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radiko聴取ランキングをデータ可視化してみる

radikoランキングのデータ可視化からみえるラジオの現在と未来

こんにちは、徒然研究室(仮称)です。今回は当研究室のXで大変反響が大きかったデータ可視化についてまとめました。radikoさんが公開している「2023年にradikoで最も聴かれた番組ランキング」からどの年齢層・性別がどのような番組を好んで聴いていたのか視覚化し、その結果から見えてきたトレンドや、radikoというメディアが生み出しつつある興味深い現象について考えみたいと思います。

男性はオールナイトニッポン+野球・競馬

まずは男性リスナーの傾向を見てみましょう。

全体的にオードリーさんをはじめ「オールナイトニッポン」が広範な年齢層で上位にランクインしており、特に20代から30代にかけての支持が高いことがわかります。一方で、50代になると一つもランクインしていないのが特徴的です。このあたりの年齢層で、現代のラジオに求めるものが変化する分水嶺のようなものがあるのかもしれません。

女性は男性アイドル+オードリーのANN

次に女性リスナーの傾向を見てみましょう。

女性リスナーにおいても、オードリーさんのオールナイトニッポンは幅広い年齢層で人気があります。しかし、特に興味深いのは、男性ダンスボーカルグループの番組が全体的に高い人気を誇っている点です。「SixTONESのオールナイトニッポン」や「Snow Manの素のまんま」が、各年齢層でランクインしています。

男性より女性でより広範な年齢層で聴かれる「オードリーのANN」

「オールナイトニッポン」の色は黒で統一してあります。そこでANN前番組にハイライトして、男性と女性を見渡してみましょう。

ご覧のように、男性におけるANNは縦方向に伸びいてる、つまり20〜30代中心に複数のANNの番組がランクインしているのに対して、女性においてANNは横に伸びている、つまり全年齢層に聴かれている番組が2つも存在していることがわかります。

このうち「オードリーのANN」だけにハイライトしてみましょう。

ご覧のように「オードリーのANN」は、男性ではなくむしろ女性において、より広範な年齢層で聴かれているのです。オードリーのお二人は中学2年生以来の長い友人でもあり、高校時代はアメリカンフットボール部のチームメイトでもあったとのことですが、そのお二人が繰り広げるトークには女性のリスナーも引き付ける要素があるようです。

そもそも男性のランキングにおいては、全年齢層でランクインしている番組はひとつもありません。このことから、radikoでのラジオ聴取行動においては、男性よりも女性の方が、年齢による嗜好の違いが小さい、という可能性がみえてきます。

「男性よりも女性の方が、年齢による嗜好の違いが小さい」という点では、「安住紳一郎の日曜天国」も、男性よりも女性において、より広い年齢層で聴かれているようです。

40歳からはじめるオールナイトニッポン

「オードリーのオールナイトニッポン」は、女性では全年齢層でランクインしており、50代女性では8位にランクインしています。

ここで、同番組の「現在55歳の女性」のリスナーについて考えてみましょう。同番組放送開始は2009年(radiko開始の1年前)なので、仮に「現在55歳の女性」が開始当初の2009年からリスナーだったとして「聴き始めたのは40歳から」ということになります。

40歳というのは、従来のANNが想定していたリスナー層である10代からはかなり離れていますし、「10〜20代の頃に聴き始めたオールナイトニッポンを今も聴き続けている」というケースとは異なっているようです。おもしろい…!

50代の次は20代?

また興味深いのは「中居正広 ON & ON AIR」が「20代と50代」に、飛び石的にランクインしている点です。30代と40代にはランクインしていなのです。

10代と50代は、ちょうど親子くらいの組み合わせの年齢層ですが、実態はどうなのでしょうか。

「中居正広 ON & ON AIR」 の生放送における時間帯は、女性の全年齢層でランクインしている「SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル」の直前となっており、放送局も同じニッポン放送です。

したがって、「SixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャル」の放送開始に合わせてradikoを開いている人々がいるとして、その影響で「中居正広 ON & ON AIR」 の聴取者数も増えているという可能性がありますが、10代と50代以外では同番組はランクインしていない点や、radikoのランキングがライブ聴取とタイムフリー聴取の合算で算出されていること、また直前の数分間だけが聴かれていても聴取者数にカウントされないのではないか、というなどを考えると、生放送でスタンバイするリスナーの影響だけで説明することは簡単ではないように思われます。

このあたりはradikoのローデータをみることができる関係者の方々にきいてみたいところですが、「中居正広 ON & ON AIR」 のランクイン特性からは、顧客層が広がる際には、必ずしも隣接した年齢層から広がるというわけではない、という可能性が示されていて、大変興味深く感じます。

特殊なデバイスを不要にしたradiko

また「メディア」としてのradikoという観点からこのランキングをみたときにおもしろいのが、男性の40代、50代などでランクインしている「中央競馬実況中継(ラジオNIKKEI第1)」(オレンジ色)、「中央競馬実況中継(ラジオNIKKEI第2)」(紫色)、女性の50代でランクインしている「RaNi Music♪ Morning」「RaNi Music♪ Day」といった、ラジオNKKEIで放送されている番組です。

