日本の「ろくろくび(轆轤首)」の起源説(起源は2つの妖怪らしい。首だけで飛び回る中国の妖怪「飛頭蛮」。「内臓をぶら下げた女性の首だけで飛ぶ吸血鬼」東南アジア諸国の妖怪)

日本の「ろくろくび(轆轤首)」の起源説が、「ムー」説では、中国と東南アジアの妖怪ではないか?と書いてあった。

(生首妖怪「マーライ」が夜な夜な出没、人々を襲う! 東南アジアの怪奇ろくろ首事件簿)
https://web-mu.jp/history/37366/

『<「ムー」説の中国の妖怪「飛頭蛮」が、日本の「ろくろくび(轆轤首)」にまでなっていった経路の説>
(飛頭蛮)
(1) <中国の妖怪>中国の史書の、4世紀、六朝時代に成立したとされる東晋・干宝作「捜神記」に、「飛頭蛮」という首だけで飛ぶ妖怪が出てくる。

(2) <落頭民>「捜神記」はまた秦の時代から「南方に頭が胴体を離れて飛ぶことのできる落頭民と呼ばれる人たちがいた」とも伝えている。

(3) 時代は降って明の時代、郎瑛の著した「七修類稿​​」では、過去の文献を引用して、安南(現在の北部ベトナム)、老撾​​国(現在のラオス)、占城国(現在のベトナム中南部に存在したチャム族の国)にはいずれも頭が胴から離れて飛ぶものがいると記しており、魚や糞を食すとしている。

(4) 唐代に成立した「酉陽雑俎」という書物には、天竺の僧侶の証言として、「闍婆(ジャワ)國の中に頭を飛ばす者がいる​​」とも記している。

(5) 明代に著された「三才図会」をもとに18世紀の初頭に編まれた「和漢三才図会」にはこれらの書物に記された妖怪を「飛頭蛮」と漢字で記し、「ろくろくび(轆轤首)」とふりがなが振ってある。
この絵の時点では、「ろくろ(轆轤​​)」は、井戸などの滑車に縄をかけてつるべを上下させる道具の事なので、「「ろくろくび(轆轤首)」のイラストは、首と胴体を細い縄でつなげた絵になっている」

(6) <東南アジアの「首だけで飛ぶ吸血鬼」妖怪と混ざる>
のちの戦争などで、東南アジア諸国が中国の支配下に入ったりしたので、その後の歴史で、東南アジア諸国では、「中国の妖怪」も伝わる事となった。
ベトナムでは、頭のみで飛ぶ妖怪のことを「マーライ」と称しているが、お隣のカンボジアでは、アープ、ラオスではピーカスーという名前で知られている。また、タイではガスー、マレーシアではペナンガラン、インドネシアではレヤックまたはクヤンと呼ばれている。
一方で、東南アジア諸国には、もともと別の似た妖怪がいたようで、「首の下に少し臓器をぶら下げたまま飛び回る吸血鬼の主に女性の妖怪」というのがいたようで、それと混ざってしまったらしい。
東南アジア諸国で、共通するのは、通常は普通の人間と変わらないが、夜になると頭だけで飛行するとされ、糞や胎盤、新生児の血を好み、呪術を使用するという点である。

(7) 別の経路で、中国の妖怪「飛頭蛮」は、日本には、「漢方薬」や「漢文書物」の知識と一緒に書物で入ってきて知られるようになったようで、元の中国の古文書の絵では、「首と胴体を細い縄でつなげた絵」だったのを、日本人が、変だと感じて、「首が長く伸びた絵」にしてしまったようです』

一方で、自分が思うには、「首と胴体を細い縄でつなげた絵」というよりも、普通に、「斬首で首を落としたのに失敗してしまい、首がうまく斬れていないのに、首を外そうと引っ張ったら、当然、脊髄の線が引っ張り出される」と思うのだが、「人間は、つながっていれば死んでいない」ので、その異様な状態でも生きて話しているような人の実際にあった物語の話がスタートなのかもしれない。

(あまりにも切れ味が凄すぎる刀では、「斬った後に、肉はつながったままだいぶ生きている」という言い伝えがある)

(日本刀の「試し斬り」によって付けられる業物の日本刀の異名といわれ)
https://www7b.biglobe.ne.jp/~osaru/wazamono.htm

『(斬れ味の異名がある日本刀)
・「波遊ぎ兼光(なみおよぎかねみつ)」
南北朝期の備前国兼光の刀で、戦国時代に川を渡ろうと馬を川に乗り入れた途端に後ろから斬りつけられ、川を泳ぎ切って対岸に着いた瞬間に体が真っ二つになったというものです。

・「八丁念仏団子刺し」
敵を斬って確かに手応えがあったのに、敵はすたすたと念仏を唱えながら歩いていきます。おかしいと思って後をつけると八丁(約870メートル)も行ってから体が二つに割れたというものです。その後をつける際、刀を杖代わりに歩いていたので、道に落ちていた石が団子を串刺しにしたようになっていたということです。この刀は維新後、水戸家に買い上げられていましたが、関東大震災で焼けてしまったそうです。』

