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夢の話(2)


いつかみた夢


バスは山あいの悪路を行く。
あれから1時間は走っただろうか
石に乗り上げながら、私は相変わらず右に左に神輿のように揺さ振られ続けている。

あの神輿の中に神様そのものがいるとしたら、
屈強なふんどし一丁の(半纏着てる時の方が多いのに)
男達に揺さぶられ続ける気分ってどんなだろう。

まぁ、神は
私みたいにこんな風に窓に頭をぶつけて悶絶してみたり、
バスが跳ね上がる度に、内臓が浮いて元の位置に戻らないんじゃないかとか、
座席がずっと振動してて刺激でトイレに行きたくなったらどうしよう…とか、
そんな心配をする事は無いんだろうな。 

揺れる時は揺れるし、
跳ねるときは跳ねる。
もはや、神輿に乗った神にでもなったつもりで身を委ね、
まだ見ぬ御旅所とやらに思いを馳せていると、いつしか微睡んでいた。


バスが大きくヘアピンカーブを曲がる。
私は無防備に頭をぶつけ鈍い痛みで目が覚めた。

まだぼんやりした焦点を車内に合わせてみると、
このバスはかなり年季が入っているのが分かる。
空港から乗った時は、そこまでのオンボロさは感じなかった。
土埃まみれだったものの、外装は鮮やかな黄色だったし、それなりだった。

窓枠は所々が錆びて剥がれ落ち、窓ガラスは油と砂で曇り、安っぽい合皮のシートは裂け、その間からオガクズとワタが混ざったようなものが顔を出して生ぬるいクーラーの風を受け、まるで生き物のように蠢いていた。

足元には、さっきから酒の瓶が転がり、
ゴロゴロォォ…ゴロゴロォォオオ…と
安っぽい効果音を奏でている。

どこからか、
ギターとマラカス、ウードの音色が聞こえてきた。
ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブだ。

ここは、
南米だったのか、
アフリカだったのか、
今なのか、いつかの過去なのか
ないまぜにしながら

バスは悪路を行く。

ー続く



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