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つんの小説

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ぼちぼち書いてます。中編・長編を書きたい。
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2024年5月の記事一覧

蛍 |蛍を掴んで瓶に入れて、そのまろやかな光をただぼーっと見つめていた。その蛍が急に変身するのである。それは蛍だったのかわたしもよく分からない。光る小人だったのか?わからない。確かに羽根があって、それは虫のものだったような…奇怪だ。

丘の上で

丘の上で

むせ返るようなクチナシの匂いが辺りを漂っていた。海岸の近くの坂の上の洋館にその人は住んでいた。ギターを弾き、小鳥のように歌う人だった。桜がちらちらと舞うある日、彼女は涙を流していた。好きな人に想いを伝えたと言う。残念ながら想いは届かなかったようだ。泣いてる彼女は美しかった。

クチナシの咲く頃には彼女の涙も乾いていた。僕らは浜辺で楽器のをセッションをした。彼女はギターを弾いていた。僕はオカリナを吹

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小枝散りゆく、つゆ知らず

小枝散りゆく、つゆ知らず

既視感。
 昔、私はこの近くに住んでいたことがあった気がする。なんとなく河の感じや道に見覚えがある。朧げなのは10年も前の記憶だからで、小学校に上がる前だった。まだ母と暮らしていたときだ。
 この街は交通量の多い、広い大通りよりもうんと幅の広い運河が流れている。河は黒々としていてうねるように流れている。少し潮のニオイが混ざった運河特有の匂いがする。このニオイを嗅ぐのが日常になって暫く経つ。ここでは

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