見出し画像

職人は寡黙ってあれ嘘やぞ。【#13】

病院には様々な人が訪れます。脳外科外来もいろいろな方が通院してきます。厳しい結果を伝えないといけないときもありますが、なるべく前向きになってもらおうと取り組んでいます。
ときどき凄く面白いことを教えていただくこともあります。
脳外科外来には、笑顔と驚きと発見があります。


60代男性、肺がん脳転移疑いで紹介となったニジさん。画像上は側脳室内の腫瘤性病変で転移ではなさそうでした。大きくならないかの定期的な画像フォローのみ行っています。

ニジさんは漆器職人さんで、外来にはご夫婦でこられます。画像の結果を説明して「何か質問などありますか?」といつものように聞くと

ニジさんの奥さんが
「うちの人、3回も4回もおんなじ話しするの、認知症とかじゃないですか?」とおっしゃいました。

ニジさんは自分の病状に対する理解も良好です。わたしは認知症とは全く思っていなかったので奥さんの言葉が意外でした。

わたしが「3回も4回も同じ話するのは最近ですか、それともずっと前からですか」と聞くと

奥様は「だいぶ前から、時々かなぁ」と答えました。

”そんな印象ないけどなぁ”と私が考えているとニジさんはいいました。

ニジさん「職人は、狭い世界で仕事してる。家内も仕事を手伝ってる。病院にも家内がこうやってついてくる。四六時中一緒にいるんだわ。話す内容も限られてくる。家内が喜んだり笑ったりしてくれた話を何度かすることもあるわ。」

おおーー、そういうことですか。一件落着一件落着。なんとなく奥さん笑顔になってるようでした。

帰り際ニジさんは言いました。


「先生、一応いっとくけど、職人は寡黙ってあれ嘘やぞ。」

ここから先は

0字
この記事のみ ¥ 100
期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

スキ、コメント、フォローなどなど、してもよいかぁと思った方、よろしくお願いいたします。noteに時間を割くモチベーションになります!! ほかの記事も見てくれると凄く嬉しいです。ありがとうございます。