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つんの小説

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ぼちぼち書いてます。中編・長編を書きたい。
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#純文学

小枝散りゆく、つゆ知らず

小枝散りゆく、つゆ知らず

既視感。
 昔、私はこの近くに住んでいたことがあった気がする。なんとなく河の感じや道に見覚えがある。朧げなのは10年も前の記憶だからで、小学校に上がる前だった。まだ母と暮らしていたときだ。
 この街は交通量の多い、広い大通りよりもうんと幅の広い運河が流れている。河は黒々としていてうねるように流れている。少し潮のニオイが混ざった運河特有の匂いがする。このニオイを嗅ぐのが日常になって暫く経つ。ここでは

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