リンダのコーラスに圧倒される!ハイレゾで聴くポール・マッカートニー・アーカイヴ・コレクション『ラム』
本日紹介するおすすめのハイレゾ音源は、ポール・マッカートニーのアーカイヴ・コレクション『ラム(Ram)』です。
このアルバムは、ポール・マッカートニーが1971年に、当時の妻リンダ・マッカートニーとの共同名義で発表したアルバムで、イギリスでは2週連続1位、アメリカでは最高位2位をを記録しています。
前述のように、アルバムはチャート・アクション的には大ヒットを記録したものの、ファンや評論家からは必ずしも好意的に迎えられたわけではありませんでした。
それは、このアルバムの共同制作者として、ポールが妻であるリンダを起用したからです。
ポールと結婚したリンダは元写真家で、音楽的には全くの素人でした。
素人同然のリンダを自分の音楽活動に引っ張りこんだポールは、評論家やファンから非難され、リンダは嘲笑の的にされます。
しかしながら、このアルバムのハイレゾ音源を聴けば、そんな評論家的なことを言っていられなくなります。
それは、このアルバムの4曲目「ディア・ボーイ」のハイレゾ音源でのリンダのコーラスを聴けばすぐにわかります。
前後左右からサラウンドで降り注いでくるリンダのコーラスの嵐。
その声に包まれながら聴くポールのリード・ボーカルももちろん素晴らしいのですが、残念ながらこの曲だけは主役はポールではありません。
リンダです。
それくらいこの曲のリンダのコーラスは素晴らしい。
この1曲を聴く為だけにこのハイレゾ版『ラム』を買う価値は十分にあります。
神はリンダにたった1つ音楽的な才能を与えました。
それは声です。
独特の音色を持つ少し低めの声質は、正にコーラス向きで、そのコーラスは、この曲をはじめとして、このアルバムを一層魅力的なものにしています。
そして、このアルバムのみならず、リンダのコーラスは、その後のウイングスのサウンドに欠かせないものになっていくのです。
このように、リンダのコーラスが素晴らしい本作ですが、もちろん聴き所はそれだけではありません。
①トゥー・メニー・ピープル(Too Many People)
まず、イントロのアコースティック・ギターの音の太さ、生々しさに圧倒されるとともに、ポールの声のエコー感、そこに被さってくるリンダのコーラス、その瞬間のハーモニーのスリリングさはまさに鳥肌モノ。
そして、後にウイングスのメンバーとなるデニー・シーウェルの叩くドラムスのハイハットの残響音までくっきりと聴こえるハイレゾ音源のリアルさ…。
全てが圧巻です。
②三本足(3 Legs)
デニー・シーウェルのドラムスが素晴らしい。
彼の繰り出す多彩なプレイぶりがハイレゾのくっきりとした音像にて堪能できます。
ポールが後にウイングスのメンバーとして彼を登用したのもうなずける納得のドラミング。
そして、ここでも効果的に被さってくるリンダのコーラス、聴き所満載です。
③ラム・オン(Ram On)
この曲のモチーフとなっているウクレレの響きが全てです。
まるで目の前でポールが弾いているような錯覚に囚われるリアルな音像に酔いしれて下さい。
④ディア・ボーイ(Dear Boy)
リンダのコーラスの凄さは前述のとおり。
それに加えて、パーカッションの音のリアルさに驚かされます。
⑤アンクル・アルバート~ハルセイ提督(Uncle Albert/Admiral Halsey)
ポールのボーカルの声の厚み…。
ボーカリストとしてのポールは、70年代にピークを迎えていることを証明する1曲です。
途中の効果音を含めた曲の展開の中で、ハイレゾ音源ならではの音の多彩さを楽しむことが出来ます。
⑥スマイル・アウェイ(Smile Away)
ポールのカウントと共に始まるロック・チューン。
アナログで聴くことのできるロック・グルーヴはハイレゾでも健在です。
⑦故郷のこころ(Heart of the Country)
この曲の骨格を作っているアコースティック・ギターだけでなく、そのバックで鳴っている倍音豊かなベース、エレクトリック・ギターの艶やかでメロウな音色など、音の饗宴を存分に楽しんで下さい。
⑧モンクベリー・ムーン・デライト(Monkberry Moon Delight)
このアルバムの魅力の1つである、ハードなロック・チューンの象徴としてのポールのシャウトするボーカルが暴れまわります。
これまではどちらかというと優等生的なイメージが強かったポールですが、このアルバムでは思いっきり不良少年化しちゃってます。この破天荒さが本作の最大の魅力であることは間違いありません。
⑨出ておいでよ、お嬢さん(Eat at Home)
エルビス・プレスリーを彷彿とさせるポールのボーカルが楽しめます。それにしてもこのアルバムでのポールの声色の豊かさには驚きです。
ビートルズ時代の「レディ・マドンナ」もそうですが、この手の曲をやらせたらポールの右に出る者はいないですね。
曲の中間部に登場するロカビリー調のギターの音色も素晴らしい。
⑩ロング・ヘアード・レディ(Long Haired Lady)
ポールとリンダのデュエットが楽しめるとともに、このアルバムに参加したニューヨーク・フィルのストリングス・アレンジがハイレゾ効果でより一層映える1曲となっています。
⑪ラム・オン(Ram On)
③のリプライズ。曲の最後に、73年発売のアルバム『レッド・ローズ・スピードウェイ』のオープニングを飾る「ビッグ・バーン・ベッド」のメロディが登場します。
⑫バック・シート(The Back Seat of My Car)
ラストのバタバタと展開するドラミングとニューヨーク・フィルの壮大なスケールのストリングス、リンダの魅力的なコーラス、全てが混然一体となって聴く者に迫ってきます。
これまで紹介してきたとおり、この『ラム』は、
ボーカルやコーラスを含めた個々の楽器群の素晴らしい音色を余すところなく表現したアーカイヴ・コレクションの傑作マスタリングが施され、
かつハイレゾならではの音の生々しさと繊細さを併せ持つ素晴らしい作品に仕上がっています。
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