帰省
人生で初めての"帰省"をした。
生まれてこの方、愛すべき両親と世界一かわいい弟と世界一かわいい妹と住んでいた私には全く無縁だった風習だ。
学生の頃は、地方から出てきて一人暮らしをしている友人達がこぞって飲み会を断る理由に「帰省するから」と決め台詞の様に放つ姿をなんとなく羨ましく思ったものだ。
帰る場所がある彼らが眩しくもあり、根無草や一匹狼の様な哀愁漂う格好良さがあったのかもしれない。
とにかく、私には初めての帰省だった。
同じタイミングで帰郷する同居人に恥ずかしげもなく「下着とか持っていった方がいいかな?」と聞くくらいには浮かれていた。(私からのやけにふわふわした問いに対しては「手ぶらでいいんじゃない?」とあっさり返されたが。)
浮ついた私が久しぶりの故郷の地を踏んで感じたこと。
実家とはいいものだ。
改めて痛感した。
家族との距離感が掴めず、自分を責め家族を責めた挙句の引越しだった。
久しぶりに会う家族は(と、言っても1ヶ月ぶりくらいだが)1%の照れ臭さと99%の愛情で出来ていた。
母の懐かしくもスパイスが効いた辛い料理を頬張った。
父の萎んでしまった、でも広い背中に抱きついた。
弟の鍛え上げられた肉体を惜しみなく晒すフレディー・マーキュリーのモノマネを見た。
妹の人生初めてのアルバイトの料亭まで車で迎えにいった。
そこには、私を育ててくれた全てがあり、その全てを捨てて生きていく事はできないのだと、改めて知った。
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