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関ジャム「若手が選ぶ最強平成ソング」を可視化してみたら凄かった。

25.8歳の48人が選んだ意外な30曲!?

連休中に放送された関ジャムSPの「平均年齢25.8歳の若手アーティスト48名が選ぶ、最強平成ソングベスト30曲」がすこぶるおもしろかったのです。

選者は...

アイナ・ジ・エンド(BiSH)、井上苑子、Aimer、Awesome City Club、神はサイコロを振らない、syudou、ちゃんみな、Vaundy、ハラミちゃん、yama、緑黄色社会....

ほか多数。メジャーシーンからボカロP、SNS出自のアーティストさんまで、幅広い方々にアンケート調査を実施されています。

その集計結果に対しては、平成当時のヒットチャートをリアルタイムで経験している年配の視聴者を中心に賛否含めSNSで色々な意見が出ておりましたが、僕はとても興奮しました。

このランキングには、単純な世代差に還元できない何かがある。音楽地殻変動の音が聞こえる。そう感じました。

この感覚をどうにか可視化したい…という衝動を抑えきれなくなり、観終わった勢いでそのまま作ったのが次の図です。

可視化に際して追加したデータ

●印は各曲の発売年です。横に伸びている矢印状の線は、そのアーティストの生まれた年が起点になっています。グレーの帯は平均年齢25.8歳の選者たちが生まれて生きてきた期間。

放送されていた情報は「順位」「曲名」「アーティスト名」と、「選者48名の平均年齢」でした。

この情報に「各曲のアーティストの生まれ年」を加えて、リリース年から時間軸を過去に向かって伸ばして描画したのがこの図でふ。

そして平均年齢25.8歳の選者集団が「おぎゃあ!」と生まれてから現在に至るまで過ごしてきた期間をグレーで網かけしています。

こうすることで「その曲が発売された当時、選者は平均して何歳だったか」ということが見えてきます。

と同時に「その曲を歌っていたのが、いったい何年生まれの何歳のアーティストだったのか」ということも視覚的に理解できます。念のため表様式で作成したデータも貼っておきます。

右端の「選者の当時の年齢」がマイナスになっているのは、「生まれてない」ということです。

30曲中27曲が小学校時代以前に集中


1位は選者が当時平均「2歳」のときにリリースされた宇多田ヒカル「Automatic」です。

グラフにも表れている通り、選者の平均年齢が思春期の15歳あたりとなる2011年前後にリリースされた楽曲はひとつもありません。

実に30曲中27曲は「それ以前」の時代、26位に入っているSuperfly「愛をこめて花束を」の「2008年」より前の時代に属しているのです。

2008年は選者の平均年齢は「12歳」ですから、生まれてから小学校を卒業するまでの間に集中しているということになります。

加えて3位サザン「真夏の果実」や、11位スピッツ「ロビンソン」、15位たま「さよなら人類」など、そもそも選者の中に生まれていない者もいる時代の曲が4曲ランクインしています。

音楽ソフト冬の時代の曲を愛でる若い選者たち

ここで以前の投稿の時に作成したグラフを再掲してみます。

ご覧のように、日本の音楽市場においてCDの売り上げが大きくピークアウトしていくのが1998年ごろ、選者さんたちの平均年齢が2歳のころです。

そして着うたやダウンロード形式の音楽が統計に加わってくのは2005年以降。

それまでの7年間ほどは、市場規模的にはひたすら全体が縮小してく時代です。

今回の若手アーティストさんたちが選んだ曲の多くは、興味深いことにこの期間、平成10年から平成17年に集中しています。

選者さんたちが平均して思春期に入る以前に、CDがどんどん消えていく時代に世に出て行った曲が、多く選ばれている。

そしてそれらのリストには当時のCDセールスランキング上位に入っていない曲も少なからず含まれている。

いろいろな意味でおもしろい現象です。

世代差が消失へ向かう世界

音楽を聴く手段の消失と再生、そしてYoutubeやサブスクリプションの登場といった情報環境の変化、さらには親子関係の変化など、21世紀入って生じた様々な生活変化を、非常に象徴的に反映したランキングになっていると感じます。

当時、思春期や若手社会人だった方々からすると、「1998年から2005年はキリンジやフジファブリックというより、小室ファミリーやミスチルでは!?」と感じると思いますが、少なくとも、当時平均して小学生だった人たちからすれば、いま現在から仮想的に平成を振り返ると、心の中の純粋想起上位は、「エイリアンズ」や「若者のすべて」なのです。

ある楽曲を、深い思い入れを伴って好きになるのに、リアルタイムで体験していることはもう必須ではなくなってきている、ということではないでしょうか。

いや、むしろ各曲を選んだアーティストさんたちのその曲への慈愛あふれるコメントを聞いていると、リアルタイムで聴いていた私たちすら見過ごしていた魅力を、柔軟な感受性でもって見つけてくれている気さえしてきます。

少なくともポピュラーミュージックという領域においては、ある面で「世代間の差異」は縮小する方向に向かっているのかもしれません。

社会学的に見てもおもしろい時代です…!


他にも興味深い結果が色々ありました。

たとえば16位「LOVEマシーン」(1999年、モーニング娘。)選んだ選者が口を揃えて、

「生まれた時から日本が不況だった僕たちにはこの曲が...」

とコメントしていたことです。

平均年齢25.8歳の選者にとって1999年は3歳のときですが、物心ついて、外界についてみるみる吸収していく発達段階に得たのは、「経済成長しない我が国、日本」という世界観だったわけですね。

その一方で、彼らは現在だけではなく過去、しかも自分が体験していない遠い過去に生み出された楽曲から、時間の壁を超えて愉悦を引き出し、愛するということを普通に行っている。

いまという時間に縛られない、自由な感受性。

その隙間から、新しい音楽世界のしっぽが覗いています。

以上、徒然研究室からでした。

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