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夢の話1〜8

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「夢の話」1〜8話までまとめ。 以降は本編へと続きます。
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#短編小説

夢の話

おそらく夢はよく見る方だ。 と言うか、覚えている方だ。 徒然に書き連ねていこうとしてるんだから、 夢の話でもいいんじゃな〜い。ってことで。 いつかみた夢 ナイジェリアに急遽旅行に行く事になった。 本当にナイジェリアだったのか、そうでないのかは分からない。 滞在したのは、首都から離れた山中のとある地域。私は、明確な目的を持ってそこに行こうとしたわけではなく、 流れでそこに行き着いた。 空港を出たバスは、私が宿泊するホテルに向かっていた。 ホテルはバスの終点にあったので、

夢の話(2)

いつかみた夢 バスは山あいの悪路を行く。 あれから1時間は走っただろうか 石に乗り上げながら、私は相変わらず右に左に神輿のように揺さ振られ続けている。 あの神輿の中に神様そのものがいるとしたら、 屈強なふんどし一丁の(半纏着てる時の方が多いのに) 男達に揺さぶられ続ける気分ってどんなだろう。 まぁ、神は 私みたいにこんな風に窓に頭をぶつけて悶絶してみたり、 バスが跳ね上がる度に、内臓が浮いて元の位置に戻らないんじゃないかとか、 座席がずっと振動してて刺激でトイレに行きた

夢の話(3)

いつかみた夢 あまりに いつまでもどこまでも 土色、緑、空の青が続くので、 もしかしてずっと同じ所をグルグル回っているだけなのでは… と思い始めていた時、 初めて誰かのしゃがれた低い声がした。 「………………」 聞き取れない。 それっきりまたもとの騒がしい静寂に戻った。 バスは大きく左にカーブする。 そして、程なく止まった。 まだそこは相変わらず緑深い山の中だったし、 少し肌寒さを感じると言うことは、かなり高い所まで上がってきたのだろう。 時計は1時を指していた。

夢の話(4)

いつかみた夢 この胸の痞えと 喉の渇き  私はひとまず飲み物を買おうと、 人だかりのフードコートらしき “Good Tasty” の文字が光る方へ向かった。 たくさんの煌びやかな巨大なアトラクション。 通路の両側にはいわゆるメダルゲームのような ミニゲームマシンがずらりと並ぶ。 子どもたちがその背中を一糸乱れずに横並びさせて、無言で画面に見入っている様を見ながら足早に通り過ぎる。 フードコートは満席だ。 たくさんの家族連れが普通に食事をしている風景にかすかに安堵しなが

夢の話(5)

いつかみた夢 振り向くと、そこには サラリーマンがいた。 姿形を改めて形容する必要も無い位、よくいる日本のサラリーマンだった。 スーツを着て、リュックを前に抱えている。 満員電車なら褒められたマナーのサラリーマンだ。 手にはしわくちゃの白いビニール袋。 見慣れた緑の「7」の文字。 「これ、良かったら」 会釈をして、セブンイレブンの袋を受け取り、ひとまず床に広げる。 しゃがみ込んで、両替機がやっと吐き出し終わった溢れるコインを入れる。 頭を少し上げると、サラリーマンの

夢の話(6)

いつかみた夢 緑青に覆われた、 見るからに古そうな銅製だろう看板には、 バチバチの達筆で、“通商産業省”と描かれていた。 日本から遠く離れたナイジェリアの 首都からも遠く離れた山の中の 外界から乖離した 白人種と少しの黄色人種しかいない一見バカでかいだけの悪趣味な遊園地。 そのフードコートの中の唯一古びた一角のメダルゲーム両替機の横に、 日本の国家公務員がこんな大層で古めかしい お上の看板を掲げて 両替に来た日本人に話しかける仕事をしているとしたら、どんな効率の悪い仕事だ

夢の話(7)

いつかみた夢 「なので、あなたがある程度ご存知の前提で、お話させていただきます。」 こうなると、ある程度 “ご存知顔” で聞かないといけなくなる。 話しながらサラリーマンと私は歩き出す。 さっきのメダルゲームのコインは もちろん預けてきた。 錆だらけの『KOKUYO』のスチールロッカーの中に。 「私達は1960年代に、この国と国交を開始しました。今もご覧の通りまだまだ発展途上ですが、 ここだけが異質ですよね」 異質と認めると言うことは、 端から異質なものを意図的に作っ