これらの番組のランクインについて、Xユーザーのたけりんさんが次のようなリポストコメントをくださいました。

つまり、短波という電波を使っているため、広範囲に放送できるけど通常のAM・FMラジオでは、ラジオNIKKEIは聴くことができないのです。

ラジオNIKKEIは短波という電波を使って放送しています。そのため、短波が受信できるラジオが必要です。短波はAM(中波)・FMとは違う種類の電波のためAM・FMラジオでは聴くことが出来ません。

出典:ラジオNIKKEI

そうした、ある意味で特殊なデバイスをもっていないと聴けなかった番組が、「スマホに誰でもインストールできるradiko」というメディアに載るようになったことで、聴取者数のトップ10にも入るようになっているわけです。

非常に興味深い現象です。

FMから2つの情報番組がランクイン

逆に、以前はどのラジオでも聴くことができたFMからは、2つの番組だけがランクインしています。J-WAVEさんの「STEP ONE」と「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」です。これらの番組は女性40-50代で聴かれているようです。

リアルタイムでは早朝からお昼にかけて放送されていて、音楽だけでなくや様な情報を紹介する情報エンターテインメント番組です。今では流行りの音楽は、YouTubeや音楽サブスクリプション、TikTokなどでも知れるようになっていますから、それとは異なる、パッケージングされたタイムリーで多様な情報へのニーズが高まっているのかもしれませんね。

ANNのタイムフリー聴取者数は生放送の5-6倍

メディアとしてのradikoのおもろさについてもう少し考えてみましょう。

オールナイトニッポンのradiko視聴について、2022年4月にニッポン放送の冨山プロデューサーが次のようにインタビューに答えていることが確認できます。

ラジコでは、テレビの毎分視聴率のようなデータが取れます。分析すると、おもしろいことが分かってきました。深夜放送は、受験生が勉強しながら聴いているというイメージが強くて、制作側にもANNは10代向けの生放送という先入観があった。しかし、聴取者層は20代が圧倒的で、朝の通勤、通学時間帯にラジコのタイムフリー機能を使って聴いてくれる。さらに上の年代のリスナーもいて、タイムフリーで聴く人が生放送の5~6倍も多いんです

日刊スポーツ「第3期黄金時代ANN ラジコ登場で長期低迷脱出、星野源や菅田将暉で若い女性リスナーが激増」 2022年4月4日

タイムフリーで聴く人が生放送の5~6倍も多いんです」とあります。

オールナイトニッポンが男性のみならず、女性でも広範な年齢層で聴かれているようになっている背景には、スマホの普及とradikoの登場によって、ラジオ番組というコンテンツが、放送時刻という文脈から大きく切り離されるようになったという変化もありそうです。

深夜まで無理をして夜更かししなくても、通勤や通学の途中に聴いたり、あるいは共働き世帯の父親や母親といった中高年のリスナーでも、家事をしながらノイズキャンセリングイヤホンなどで聴くといったことができるようになったわけです。

このようなメディア環境の変化が、今度はコンテンツの企画や構成のどのような影響を及ぼしていくのでしょうか。オールナイトニッポンのような深夜帯に放送されてきた番組でも「深夜のノリ」というのが必ずしも前提とはならなくなるかもしれないですし、また、ラジオにかじりついて一回限りの生放送を聴くのではなく、radikoやpodcastで、2周3周とリピートするリスナーが増えてくると、一発のインパクトだけでなく、くり返し聴くことで新たなおもしろさ発見できる番組も求められるようになるのかもしれません(あるいはそうした変化はすでに始まっているのかもしれません)。

データ可視化手法について

今回のランキング分析を通じて、ラジオ番組の人気が年齢層や性別によって大きく異なることが明らかになりました。また、特定の番組が幅広い年齢層で人気を博していることや、タイムフリー機能の利用が増えていることなど、現代のラジオの聴取傾向に関する新たな知見を得ることができました。

当研究室が行ったのは元々下記の画像のような、「年齢層ごとにバラバラだった表形式のデータ」を、

バンプチャート風の一つのグラフに集約して番組ごとに色分けしただけなのですが、X上ではコメントや引用リポスト上で、多くの方々が興味深い考察をしてくださいました。ありがとうございました🙏🙏

今回のデータ可視化では、JavaScriptのD3.jsを使って制作しています。番組名を矩形で配置し、その背景レイヤーに、同じ番組同士を結んだラインチャートのような半透明なパスを、矩形と重なる部分の輪郭が一致するようにして配置しています。

横軸は「時間軸」ではなく「年齢層」なので、バンプチャートのようにラインチャートを重ねるのは比較的イレギュラーなのですが、各番組の年齢層上の連続性や抜けを表現したく、このようにしました。

ある程度試みは成功したかなと思っているのですが、引き続きより直感的に理解できる表現手法を考えていきたいです。


以上、徒然研究室(仮称)でした。Xでもオープンデータとプログラミングで関心あることを分析してポストしています。Xではオールナイトニッポンの発言量の可視化・比較などもポストしています。どうぞご贔屓に🙏

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