という日本刀の試し斬りの伝承が残っているように、「あまりにも切れ味が凄すぎる刀では、包丁などでわかるように、斬った肉が表面張力などでつながったままになる」ようで、「つながったままの人間は、すぐには死なないで、だいぶ生きている」ようです。

(「ム-」説の日本の「ろくろくび(轆轤首)」の妖怪ができあがっていった歴史の経路かもしれない説の流れ)

<1> 「飛頭蛮
((wikipedia)首だけで飛び回る中国の妖怪「飛頭蛮」)
https://ja.wikipedia.org/wiki/飛頭蛮

『(「飛頭蛮」のいろいろな地域での呼び名)
虫落(むしおとし)
落民(らくみん)(首が落ちる人の意)
飛頭獠(ひとうりょう)』

(<ムー>「首だけで飛ぶ吸血鬼(首の下に少しだけ内臓をぶら下げている)」の東南アジアの妖怪の原形)
https://web-mu.jp/spiritual/5272/

『(アジアの定番悪霊「ピー・グラスー」)
東南アジアだけでなく、アジア全域で示し合わせたように似たようなピーが存在する。古典怪談のなかでは「ピー・グラスー」がまさにそれだ。マレーシアで語り継がれる同じタイプの悪霊は「ペナン・ガラン」と呼ばれる。ミャンマーでは「ケフィン」、フィリピンには「マナナンガル」、そして日本では「ろくろ首」だ。ろくろ首には2種類あり、抜け首と呼ばれるタイプは首と体が離れ、まさにタイのピーと同じである。
タイのピー・グラスーは女性に取り憑き、日中は普通の女性として過ごすものの、夜になると宿主の胴体から頭と内臓が抜けて飛び回る。好物の排泄物や血を求めてさまよう。

発祥は諸説あるが、実はカンボジアの悪霊「アープ」が原型という説が有力だ。しかも、アユタヤに関係のある話である。
14世紀のころ、クメール王朝の王女とアユタヤ王朝の王族が結婚したが、王女は兵士に恋をしてしまい、カンボジア呪術のひとつ「スナエ」を使い相手を自分に振り向かせるよう仕向けた。しかし、その恋慕が夫にみつかり、火炙りに処せられ、王女はアープとなって頭部と内臓が身体から抜け、逃げた。これがアープおよびピー・グラスーの誕生説だ。』

(『お化けのガスー』について調べてみた)
https://okamototomohiro.com/krasue_ghost/

『タイ語で『お化け』は『ピー(発音:→↑)』と言いますので、『ピーガスー(お化けのガスー)』とも言います。タイ語กระสือの発音(Krasue)をカタカナ標記にしている関係で『クラスー』とか『グラスー』、『カスー』等と標記される場合もありますが、ここでは『ガスー』で統一しています。

(ガハン(Krahang)という男性の妖怪)
ガスーはガハン(Krahang)という男性の姿のお化けと同じ地域に住む事が多いとされています。
ガハンは2つの箕(ふるい)を使って飛び、股には長いすりこぎに乗って人々を驚かせるお化けです。』

と書いてあるが、「ガハン(Krahang)」という男性の妖怪をネット検索で画像検索すると、どうも、日本でいう所の宴会芸の「男性が素っ裸で、股間をお盆で隠す」というやつの海外版で、「向こうが透けて見えるザルのような、丸い箕(ふるい)の籠のフタのような物を持って、股に、巨大なすりこぎを挟んで、人々を驚かせるために出てくる変質者」のようにしか見えない。
「飛んでいる」というよりも、宴会芸の「男性が素っ裸で、股間をお盆で隠す」というやつを、「スケスケの籠のフタ(で股間を隠す)」を腕にくくりつけてやる「羽ばたく」ように見える動作なだけだろう。

<2> <「女性の首だけで飛ぶ吸血鬼(首の下に少しだけ内臓をぶら下げている。妊婦を襲うなどのある程度の共通点がある)」の東南アジアの妖怪の呼び名>
アープ【カンボジア】
マーライ【ベトナム】
クヤン(Kuyang)【インドネシア】
ペナン・ガラン【マレーシア。マレー半島、ボルネオ島】
クヤンダヤク【マレーシア。マレー半島、ボルネオ島】
ガスー【タイ】
ピーガスー【タイ】(「ガスー」、「カスー」、「グラスー」、「クラスー」と、これらの前に、「ピー」の付いた「ピー・ガスー」、「ピー・カスー」、「ピー・グラスー」、「ピー・クラスー」は、タイ語を日本語のカタカナ表記にした時の、ただの「表記揺れ」で、全部、同じもののようです)
ピーカスー【ラオス】
ケフィン【ミャンマー】

(おそらくルーツにつながりはあるだろうが、若干違う妖怪)
マナナンガル【フィリピン】
レヤック(Leyak)【インドネシア、バリ島】

<3> (日本)
ろくろ首(轆轤首)

