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映画『逆光』。全国に先駆け、尾道で封切り。須藤蓮(監督)、 渡辺あや(脚本)が語る尾道の魅力。

昨年夏、尾道で撮影された映画『逆光』が、7月17日(土)『シネマ尾道』で初日を迎えた。会場は感染対策に丁度よい、ほぼ半分の観客。映画は1970年代、尾道での男女4人の群像劇(あらすじは後述)を描いたもの。正直言って、とても良かった。美しい映像、心地よい音楽、印象的なアングル・サイズ、効果的な音声。NHK朝ドラ『カーネーション』等を手掛けた渡辺あやさんの脚本、実力派の大友良英さんの音楽ということもあるだろうが、これら大御所を見事に指揮した、須藤蓮監督がもつセンスを感じた。

あらすじ
1970年代、真夏の尾道。22歳の晃は大学の先輩である吉岡を連れて帰郷する。晃は好意を抱く吉岡のために実家を提供し、夏休みを共に過ごそうと提案をしたのだった。先輩を退屈させないために晃は女の子を誘って遊びに出かけることを思いつく。幼馴染の文江に誰か暇な女子を見つけてくれと依頼して、少し変わった性格のみーこが加わり、4人でつるむようになる。 やがて吉岡は、みーこへの眼差しを熱くしていき、晃を悩ませるようになるが…… https://motion-gallery.net/projects/gyakkofilm

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実は、筆者は5月末、須藤監督に一度お会いしている。少し早めに宿泊先のゲストハウスに伺ったところ、歯磨きの最中だった。最初は「若いな~」という印象、監督という雰囲気は全くなかった。しかし、話を聞くうちにガラリと変わる。まず、その熱量がすごい、というかよく喋る。これまで俳優として活動してきた中で芽生えた、エンターテインメント、映画業界への問題意識。そして”俳優では変えられない”という想い、さらにクリエイター、創作者としての映画制作、監督への想い。”本気でやりたい”という想いを聞かせてもらった。監督の構想は多岐にわたり、昨年まで筆者が携わってきたコンテンツビジネスにも及ぶ。「少し、危なっかしいな~」という印象もあるものの、彼の目の輝きと、言葉の力をもってすると、やってくれそうな気がした。彼のファンになった。

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監督の本気のチャレンジの一つが尾道からの映画公開。通常、映画は東京から地方へと順番に公開がスタートする。しかし、今回は尾道からにこだわった。その想いはクラウドファウンディングで、以下のように語られている。ちなみに、クラウドファウンディングは、多くの賛同を得、目標金額を大きく超える成果をあげている。

■新しい配給宣伝の形を探りたい
僕はこの作品を通じて「本当に楽しい映画体験」というものを実現させ、それをなるべく多くの方々と共有したいと思っています。そしてそのために、新しい配給宣伝の形を探りたいと思っています。具体的にいうと、映画の公開を舞台である広島県尾道市から始めたい、そして広島市内、京都のミニシアターを1つずつ回り、それぞれの街の方々と協力してイベントを企画したり、観客の方々と深くコミュニケーションを取り合ったりしながら、最終的に東京など、都心部の公開にたどり着きたい、と思っています。しかし実は映画というものは「東京から地方へ」公開してゆくというのが鉄則であり、「地方から東京へ」という順番は、常識的にはありえないやり方です。
それでも僕は「尾道→京都→東京へ」という公開順の実現を模索したいと思いました。https://motion-gallery.net/projects/gyakkofilm

7月17日、尾道で迎えた映画初日。監督は、上映後のトーク前に廊下で感極まっていたという話だが、観客の前に姿を現した時は、本当に清々しい表情。そして、スピーチをした監督と、渡辺あやさん。二人のトークは、作品への愛と、尾道への愛があふれるものだった。

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須藤監督にとっての尾道。それは「薄っぺらい自分を正してくれる。教育をしてくれる場所」。尾道で映画を撮る話は、シネマ尾道、河本清順支配人との1年4ケ月前の会話からスタートしたらしい。それから、様々な関係者、ロケ先を紹介してもらい、色んな出会いがあり今回につながっている。そして初日の今日、監督は地元観客の前で感無量であると語り、「自分がやっていることは間違ってなかった」と話した。

渡辺さんは、司会者が質問するまでもなく、尾道の魅力に触れた。「尾道は人が圧倒的に魅力的にみえる。人が生きていく上で、人生を受けとめて絵にしてくれる街並みがある。街の風景が守っているところがある。」と評した。
監督も、渡辺さんも『尾道の人の魅力』について語った。実は、最近、尾道へ移り住んでいる多くの方に同じような話を聞くことが多い。尾道は、これまでの歴史を振り返ってもそうだが、文学、映画、音楽、芸術等、文化を育む町なんだなと改めて感じた。そんな尾道の街並み、方言、優しさ、そして画面には出ないが尾道のスタッフの愛が詰まっている映画『逆光』。尾道からあなたの町に訪れた際には、是非、鑑賞いただければと思う。

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