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全く想定していなかった返事が返ってきたとき、一瞬理解を拒絶してしまいました【#11】

病院には様々な人が訪れます。脳神経外科の外来にも様々な方が通院してきます。手術後経過がよくて終診となる方がいます。逆に自宅退院後再度悪化してしまう方もいます。
脳外科外来では、想定外とはこういうことかと学ぶことができます。


慢性硬膜下血腫という疾病があります。外傷によって頭蓋骨と脳の間に血がたまります。血がいっぱいたまると血が脳を圧迫します。そして頭痛、嘔吐、麻痺などの症状が出ます。症状がでてしまったら手術をすることがおおいです。小さな穴を頭蓋骨に開けて血を吸いだす手術を行います。手術後、症状は消失します。1週間弱の入院です。

圧迫されていた脳は、すぐには元の形には戻らないです。脳と硬膜(骨側)の間にはスペースがあいている状態です。脳と硬膜をつなぐ血管というものがあり、それが引き伸ばされている状態です(この血管の破綻が慢性硬膜下血腫の原因のひとつと言われています)。引き伸ばされている血管はちょっとした脳の揺れで切れる可能性があります。切れたら再発です。

ですので手術のあとは、直接の頭の外傷だけでなく、振動、しりもちなどに十分気を付けていただきます。といっても大体10%弱の方が再発します。

今回は慢性硬膜下血腫に対して手術をした80代の男性サトウさんのお話です。手術して2-3週間たったころ、外来に来ていただきました。


サトウさん「先生、手術のあとから調子ええ、もうすっかり元通りや」
と笑顔いっぱいでした。

わたし「よかったですね、家帰ってからは転んだり、頭ぶつけたりしてないですか?」と聞くと

サトウさん「なん、しとらん。もう大丈夫や。」とのこと。

わたし「つよく首を振りまわすのもよくないですからね、しりもちとかもだめですよ」

そういうとサトウさん何か考え込むような顔をしてから、なんとなく言いにくそうにわたしに問いかけてきました。

サトウさん「あー・・・・・・・先生、ぶるぶるは大丈夫よな?」

わたし「ぶるぶるってなんですか?」

サトウさん「マッサージのぶるぶるや、気持ちええんや」

わたし「どこにあてるんですか、首?肩?腰? 今は少し控えたほうがいいかもしれませんね」

サトウさん「いや、あたまにあててるんやけど」

わたし「え??(あたまってあたま?いわゆる頭?)」

サトウさん「あたまにあててるんや。あたまがぶるぶる振動して気持ちええんや」
と頭の前方、側方、後方、頭頂とマッサージをあててる素振りとあたまが震える様子を実演してくれました。

わたし「(数秒フリーズ後) 頭は絶対にやめてください」

サトウさん「ぜったいか?」

わたし「絶対です。」

サトウさん「・・・・・・・・我慢するわ。」


頭にマッサージの機械あててる人って結構いるんでしょうか?
しかも手術後に・・・・・

頭にマッサージの機械をあてることが慢性硬膜下血腫再発のリスク因子になるという報告はない気がします・・・・がやめていただきました。再発しないことを願います。

※高齢者の大丈夫は大丈夫じゃないことも多いです。病態をあまり理解しておらず、病気を過小評価しての大丈夫には、注意しなければいけません。

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