夢の話(4)
いつかみた夢
この胸の痞えと
喉の渇き
私はひとまず飲み物を買おうと、
人だかりのフードコートらしき
“Good Tasty” の文字が光る方へ向かった。
たくさんの煌びやかな巨大なアトラクション。
通路の両側にはいわゆるメダルゲームのような
ミニゲームマシンがずらりと並ぶ。
子どもたちがその背中を一糸乱れずに横並びさせて、無言で画面に見入っている様を見ながら足早に通り過ぎる。
フードコートは満席だ。
たくさんの家族連れが普通に食事をしている風景にかすかに安堵しながら、私もコーラでも買おうとして、ポケットから出したコインが500円玉な事に気付き、EXCHANGEを探す。
奥まった一角に古びた両替機があった。
薄汚れた壁には、
日に焼けて半分剥がされたポスターの中の男性が、残された片目でにこやかに笑いかけている。
ここだけに、
あの空港の、あの街並みの、あの情趣があった。
いくらを両替する?
こっちの物価を考えたら1000円で十分か。
ガ、ガガガ、ガガ…
と紙幣を飲み込んだ両替機は、しばらく沈黙した後
ジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラーッッ
と、けたたましい音を立てて
コインを滝のように吐き出し始めた。
みるみる受け口が溢れる。
私は慌てて、何か入れられるものを探すが、あいにく何も無い。
仕方なくTシャツの裾をめくりあげ、溢れてくるコインを受け止めた。
こういう間抜けな瞬間って、なんで時間が早く過ぎないんだろう。
いつだったか、
電車でうたた寝してしまい、
「かまぼこは味噌汁に入れないでしょお〜」
と笑いながらまあまあ大声で言ったら、まさかのそれが夢の中じゃなく現実で、
あまりの恥ずかしさに顔が上げられず、
すぐにでも降りたいと思ったけれど、新宿三丁目で降りるはずが乗り過ごした事にも気付き、
あげく急行だったため次の東新宿では停車しないで、3駅先の池袋までその地獄の中で過ごさなきゃいけなかった時の愧死寸前だったあの過ぎゆく時間の遅さに比べると、今回は少しはマシで、救われた気分になっていた。
Tシャツの裾は、山積みのコインの重さで今にも破けそうに伸び切っている。
「あの… お手伝いしましょうか」
ー続く
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