中二病を再発? マーク・トウェイン『人間とは何か』

マーク・トウェイン『人間とは何か』(岩波文庫)を読みました。この本の特徴を最初に言っておくと、青年と老師の対話形式で話が進んでいくことです(このような話の進め方を「ソクラテス的対話体」と云うことを、この本で知りました)。ベストセラーになった『嫌われる勇気』と似ている文体と考えてもらえるとわかりやすいです。

では、印象に残った言葉を紹介していきます。紹介したいのは、本のタイトルでもある「人間とは何か」についてです。老師は青年にこう言いました。

人間即機械--人間もまた非人格的な機関にすぎん。人間が何かってことは、すべてそのつくりと、そしてまた、遺伝性、生息地、交際関係等々、その上に齎(もたら)される外的力の結果なんだな。つまり、外的諸力によって動かされ、導かれ、そして強制的に左右されるわけだよ--完全にね。みずから創り出すものなんて、なんにもない。考えること一つにしてからだな。

人間は外的な力によってのみ動かさる機械にすぎない、これが著者の主張です。そして、機械である人間の行動原理についても言及しています。

揺籃から墓場まで、人間って奴の行動ってのは、終始一貫、絶対にこの唯一最大の動機--すなわち、まず自分自身の安心、心の慰めを求めるという以外には、絶対にありえんのだな。

この主張に対して、青年は老師に愛国心を例に出して反論します。つまり、愛国心も「自分自身の安心、心の慰め」なのかと。老師はこう続けます。

じゃあ、おそらくそれは、平和以上に何か愛するものがあるってことだな。 例えば隣人たちや社会からよく思われるとか。 それともまた苦痛以上に何か怖いものがあるとか。たとえば、 隣人たちや社会から冷たい眼で見られるってことだな。そりゃもしその男が、 恥というものに非常に敏感であれば、 これは戦場に出かけて行くだろうな-- なにもそこで完全に心が慰められるって訳じゃないが、 もしそのまま家に残ったらという場合を考えれば、 それよりはむしろ戦場の方が、ある意味で心安まるかもしれんからね。 いずれにせよ 、彼のやることはもっとも多く心の安まりがえられるであろう行為によってくるんだ --それが、つまり 、彼にとっての生の唯一原理なんだからな。

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ふむふむ、、、人間即機械で、人間の行動の最大の動機は自分の安心か。言われてみると、皆さんも心あたりがあるのではないでしょうか。

僕がこの本を読んで思ったことは、2つあります。

1つは人間が機械なら、やはり投入される燃料が大事なのではないかということです。燃料を外部環境と考えるなら、自分がどんな組織や企業いるか、自分の周りにいる友人や知人で、アウトプットや成長幅が決まるということ。

もう1つは、自分が何に安心を感じるか。自分の行動が何によって規定されているのかを把握できていれば、おれが大事にしていることはこれだからこう行動するんだ、という迷いのない気持ちになれるかもしれないということ。

この本を手に取ったとき、「おれ、もしかして中二病再発した?」と思いましたが、すごくいい本だったので興味があれば読んでみてください。

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