(妖怪の伝播の系統樹の手法)

こういうような、妖怪の伝承の歴史的な伝播の仕方を系統樹のようなつながりで調べていく手法を使うと、「都市伝説」や「ネットミーム」系の解析がしやすいようです。
自分の考えでは、「新しく伝わった先で加えられた新要素」の差分の箇所は、「その新しい地域で、何か似たような実際の事件や、過去の因習なんかの伝承の似たやつがあった」のと混ざりやすいようで、「差分検証をすれば、その新しい地域で加えられた要素の元になった事件、因習」の内容が判明すると思われる。

(まとめ)
「ムー」説だと、上のような妖怪は、全部何らかのつながりがあって、日本の「ろくろ首(轆轤首)」にまでつながっている。

自分が調べた感じだと、これらの妖怪は、オリジナル妖怪が、「2種類」いて長い歴史の中で混ざってしまったようです。

(おそらく、最初のオリジナルの妖怪「2種類」)
(1) 首だけで飛び回る中国の妖怪「飛頭蛮」
(2) 「女性の首だけで飛ぶ吸血鬼(首の下に少しだけ内臓をぶら下げている。妊婦を襲うなどのある程度の共通点がある)」の東南アジアの妖怪(こちらの原形は、「アープ【カンボジア】」らしいと「ムー」説では書いてある)

(要するに、オリジナルの妖怪が、中国でも東南アジアでも、どうもかなり古くからあるので、このモチーフの妖怪の著作権はクリアーしていると思われる)

この2つの妖怪は、もともとは別の妖怪だったが、「首だけで飛び回る」という共通の特徴のある妖怪だった事と、過去の東南アジア諸国への中国の侵略戦争などがあって、2つの伝承が混ざってしまったようです。
日本の「ろくろ首(轆轤首)」は、中国の古文書の絵を日本人が変だと思って、勝手に、「首が伸びる」という「設定」に変えてしまったようです。

日本の「ろくろ首(轆轤首)」は、「抜け首」という中国の妖怪「飛頭蛮」と同じタイプと、「普段は普通の女性だが、首が伸びる妖怪」という2つの種類に分かれている。

(現実の医学で、「首の骨は伸びる」のか?)

「キリン」のような首が伸びっぱなしになるのではなくて、現実の医学で、「(普段は普通だが)首の骨は伸びる」のか?というと、
・ヨシゴイ
という鳥が、餌を捕る時に、実際に、「首の骨が伸びる」ようです。
この鳥の足も、「ガニ股」で、だいぶ見た目がおかしい鳥です。

((ヨシゴイ))
https://ja.wikipedia.org/wiki/ヨシゴイ

(エイリアンのように、「口が長く伸びて獲物を捕食する」魚)

「ギチベラ」という魚は、「かなり長く口が伸びて獲物を捕食する」魚のようです。

(ギチベラ)
https://karapaia.com/archives/51731242.html

このような感じで、
・「(普段は普通だが)体の一部が長く伸びる」という動物は存在はする。
ので、日本の「ろくろ首(轆轤首)」は、実際に、そういう人がいたのか?は不明ですが、完全に、いないとも言い切れないようです。
そもそも、男性器は伸びるものだし、たしか、何かの昆虫の目は、繁殖期の時期だけ異性にアピールするために、「カタツムリの目」のように、かなり長く横に伸びる目を持つ昆虫がいた記憶があるので、「(普段は普通だが)体の一部が長く伸びる」という生態は、動物として、それほど変わった特徴でもないようです。
「カタツムリの目」と呼ばれている、伸び縮みできる部分は4本あって、正確には、「上の長い2本が、光を感じる触覚」で、「下の短い2本が、匂いを感じる触覚」だそうです。

(カタツムリの触覚)
https://douyou-shouka.himawari-song.com/katatsumuri/

『(かたつむりの目と鼻)
頭から伸びてくるアレは「目」のようですが、実は触覚。
ツノとよばれる触覚が、大小2本ずつ、合計4本あります。
触覚とは、さわった感触を感じるものなので、とても敏感です。
周りの障害物などを感じ取っています。
上にある長い方は「大触覚」と呼び、光を感じることができます。
目として景色が見えるわけではありませんが、明るいか暗いかはわかるのです。
人間の目の役割と似ています。
短い方は「小触覚」と呼び、においを感じることができます。
人間の鼻の役割ですね。』

最終結論を書くと、これらの妖怪は、歴史的な伝播の過程で何らかのつながりはあるが、オリジナルらしい妖怪は次の2つらしい。
(1) 首だけで飛び回る中国の妖怪「飛頭蛮」
(2) 「女性の首だけで飛ぶ吸血鬼(首の下に少しだけ内臓をぶら下げている。妊婦を襲うなどのある程度の共通点がある)」の東南アジアの妖怪

日本の「ろくろ首(轆轤首)」


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