的な会社で行われている「ごく普通の」検討はほとんどおこなわれずに、独自作成の資料に基づく「経営会議資料」をもとに、経営会議での検討がおこなわれていたのでした。

 「経営会議は会社の最高の意思決定の場なのだから、最優先されるべき」という業の深い人間の驕りの心が、本日ご紹介したExcelの表というモンスターを生み出し、効率的で適切な業績管理をするという取り組みの検討をストップさせてしまったように思えてなりません。

 このシリーズには「怖〜いExcel」というタイトルをつけていますが、本当に怖いのは、頑なな人の情念でありましょう。

 最後に後日譚でございます。この会社の経営が悪化したとき、コンサルタントが立て直しのために入りましたが、残っている会社独自のガラパゴス資料では、過去からの実績の流れが全然わからずにイチから作ることになったのだとか・・・・。

動画版怖~いExcel



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