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📕『今日の人生3 いつもの場所で』

益田ミリ『今日の人生3 いつもの場所で』読みました。
ほとんどがコミック形式で、そのほかに小説「念のため」が載っている。
益田ミリさんも、わたしの大好物な日常系のエッセイ、漫画を書いてくれる人。なんてことない日常に気づく感度の高い人だと思う。
なんというか、日常を「切り取った」というのにすら違和感があるくらい、本当に日常。切り取った、という言葉に、個人的には写真を撮ったりスケッチしたりという印象を受けるのだけど、肩肘張ってこの瞬間を残そう!としていないというか。それくらいさり気ない日常なのが、またよい。きっと書く側はちゃんと記録したり頭を悩ませたりするんだろうけれど。それを読み手に感じさせない大好きなエッセイスト。

久しぶりに絵本『ぐりとぐら』を手にしたんです
見返しの色がなんともきれいな緑色で
心がスーッとした今日の人生

『今日の人生3 いつもの場所で』p.28

ふと、本そのものの美しさに気づいたのって最近だなと思った。
そして、手に持っているこの本の表紙を見て、
やはりこの本もきれいだ、と思った。
今日の人生は3巻全て持っているけれど、どれも美しくて可愛いの。
本がきれいだなっておとなになってから気づいたから
美しいものに気づいて、美しい物が増えていくのは大人の楽しみだなぁと思うし、幸せで、紙の本ならではの気づきだと思った。

コロナ禍での出来事も多く書かれており、
あーそんなときだったなとか
緊急事態宣言、懐かしいね、あのときは外出もままならなくてね…なんて思いながら読んだ。
懐かしむことが出来ているのは幸せなことだ。

あの子が大人たちから与えられるはずだった笑顔
このコロナ禍で一体いくつくらい受け取れなかったんだろう
と思った今日の人生

『今日の人生3 いつもの場所で』p.16

あのときの緊急事態そのものは「過去」になりゆく今日だけれど、失ったものはたくさんあり戻ってこない。その中でも、マスクによって微笑みかけることの出来なかった時代に子供だった子は、笑顔を浴びる機会が他の世代より極端に少ないはずだよね。
この時汗と涙にまみれた青春を送るはずだった子
毎日病院にお見舞いに来てもらうはずだった人
子や孫に囲まれ長寿のお祝いをする予定だった人…
枚挙にいとまがないが「コロナだから仕方ないよね」では済まされない経験をした人も多くいただろう。
どうか、未来の子どもたちがそんな経験をしなくてすみますように
そして、あの頃「コロナだから」と我慢を強いられた子どもたちが、その何倍もの幸せを受け取れる世の中になっていきますように
そう願わずにはいられない一節。

カズオ・イシグロさんの『クララとお日さま』を深夜に読み終わり
あまりにもすばらしくて
目を閉じて泣きました
小説の世界から離れたくなかった
しばらくそこにいたかった
今はなにも視界に入れたくない

『今日の人生3 いつもの場所で』p,42

小説の世界に本当に没入するとこうなるんだなあと噛み締めた一節。
私は、本を読んだあと、ふーっと長く深呼吸する
こういうじんわりと幸せになる本を沢山知りたいし、この言葉を見て私はページを捲る手を止めしばらくこの言葉を心で繰り返した

個人的に、益田ミリさんの大げさでないところや
日常を描くところが好きだし
自分みたいな普通の人間と同じように、パン屋さんでパンを買う幸せを噛み締めたり、小さな一言でモヤッとしてそれを引きずったり、そういうこともあるんだなと当たり前だけど思う
そういう人間らしさみたいなのが、この方の魅力なのかもしれない。



裏表紙もきれい

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