マガジンのカバー画像

5
運営しているクリエイター

記事一覧

台風の夜の夢

それはそれは大きな山だった
連なる山だった
雲立ち昇る山だった
海もあった
大きな杜もあった

深い緑の濃い空気
透けた雲が溜まる上がる下がる

車を降りた何も持たずに
いや、お財布と携帯は持っていた
いろいろな人がいる
押し付けるような海風
人は皆何故か清々しい顔をして風に負けていた
むしろ少し楽しそうだった
私だけが物陰に隠れ風を避けていた
立ってみた出てみた
母が嬉しそうにこっちをみている

もっとみる

彼がみた私の夢

ふたりがいた
自転車でふたりのり

坂をぐんぐん
ぐんぐん登っていく
あ、眉間に皺が

自転車を止める
脇の道をいく

綺麗な銀杏並木
晴れたいい
いいお墓参り日和

ひらけた場所
それぞれが色々な人と
それぞれに色々なことを

おひとついかがですか?

あ、また眉間に皺が
大丈夫です
ありがとう

君はずんずん
ずんずん進む
ずっと眉間に皺が

お墓参りをしよう
見た目はアパートだけど
これは

もっとみる

私は遠くが見たかった。

私は疲れている。
今日もまた閉鎖された電車に乗り、仕事へ行く。
時間どうりにすら動けない電車。人が溢れたせいだ。
人が作り操るものすら、人によって乱れ制御できない。

今日、地下鉄の窓に映る車内と、透けて見えるゴツゴツとした灰色、そこにモネをみた。

私の目は良すぎた。
良すぎる目は遠くをよく写す代わりに、近くを見ることに不向きだった。
その目をもって、毎日小さな箱に乗り、目の前に人が立つことのス

もっとみる
神保原駅

神保原駅

始めてきた土地、駅のホームで一人本を読んでいます。全く知らないお寺や遺跡の名前になんとなく懐かしくなった。涼しくなった空気に充満する暑さの終わりの匂いがとても懐かしく、寂しくなります。
本当に一人なわけではなく、ここで人を待っています。

背の伸びきった草がこれからうなだれようとしています。自分の祖母の家の辺りよりは栄えているものの、自分の実家の辺りよりは何もない。久しぶりに着た長袖のシャツの中を

もっとみる

そういうもの

私は道から降りる時、おいしょと思います。
そして道に上がる時、よいせと思います。

それは、歩道から道路に降りる時も、
スファルトの道から山道におりるときも、
川原から川に降りる時もです。

同じようにおいしょと思います。

そしてまた、同じように、上がる時はよいせと思うのです。

私はとりあえず冷蔵庫に溜め込みます。
貰えるものは全てもらって、溜め込みます。

人様の野菜の余りや、
職場で残った

もっとみる